人を理解する……というのは、タイヘンむずかしいものです。勉強ができるから、アタマがいいからといって、人を理解する能力が高いとも限らないようです。

知人のMくん(某シンクタンク勤務、34才)は、その手の話の好きな人が聞くと「ええっ!」と驚くような高学歴の持ち主で、仕事もものすごくできて、背も高くて顔もよくて、運動神経もよさそうで、クールな印象の男性です。しかし、その私生活はというと……

「妻が浮気しているようで…」
「妻が、自分の職場の後輩と旅行にいったみたいです」
「どうして、あの…浮気症みたなものは治らないんでしょうか」

と、けっこう困ったりしています。

彼自身は、同性からうらやまれるような男であるのに、なぜか妻にはホンロウされている毎日。他人事なので、

「そんなに何もかも恵まれているから、困った女の子の面倒を見る役割があたえられてるんじゃないの?」

といったりしていますが、逆の立場だったら私もつらいだろうなぁと思います。

本当に、人というもののはよくわかりません。自分のことだってよくわからないのに、妻や夫のこと……彼女や彼の気持ちなんて……ますますわからない。わかっているようで、実はわかっていないということが、とても多いと思います。

人はわからない。わからないからこそ、意志の疎通というか、コミュニケーションをしっかり取っていきたいところですが、それもなかなかうまくいかなくて、あれこれ悩むのが恋愛の醍醐味ともいえます。


某化粧品メーカーの研究所に勤務するGくん(31才)は、別に意識してそうなったわけではないのですが、これまでいつも年下の女の子とばかり付き合ってきました。

ところが、あるとき、取引先のひとつ年上の女性、Lさん(32才)から、

「気が合いそう」
「すごく好みのタイプ」
「絶対、付き合いたい」

と猛攻を受け、あれよあれよと流されてしまったそうです。

気が付けば、なんとなく「付き合ってる?」という状態になり、

「…(年上だから大人だろうし、いいかなぁ。案外、甘えてこなくて楽かもしれない)」

と思い始めたGくんでした。なにしろ彼女は、仕事もとてもできるし、アタマもよくて、彼の会社の女の子たちからも、

「Lさんってカッコいい」
「あこがれますよね」
「あんなふうになりたい」

と言われている女性です。Gくん的にはすっかり、楽な恋愛ができるかも……と思い込んでしまったのでした。

Lさんとの付き合いも順調なまま、3カ月ほど過ぎたころのことです。突然、仕事が入ってしまい、Gくんは彼女とのデートの約束をドタキャンするハメに陥りました。ケータイであわてて、彼女に電話をかけ、

「ごめん、仕事になって、今日は行けそうにない」

とあやまったGくんでしたが、Lさんは、

「…ふうん、そう」

と、いつもと違ってなんだか冷たい声です。急いでいたので、彼女の態度もあまり気にとめず、Gくんは電話を切って、仕事にかけつけました。

すると、30分後、ケータイにメールが入りました。何かと思ってチェックしてみると、メールを送信してきたのはLちゃんで、

「> ムカつく」

と、ただひと言だけ書いてあったのです。

その後も、30分おきに、

「> ばーか」

だの、

「> ゆるせねぇ、何様?」

だのと、メールを送信してくるLちゃん。

彼女のあまりに子どもじみた態度に「はーあ」とガッカリしてしまったのでした。

「その後も、彼女の言動を見ていると、けっこう子どもっぽいことがイロイロあって…たとえば、ひとり暮らしのボクのうちに来ても、料理も何もできないし。何かしてあげても、それが当然のようにボーッと座ってるだけで『ありがとう』のひと言もないし。注意するとすぐ泣くし。仕事ができるからといって、プライベートでも大人だとは限らないっすね」

というGくんなのでした。


このように、人のことは、さまざまな角度から見てみないとなかなかわからないものです(さまざまな角度から見てもわからないこともありますが)。

わからない原因のひとつに「先入観」「見た目でのイメージ」というものもありそうです。

前述のGくんの場合、年上の彼女=大人だから、ワガママをいったり、甘えたりしてこないだろう。アタマがよくて仕事ができる=プライベートでも、イロイロと何でもできそう……と、自分で勝手に思い込んでしまったため、想像と事実が反していたときに「なんだぁ」とガッカリ度が高まってしまったようにも思えます。

恋愛では特に「先入観」や「見た目で決め付け」は、相手の人柄や性格を見る目をくもらせてしまいます。

「…(この人は、こういう人ではないか?)」と予測してみるのはいいのですが、いいことばかり勝手に考えて、少しでも欠点がみつかると「…(ガッカリ)」とばかりにマイナス点をつけていくのは、あまりよろしくないように思います。

とはいうものの、あれこれ好きに想像してみるというのは、恋愛の楽しい一面です。

ですから、会っていないときに彼女のことを考えるときは「彼女はこうに違いない!」ではなく、なるべく「彼女がこうだったらいいなあ…」と考えるようにするのもいいかもしれません。そうすると、想像と現実にギャップがあっても、ショックの大きさが違ってくるはずです。

相手を理解したい、彼女の気持ちをわかってあげたい、と思うのでしたら、まずは先入観を持たないようにする。思い込みと勘違いを抱えたまま、突っ走らない。

この2点に気を付けつつ、相手とキチンと向かい合い、コミュニケーションを取って、こまめに誤解をうめていくといいと思います。

面倒くさがりな人にはつらい作業かもしれませんが、恋愛という局面では、ぜひ面倒を引き受けてほしいものです。


酒井冬雪です。先日、友人(45才)が「はぁぁ、昨日も試験の夢を見た」と言っていました。私も30才くらいまでは試験ができなくて苦しむ夢を見ていましたが、40代になってもあのつらい夢を見ているなんて……きっと彼は、さぞかしマジメに勉強していたのでしょう。尊敬してしまいました。では、またね。