一応、私も女ですので、女の目線から男性を見ていると、
(あああ、なぜか女の子の前での態度が不器用だよねぇ)
と思う男性がいます。話をすると、ホントはすごくおもしろくていいヤツなのに、初対面の女の子の前に出ると、なぜか「ええっ」と驚いてしまうような態度をとる男子です。
たとえば……
- 緊張してロクに話ができなくなり、今のような季節でも汗をダラダラかいてしまう。
- いきなり上から目線で高飛車にモノを言う……ような感じになる。
- 女の子が一生懸命に話をふっても、一向に話にのってくれない。
こんな男性を見かけると、私も昔は (なんなのよ、コイツ) とアタマにきたりしていましたが、最近は (ああ、緊張しちゃってるのね) と (ああ、私のようなタイプが苦手なのね) の区別がつくようになり、緊張しちゃってる男子に関しては、心の中で「がんばれ」と応援できるほど、やさしい大人の女になったつもりでいます。
緊張してしまうのも、上から目線なのも、会話が進まないのも、男子にはよくあること……いたしかたないと思えるのですが、ときどき、女性の前にでるとふだんとは別のキャラになってしまう男性がいるので、そういうときは「どうしようかしら?」と困ったりしてしまいます。
某プロバイダーに勤務するNちゃん(31才)は、職場の同僚で彼女いない歴7年のDくん(31才)に、学生時代の後輩の女の子、Yちゃん(28才)を紹介してあげることにしました。Dくんは、
「いいよ、もう紹介なんて……。それに、女の人が『かわいいから』って連れてくる人にかわいい子はいないってよく言うし」
とあまり気乗りしないようすです。Nちゃんは反論したい気持ちをぐっと抑えて、
「いいから、いいから、かわいくなかったら、たまに仕事とは関係ない年下の女の子の話が聞けてよかった、とでも思えばいいじゃないの」
と彼に言いました。実は、今回NちゃんがDくんに紹介する、Yちゃんはかわいいどころではない、超がつく美人です。美人なんだけれど、学生の頃から男の子と付き合ったりせず、休日をひとり図書館やマンガ喫茶で過ごしているという、ちょっと変わった女の子なのです。
彼女を見ていると、あまりにキレイなので「彼氏がいるに決まっている」と、男性はほとんど近づいてこないようです。しかし、同性であるNちゃんからみると、Yはキレイだけど色気がないし、髪の毛の手入れなど、細かい点がズボラで、いかにも「男っ気がない」という感じ。
(Yのようなタイプはきっと、男としていい悪いより、友人としていいかどうか? というところから恋愛に入っていく)とニラんだNちゃんは、話題も豊富で人当たりもよく、警戒心を抱かせない容姿の持ち主でありながら、意外と皮肉屋でもあるDくんに白羽の矢を立てたのでした。
というわけで、ある金曜日の夜、Nちゃんもまじえて、DくんとYちゃんは某居酒屋でご対面したのでした。
はじめて、Yちゃんを見たときのDくんの顔は、写真に撮って残しておきたいくらいでした。口がポカンと開いて、いつもの饒舌さはどこへやら……。あっけにとられて、ただただキレイなYちゃんの顔をジーッと見つめるばかりです。Nちゃんは、内心ハラハラしていましたが、
「ほら、何か飲み物頼もうよ」
とDくんの肩をポンポンとたたきました。すると、Dくんが突然、
「ああ、頼んじゃおううか。何飲む? オレは~とりあえずビールみたいな」
と、はすっぱというか、なんというか、軽い若者口調で話し出したのです。Nちゃんは大ビックリしました。
(えええ? オレって……ダレ? いつも、自分のことは「ボク」って言ってるDが……)
Nちゃんのオドロキを知らず、YちゃんとDくんは飲み物の注文の話をしています。
「私は、カンパリソーダにします」
「ああ、そういうの好きなんだぁ。オレってー、そういうジュースっぽいの苦手な人なんだよねぇ。まぁ、女の子はそういうの好きな子多いけど」
(キャー、なんなの? Dってば。その、オレってーって。オレってーって何よ? 語尾をのばさないでーっ)
その後も、Dくんは、
「オレって○○な人だから~」とか、
「へぇ~、女の子ってそういう子多いよね」を連発。Dくんの人格の豹変ぶりに、驚いてことばを失ってしまったNちゃんでした。
居酒屋を出て「じゃあね」とDくんと別れ、NちゃんとYちゃんはようやくふたりきりになりました。Yちゃんは、
「Dさんっておもしろい人ですね。オレって~車はオートマとか乗らない人だからぁとか、ああ、かわいかった」
と、彼のことばをマネしながら、涙を流して笑っています。Nちゃんは、
「ふだんはあんなんじゃないんだけど……」
と小声でモゴモゴ言うばかりでした。
このように、女性の前でキャラが入れ替わってしまうという人が、本当にたまにいるのです。
もちろん、女の子でも、同性の前と男子の前では態度が違う……という女の子がときどきおりますが、そういう子は、声が高くなるとか、言葉遣いがきれいになるとか、大人しくしおらしくなるとか。
どちらかというと、フダンの自分よりかわいく、丁寧な方向に変わるのであって、悪いことばや流行りのことばを使ってみたり、はすっぱな方向にはいかないものです。
ところが、男性の中には、本当はマジメでおもしろくていい人なのに、わざわざフダンよりも悪っぽく、強っぽくみせる……というワザを使う人もいるようです。
しかし、いい人が悪っぽくしようというのは、なかなかむずかしいことで、やっぱりムリがあるというか、正直にいうとバレバレで、見ているほうが照れてしまうということにもなりかねません。
やさしいことや、人当たりがいいこと、女性に警戒心を抱かせないこと、それらはみな長所であって、決して欠点ではないのです。 やさしくなくて、人当たりがよくなくて、警戒される男性を好きになる女の子なんて……メッタにほとんどいないのです。
やはり、男性のみなさんには、自信を持って、自分のいいところを最大限引き出す方向でいってほしい。よろしくお願いします。
酒井冬雪です。髪を切りすぎて、寒さが身に染みています。髪って、長いとアタマ周りが温かいんですよ。そういえば、最近では、私よりも髪が短い男子などほとんど見かけません。私も……もう少し髪をのばして、せめて耳が隠れるようにして保温につとめたいと思います。では、またね。