こんにちは、リカレント教育コンサルタントの津田です。いよいよ9月に入り、季節は「勉強の秋」となりました。本日は「リスキリングで活用できるお金」について解説します。新聞やニュースでもリスキリング支援の報道が増えてきましたね。

ここでは、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業と教育訓練給付金についてご説明します。どちらも、教育サービス提供業者のサイトに、給付対象であることが明記されています。また、これ以外に自分の会社で別途、学習支援制度(資格取得の支援など)があるケースもあります。しっかりと調べて、積極的に活用していきましょう。

■リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業

  • 経済産業省リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業より(https://careerup.reskilling.go.jp/worker/)

リスキリングと労働移動の円滑化を一体的に進める観点から、在職者が自らのキャリアについて民間の専門家に相談できる「キャリア相談対応」、それを踏まえてリスキリング講座を受講させる「リスキリング提供」、それらを踏まえた「転職支援」までを一体的に実施する体制を整備しています。

対象は、在職者であり、雇用主の変更を伴う転職を目指している方です。雇用保険加入は無関係で、幅広く活用できます。個人事業主、経営者の方は対象外です。 事業者から、次の【1】~【3】のサービスを一体で受けることができます。

【1】キャリア相談(無料)

キャリアコンサルタント等の民間の専門家に自らのキャリアについて相談。具体的には、これまでのキャリアの棚卸しやキャリアゴールの設定、スキルの棚卸し、一人一人に適したリスキリング講座の検討のサポート等が含まれます。

【2】リスキリング(受講費用の負担を軽減)

キャリア相談の結果を踏まえて、リスキリング講座を受講。最大で70%(最大56万円まで)の給付を受け取ることが可能。具体的には、事業に採択された補助事業者のリスキリング講座を修了することで受講料の50%、受講後転職をして1年間就業することで受講料の20%の給付を受けとれることとなっています。

参照:経済産業省リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業「転職をご検討の方」

【3】転職支援(無料)

キャリア相談、リスキリング講座の受講等を踏まえて、転職に向けた伴走支援や職業紹介を受ける。

■教育訓練給付金

働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的として、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです。対象の教育訓練は、約14,000講座あり、具体的な講座は、教育訓練給付制度[検索システム]で検索できます。

対象は、雇用保険の適用期間が1年以上ある方です。前回の活用から3年空ける、離職中に関する条件などがあります。

給付金の対象となる教育訓練は、そのレベル等に応じて、専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練の3種類があります。

【1】専門実践教育訓練

特に労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練が対象。受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6か月ごとに支給されます。資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給されます。

なお、失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合、受講開始時に45歳未満であるなど一定の要件を満たせば、別途、教育訓練支援給付金が支給されます。

【2】特定一般教育訓練

特に労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象となります。受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給されます。

【3】一般教育訓練

その他の雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象となります。受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給されます。

※参照サイト 教育訓練給付金制度(厚生労働省)

■中小企業人材、副業人材、シニア人材について

岸田首相が、2022年の所信表明演説において、「リスキリング領域に5年で1兆円を投じる」と表明したことは、大きな話題になりました。また、2023年9月1日に開催された「日経リスキリングサミット」において、下記の趣旨で発言がありました。企業規模や年齢を問わず、国の支援が拡充されていく方向にありますし、副業人材に関しても国は積極的です。将来的には、地方の中小企業人材、副業人材、シニア人材について、企業向けはもちろんですが、個人向けのリスキリング補助支援が増えていくことも考えられます。ぜひ、積極的に今のうちから学びを習慣化していって下さい。

地方の中小企業への支援

5年で1兆円の人への投資施策パッケージで中小企業が従業員にリスキリングさせる際に活用できる助成金のメニューを拡充。今回の経済対策では特に地方の中堅・中小企業による投資促進策を強化して、中小企業、小規模事業者の従業員のリスキリングや非正規社員の正規化を図る。

兼業・副業への取り組みについて

個人のリスキリングへの意識を高めるうえで兼業・副業の経験は重要。5年で1兆円のパッケージで兼業・副業人材を受け入れる企業や送り出す企業への支援を新たに設けている。

シニア層のリスキリングについて

やる気とスキルさえあればシニアも活躍の機会が得られる。リスキリングの取り組み、賃金制度など先行している企業の好事例を具体的に情報提供する指針を策定し、横展開を促進していくことが重要。

※岸田文雄首相の発言要旨「日経リスキリングサミット」(日本経済新聞2023年9月1日)を筆者要約

次回は、「副業とリスキリング」について取り上げます。