一般的に「退職時の手続き」は、社内の人事担当者が案内してくれるケースが多いのですが、担当者の知識や経験によっては、「詳しくは各役所に聞いてください」と言われてしまったり、会社の規模によっては人事部がなかったりするケースもあるでしょう。
そのような場合、適切な案内を受けられず、結果として「手続きがもれてしまった」といったことにもなりかねません。
退職後、就職先が決まっていない場合も含め、どんな手続きをする必要があるのか順を追ってみていきましょう。
知っておきたい「失業給付」
退職後に行う手続きの一つに失業給付の受給手続きがあります。
もし、次の就職先が決まっているのであれば、とくに手続きの必要はありません。また、退職後すぐに再就職しない場合でも、失業給付を受給せず退職日から1年以内に就職すれば、今まで雇用保険に加入していた期間もリセットされず、加入期間は通算されます。
しかし、退職後に就職先が決まっておらず、失業給付を受給する場合には、会社に離職票を発行してもらう必要があります。
失業給付を受けるには、退職日前2年間に12カ月以上雇用保険に加入していることが必要です。また、この「12カ月以上」のカウントには、各月11日以上賃金が支払われている必要があります。
先ほどもふれましたが、もし、退職する会社だけでは12カ月の要件を満たさなくても、前職で失業給付を受けておらず、1年以内に再就職した場合であれば、前職の期間も通算して12カ月をカウントすることができるわけです。
なお、会社都合で退職することになってしまった場合は、退職日前1年間に6カ月雇用保険に加入していれば失業給付を受給できます。
しかし一般的に「すぐ受給できない」とよく言われているように、自己都合退職の場合であれば、3カ月間は給付制限がかかっており受給することができません。
ただし、どうせすぐに受給できないからとハローワークに離職票を持っていかなければ、3カ月間のカウントも進みません。「手続きしてから3カ月」ということを頭に入れて、早めにハローワークへ手続きをしましょう。
また、離職票をハローワークへ手続きすることで「受給資格者証」が発行されます。退職した経緯によっては、この受給資格者証が必要になることもあるため、早めに手続きをしておくようにしましょう。
どんな場合に確定申告が必要なの?
退職後に行う手続きの中に、税務まわりの手続きがあります。では、どのような場合に確定申告が必要になってくるのでしょうか。
答えは、退職後の就職先は決まっているものの、その年のうちに就職ができず、翌年になってしまうようなケースです。また、当年中に就職しても年内に給与の支払いがない場合も、年末調整ができないため、確定申告が必要になります。
例をあげると、10月に退職した人が12月に就職したとしても、就職先の給与の支払いルールにより給与が年内に支払われないケースがこれに該当します。
また、当月に支払うルールであっても、入社日の関係上給与の支払いが間に合わないケースや、支払いが翌月払いで年内に給与の支払いがないケースでは、年末調整ができないため、原則として確定申告が必要となってきます。
なお、退職後に海外で就職をするケースや、配偶者の海外赴任などに伴い非居住者になったケースも同様に確定申告をする必要があります。
退職時に受け取る必要がある書類とは
最後に、退職時に会社から受け取る必要のある書類を整理しましょう。
社会保険資格喪失証明書
→健康保険組合から送付される場合もあります。離職票
→退職者の希望によるため、次の就職先が決まっており発行を希望しない方は発行されません。雇用保険被保険者証
→中には入社時に返されているケースもありますので確認が必要です。源泉徴収票
→次の就職先で必要になります。就職しない場合も確定申告時に必要です。
退職が決まったら
退職の手続きを一通り終えて無事に退職が決まってからも、行わなければならない手続きは数多くあります。
退職後は今までは会社がやってくれていた手続きを、すべて自分で行わなければいけなくなります。
中には手続きの期限が厳格なものもあるため、退職の意志を固めたら、まずはやるべき手続きを確認し、退職してから慌てることのないようにしっかりとスケジュールを組んでおくといいでしょう。
筆者プロフィール: 土井 裕介(どい ゆうすけ)
特定社会保険労務士/大槻経営労務管理事務所所属
数名規模から数千人規模の事業規模、業種ともさまざまなクライアントを担当し、サテライト勤務や在宅勤務をはじめとしたテレワークを生かした働き方のアドバイスを得意とする。また、M&Aの案件も数多く担当し、クライアントのニーズに応えたサービスを提供する。