前回作業したトランスミッションと並んで、「ジェンマ」の大きな特徴であるホイール。自動車のホイールのようにハブにナットで固定されていて、簡単に脱着ができるようになっている。今回はホイールの塗装をやり直し、タイヤも新品に交換する。

バイクを安く維持するためにも、タイヤ交換はマスターしておくと便利

レストアではタイヤは交換が基本

レストアのベースになるようなバイクは、タイヤもかなり劣化しているものだ。山があるように見えても、よく見るとゴムが劣化してひびだらけ。表面は硬化してグリップ力もなくなっており、とてもじゃないが怖くて使えない……というのがお決まりのコースだ。

この「ジェンマ」の場合、ぱっと見た限りではきれいな良い状態で、ひび割れも少なかったが、タイヤに必ず刻印されている製造時期の数字を見ると「052」となっていた。これは1992年の第5週に製造されたという意味だ。つまり20年以上経過している。これでは交換するほかない。

タイヤはレストア費用の中でかなり大きな負担になってしまうことが多いのだが、原付スクーターだけは別だ。ほとんどのモデルが同じサイズを採用しているためか、適合するタイヤは非常に安く販売されている。「ジェンマ」は30年も前のモデルだが、タイヤのサイズは現在の普通の原付スクーターと同じ。この点はラッキーだった。

さて、作業ではまずホイールを車体から取り外し、続いてタイヤをホイールから外す。難しいのはタイヤの取外しで、初めてだとかなり時間がかかるかもしれない。しかし、タイヤレバーが2本あれば、あとは試行錯誤でなんとかなるだろう。

リアやホイールを取り外した。タイヤのパターンが非常にクラシカルだ

タイヤはビードという部分がホイールにがっちり食いついているので、ビードブレーカーという道具でビードを落とす。この道具は自作

タイヤレバーでタイヤを外していく。この手の作業は習うより慣れろといった面が強い

タイヤからチューブが出てきてびっくり。いまはスポークホイール以外にチューブタイヤを使うことは少なく、時代を感じさせる

このあたりまで作業したところで、このホイールはハブが別体になっており、取り外せることに気づいた。「ジェンマ」のホイールは前後ともに片持ちとなっていると知ってはいたが、それだけではない凝った構造になっているようだ。自動車と同じように、シャフトにはハブが固定され、そのハブにホイールがホイールナットで固定されているのだ。

ホイールは前後とも同じもので、パンクした際にはホイールナットを外すだけで簡単に交換できる。調べてみると、スペアタイヤやそれを積載する専用キャリアもオプションで販売されていたようだ。

これも、このバイクの原型(?)である「ベスパ」と同じと言ってしまえばそれまでなのだが、やはり「ジェンマ」の大きな魅力だといっていいだろう。スペアタイヤを積載した車体をネットで見つけたが、その姿はこの上なくかっこいい。しかし、この専用キャリアは現在ではまず手に入らないようだ。残念。

ホイールからハブを外せることに気づく。3個のホイールナットを見れば最初に気づきそうなものだが、このホイールは本来キャップが付くので、キャップを固定する金具と思っていた

フロントホイールで改めて説明しよう。このように、ホイールナットを外すだけでホイールを取り外せる。ブレーキドラムはハブ内にあり、ホイールにはない

ホイールの古い塗装を落とし、改めて塗装する

この「ジェンマ」のホイールは、前回紹介したトランスミッションのカバーと同じように、誰かの手で真っ黒に塗装されている。それもかなりいい加減な手抜き塗装だ。これを本来の色であるシルバーに塗装する。

そのために、まず古い塗装を剥がさなければならない。この作業は大変だった。想定外に苦戦したのがホイールの内側で、建物用の茶色いサビ止め塗料がべったりと塗られていた。剥離剤を使っても溶けにくく、ワイヤーブラシで地道に磨く作業が必要となった。

剥離ができたら、プラサフという下塗り材を塗り、シルバーの塗料、クリア塗料と重ね塗りして仕上げる。こういった複雑な形状のパーツは、下手な塗装でもきれいに仕上がるので気楽だ。塗料が完全に硬化したら、新品のタイヤを取り付けて作業完了。新品タイヤはチューブレスを使った。これでホイールのレストアは完了だ。

ホイールの内側にべったりと塗られていたサビ止め塗料。剥がすのに苦労した

剥離剤、ワイヤーブラシ、サンドペーパーで古い塗料やサビを落とし、塗装の下地を作る

まずプラサフを塗り、シルバー、クリアと重ねていく。下準備は大変だが、塗装作業そのものは楽しい

タイヤをはめる。ホイールにビニールテープをぐるぐると貼っておくと傷防止になり、滑りも良くなってタイヤを取り付けやすい

ホイールを傷つけないように注意して取り付ける

新品同様に蘇った。ボディが仕上がるまでの間、保管しておく

レストア必須アイテムを紹介!

今回のようにチューブレスタイヤをホイールに取り付ける場合、どうしても必要になるのがエアコンプレッサーだ。写真のタイプだと、ホームセンターで1~2万円程度で購入できる。

エアコンプレッサー

当連載でこれまで紹介してきたものと比べると非常に高価なので、わざわざ購入せずに、タイヤ交換だけはバイク屋に持ち込むという方法もありだろう。ただ、購入すれば日頃の空気圧調整など用途が幅広く、価格以上の利用価値があることも確かだ。

ここまでのレストアに費やした費用

品名 金額
車両購入(スズキ「ジェンマ50」) 1万100円
中古マフラー 91円
メインスタンド 34円
中古マフラー、メインスタンドの送料 1,404円
パーツリスト(送料210円込) 1,216円
ミッションカバーガスケット 1,512円
キックレバーシール 140円
マフラーガスケット 378円
ミッションカバーガスケット、キックレバーシール、マフラーガスケットの送料 1,150円
タイヤ(2本) 3,332円
タイヤバルブ(2本) 494円
合計 1万9,851円