こんにちは。リカレント教育コンサルタントの津田恵子です。

私は、「一人ひとりの能力が活きる社会を実現する」というミッションを実現するためリカレント教育の普及や採用コンサルティングを通じて、人々の幸せな働き方を支援する会社を経営しています。

「若手ビジネスパーソンのリスキリング」をテーマに本日は第2回目として、政府も支援している、『給与アップ』につながるリスキリング領域の探し方について解説します。

■給与アップの定義

大手企業や製造業にお勤めの方は、「定期昇給」の概念があるかもしれません。定期昇給とは、会社が決めたタイミングで定期的に賃金を上げる制度のことで、就業規則にその時期が定められています。また、春闘の時期に「ベースアップ」と言葉をよく聞きますが、これは会社の業績などに応じて、社員全員の給与を一律で上げる仕組みのことを言います。

リスキリングをして目指す給与アップは、定期昇給やベースアップの中のことだけではなく、市場価値あるいは社内価値の高い領域にスキルシフトをして、年収が高い職種を狙っていくことや、社外に出た時に、高い年収をもらえる職種に就くことを目指すべきです。岸田内閣の骨太の方針にもある通り、これからはリスキリングをして人材流動化が進むことを、国も奨励しています。社内と社外二つの視点で給与アップを捉えましょう。

■社内におけるリスキリング領域の探し方

リスキリングを初めて行うなら、まずは社内でどのような領域が求められているのかを考えるとよいでしょう。転職を予定している場合でも、今の環境で自身がシフトしたい方向に、どのくらい近づけられるかどうかの検討をお勧めします。

社内公募制度の職種

社内公募制度とは、新規事業の立ち上げや重点領域への人財補充などを目的として、社内から自発的応募により必要な人材を募集する仕組みのことです。応募には守秘義務があり、応募の事実が上司に知らされることはなく、また応募したことでその後の人事考課に悪い影響が出ないように設計されています。

社内公募の背景にあるのは、まさにこれから会社が重点領域として注力するビジネスです。新規事業開発や、デジタル化に関連するプロジェクトが増えていると思いますが、若手の場合、現状のスキルセットに加えて、本人の意欲の高さが重視されることもあります。ぜひ、積極的な情報収集を行い、その職種に必要なスキルを調べてみて下さい。

中期経営計画のメッセージ

企業が作成する中期経営計画、(略して「中計」といいます)についても、リスキリングのキーワードが沢山あります。例えば、「海外売上比率を●%アップさせる」という表現があれば、海外マーケットの販路拡大に繋がるような仕事が重視されるでしょう。語学力の向上、海外市場の情報収集、など異動のチャンスが来るまでに、できるようになっておきたいことは、沢山あります。

こうした投資ポートフォリオを押さえておくことで、近いうちに企業内で何が起きるか予想することもできます。今だと、脱炭素プロジェクト、DXという領域がホットです。中計に技術領域のワードが頻出していて、意味が分からないという時は、学びの大きなチャンスだと思います。ワードの検索はもちろん、どのような言葉とセットになることが多いのか、市場規模はどのくらいなのか、資格はあるのか、などぜひ調べてみて下さい。

同業他社のリスキリング施策

各企業の人事は、同業他社の施策をモニタリングしています。副業の解禁や、役職定年の廃止など、人事施策のトピックについて、その結果、リスキリング施策が立案されることもあります。皆さんの所属する企業の競合が、リスキリングについてどのような取り組みをしているのか見ておきましょう。具体的には、対象者(若手、中堅、ミドルシニア)、施策の種類、テーマなど、自分で講座設計をする際の参考になると思います。

また、リスキリングのように、国が推奨するような取り組みについては、人事も社員の声を聞きたいと思っています。具体的に学んでみたいテーマについて、提案してみるのもよいでしょう。

■社外におけるリスキリング領域の探し方

社外においては、様々なリスキリング講座の情報が飛び交っています。今なら30%引き、といったキャンペーンもあり、気持ちが揺れてしまいがちです。今一度、リスキリングの基本に戻って考えていきましょう。

今の職種×デジタル

マーケティングの方であれば、マーケティング×デジタル、MA(マーケティングオートメーション)、アンケート時のテキストマイニング。人事の方なら、人事×データ分析、ピープルアナリティクス。営業の方でしたら、セールス×デジタル、セールステックといった、現行職種とデジタルを掛け合わせできる領域がおすすめです。

デジタル化は「自動化」「ペーパーレス」「業務効率」といった結果をもたらしますが、人材育成の文脈では「論理的思考力」「課題の抽象化」「数学的なものの見方」などが必要です。今までに比べると、より一層問題解決のレベルが高くなり、仕事の難易度が上がります。したがって、業務に関する知識をすでに持っている領域で、デジタルに関する新しいリスキリングをしていくと効率的だと思います。全く未経験の職種に挑戦する場合は、中長期で取り組んでいくことがおすすめです。

職務経歴書に残るものであること

リスキリングより前に、複数のスカウト媒体に情報登録をして、どのような企業、職種からアプローチが来るのか、把握しておきましょう。気になる企業からのオファーは、カジュアル面談で話をしてみると、自身を評価してもらったポイントを聞くことができます。

リスキリングの結果、資格取得に繋がった場合、TOEICなど資格試験の点数がアップした場合など、必ず自分の職務経歴書に記載をして下さい。また資格のように目に見えないものであっても、学んだテーマとそこからの行動変容について記載すると、目に留まる確率があがります。自分にとっては大したことないな、と思っていても、他社から見ると欲しいスキル、経験であることもあります。ぜひ、リスキリングの内容と成果は職務経歴書に書くようにして下さい。その結果、スカウトメールの届き方がどのように変わったか、確認してみて下さい。

次回は、学習講座の選び方、についてご説明します。