前回に続き、懐かしの鉄道サウンドを紹介します。今回は「東急編」。東急目蒲線の3000系旧型車、吊掛けモーターのジョイント音です。昭和の時代の目蒲線は、目黒駅と蒲田駅を結び、東横線や田園都市線からやって来たグリーンの旧型車が活躍していた路線でした。

デハ3481と、目蒲線の主力3500形デハ3515

戦災国電を譲り受け、復旧したクハ3778ほか3連

じつは筆者の鉄道趣味の原点といえるのが、この目蒲線を行き交っていた3両編成の旧型車でした。この旧型車を撮影するだけでなく、1974年頃には通過音も録音していました。目蒲線を走ったほとんどの形式が録音されています。

デハ3453とデハ3709

目蒲線の"虎の子"だったクハ7560ほか3連

録音した地点から西小山駅を臨む。デハ7260ほか3連の蒲田行

録音地点を過ぎて最初の踏切にさしかかったデハ3603

録音を行ったのは写真5を撮影した地点。西小山駅を出発した上り電車が、短尺レールの続く緩い勾配を下ってくるときの吊掛けモーターの音をとらえていました。最初に紹介するサウンドは、当時の目蒲線の主力だった3500形と、戦災復旧車3600形。通過音3本目のデハ3613ほか3連は、恐ろしいほどの空転を起こしながら通過していきました。

続いて、晩年は名鉄に譲渡された3700形と、最後の旧型車3800形と7200系のすれ違いシーンをお聞きください。

田園都市線からの助っ人運用で、朝夕のラッシュ時に目蒲線を走行していた3450形や3750形の4連も紹介しましょう。当時の田園都市線は、すべての形式が4両編成(こどもの国線は除く)でした。旧型車4連の主力は3450形で、他に3600形、3700形もありました。

クハ3773ほか4連。よく見ると珍編成だった。なんと両運転台車が2両(デハ3499・デハ3450)も組み込まれていた

田園都市線の編成表。プラスチックの短冊にナンバーが手書きされていた

当時、東急線の旧型車で2両だけ存在した、上り向きのクハ3660形を組み込んだ珍編成と、3700形の通過音もお聞きください。

こうして各形式の吊掛けモーター音を聞いていると、同じ旧型車ながら、微妙な違いがあることに気づくと思います。とくに50両も製造された3450形は、同じ形式にもかかわらず、モーター音に微妙な違いがありました。

懐かしの吊掛けモーターの電車も、いまではJRや大手私鉄からほぼ消滅。一部の地方私鉄や路面電車に残るのみとなっているようです。

デハ3801。写真は更新前の原型

3660形2両のうち、クハ3662はこどもの国線専用だった

「鉄道懐古写真」撮影時期と撮影場所

  撮影時期 撮影場所
写真1 1974年9月 目蒲線 田園調布駅
写真2
写真3 1980年4月11日 目蒲線 奥沢駅
写真4
写真5 1974年 目蒲線 西小山駅付近
写真6
写真7 1974年6月 田園都市線 鷺沼検車区
写真8
写真9
写真10 1974年6月 目蒲線 大岡山駅
写真11 1974年6月 田園都市線 鷺沼検車区
※写真は当時の許可を取って撮影されたものです
松尾かずと
1962年東京都生まれ。
1985年大学卒業後、映像関連の仕事に就き現在に至る。東急目蒲線(現在の目黒線)沿線で生まれ育つ。当時走っていた緑色の旧型電車に興味を持ったのが、鉄道趣味の始まり。その後、旧型つながりで、旧型国電や旧型電機を追う"撮り鉄"に。とくに73形が大好きで、南武線や鶴見線の撮影に足しげく通った