大学でまちづくりや設計を学び、ワンストップリノベーションサービス「リノベる。」で累計約700組の住まいづくりに寄り添ってきた小野寺七海さん。住宅購入の先にある人生も見据えた住まい方の提案を通じて、お客様にとっての「らしい暮らし」と、CO2排出量を抑えた環境にも優しい住まいづくりを推進しています。

連載にあたり、マイナビニュースの読者のみなさま約500名にリノベーションに関する疑問についてアンケートを実施し、沢山のご質問をいただきました。第4回の「リノベーションのコスト」に関する話題に続き、第5回は「住まいのお手入れ」についてお話しします。

どうしたら家を長持ちさせられますか? (40代・男性・会社員)

リノベる 小野寺七海さんからの回答

沢山のこだわりと好きがつまった住まいですから、素敵に長く使い続けたいですよね。

今回は、住まいを長持ちさせるという観点から「住まいをきれいに保つ秘訣」と「住まいのメンテナンス」をキーワードに、具体的なティップスもご紹介したいと思います。

  • リノベる。東京 吉祥寺ショールーム

住まいをきれいに保つための「家事導線と間取りの工夫」

仕事や育児など、日々の生活がある中で、住まいを綺麗に保つための掃除の時間確保は難しいものです。まとまった時間が取れないから…と、片付けや掃除が後回しになることも。

実は、片付けや掃除の負担を減らせる間取りの工夫ができるのも、リノベーションの魅力なんです。まずは、住まいづくりをするタイミングだからこそできる、家事導線と間取りの工夫をご紹介しましょう。

家事動線等の工夫【1】「洗濯が数歩で終わる、家事室」

こちらは、我が家の家事室です。

工夫したポイントは、なんといっても洗濯が数歩で完結する点。まず、洗濯機の横に洗濯物をたたむ台を設置しました。これはアイロンをかける台としても活用しています。この台の下には、洋服やリネンの収納も設置しているので、畳んだそばから仕舞うことが可能です。まさに、洗濯が数歩で完了します!

家事動線等の工夫【2】「吊り戸でお掃除ロボットもスイスイ掃除」

お客様からも「マネしたい! 」と言われるのが、吊り戸です。リノベーションを検討される方の多くは、これを機にお掃除を自動化されたいと考える方がとても多くいらっしゃいます。下にレールがない吊り戸にすることで、お掃除ロボットがスムーズに動けるため、キレイをキープすることが可能です。

家事動線等の工夫【3】「適材適所、適量の収納」

収納についてはついつい大きなものを作ってしまいがちですが、それによって逆に物が増えたり、どこに何があるか分からなくなったりすることも。『衣類→ウォークインクローゼット』『外で使うもの(コートなど)→土間』『日用品/ストック品→パントリー』『書類→ワークスペース』など、モノの住所と容量を決めることは大切です。さらに、収納スペースを設置する場所は、そのモノを一番使う場所であることがとても重要です。

どこで使う? どんな風に使う? という日々の行動から逆算して、間取りや設置場所を決めていきましょう。

「住まいのメンテナンス」方法

リノベーションの内装で使用する部材は、長く使えば使うほど味が出る素材が人気です。自分たちで手を加え、メンテナンスしながら使うことで、住まいへの愛着も増していくでしょう。今回はそんな部材の代表格である床材(無垢材)と壁のメンテナンスについてご紹介しましょう。

【床のメンテナンス方法】

人気の天然無垢の木材(以下、無垢材)は、調湿作用により夏は素足でも心地よく、冬は木材特有の空気層により温かみが感じられ、快適に過ごすことができます。また、自然の風合いを楽しむという意味で、年月の経過とともに色合いが変化するのも嬉しいものです。そんな床は、日頃のお手入れと年に数回のお手入れ方法が異なります。

無垢材▼日頃の掃除
柔らかい布で「から拭き」をしましょう。
※水拭きはフローリングの毛羽立ち、変色、反り・曲がりなどの原因となるため避けてください。

無垢材▼定期メンテナンス【1】/フローリングのシミ汚れ補修(オイル塗装の場合)

作業時間:2畳で約20分+乾燥時間30~40分
頻度:半年~1年に1回
準備するもの:マスキングテープ、雑巾(2枚)、紙コップ、刷毛、やすり、オイル(ご自宅の床材に使用されている物)
注意事項:よく換気を行うようにしましょう。
オイル商品の使用方法、注意事項を読んでご利用ください。

1.掃除
散布を想定する場所を掃除機をかけ、雑巾(材料外)でから拭きする

2.やすりをかける
シミなどが気になる部分に、木目に沿って目の粗いやすり(目安:120番)をかける。

  • リノベる。Days「住まいを育てる動画/フローリングのシミ汚れ補修」より抜粋

その後、該当のフローリング全体にやすり(目安:240番)をかけ、固く絞った雑巾で木粉を拭き取る。(シミのある一部分だけではなく、フローリング1枚単位で補修したほうがキレイな仕上がりになる。)

  • リノベる。Days「住まいを育てる動画/フローリングのシミ汚れ補修」より抜粋

3.保護
マスキングテープで塗らない部分を保護(養生)する

4.オイルを塗る
紙コップにオイルを入れる。オイルは刷毛で木目に沿って、細部も丁寧に塗りこむ。

  • リノベる。Days「住まいを育てる動画/フローリングのシミ汚れ補修」より抜粋

余分なオイルを乾いたぞうきんでふき取る。
※ワックスが乾くまで立ち入れないので、進行方向と退路を確認!

5.乾燥
30分程乾かす。

無垢材▼定期メンテナンス【2】/ワックスがけ

作業時間: 2畳で約20分+乾燥時間30~40分
頻度:半年~1年に1回
準備するもの:ゴム手袋、マスキングテープ、雑巾(新品)、紙コップ、刷毛、ワックス ワックスがけのメリット:細かな傷がつきにくくなる。撥水性向上。汚れの付着防止
注意事項:よく換気を行うようにしましょう。また、ワックスの塗膜により光沢が出る場合があります。光沢が苦手、または無垢材の風合いを特に大切にしたい場合には、ワックスをオイルに代えて同様の手順で作業してください。

1.掃除
ワックスがけを想定する場所を掃除機をかけ、雑巾(材料外)でから拭きする

2.保護
マスキングテープで塗らない部分を保護(養生)する(壁や扉等の養生も忘れずに)

3.ワックスを塗る
ゴム手袋を装着し、ワックスの缶を良く振った後、紙コップにワックスを入れる。 ワックスは刷毛で木目に沿って、細部も丁寧に塗る。雑巾でワックスにムラがないよう塗り広げる。
※ワックスが乾くまで立ち入れないので、進行方向と退路を確認する

4.乾燥
30~40分乾かす。

いかがでしたか?
今回は液体状のワックスをご紹介しましたが、蜜蝋ワックスのような固形状のものもありますので、面積や都合に合わせて検討してみてください。

【塗装の壁のメンテナンス方法】

続いては、塗装の壁です。実は、塗装の壁はメンテナンス性に優れています。というのも、壁紙は一部分がはがれてしまった場合、全面張り直しということにもなりかねませんが、塗装は一部分を上塗りすることが可能だからです。(お子様がいたずら書きしてしまっても、気に病む必要はありません!)

定期メンテナンスについては、「リノベる。」の契約者様専用サービス「リノベる。Days」で以前主催した「壁の塗装体験イベント」の様子を交えてご紹介しましょう。

では早速、塗装壁のお手入れを見てみましょう。

塗装の壁▼日頃の掃除

軽度の汚れの場合は、きれいな消しゴムを使い軽く擦るとキレイになる場合があります。あまり力を入れすぎると塗装面を傷つけてしまうため注意してください。

それでも落ちない場合は、無水エタノールまたは住宅用洗剤を水で薄めたものを布に染み込ませ、固く絞った布で擦るときれいになる場合があります。汚れが落ちたら乾いた布で水分を拭き取ってください。

塗装の壁▼定期メンテナンス/壁の塗装

消しゴムや洗剤を使っても汚れが落ちない場合は、汚れの上から塗料の上塗りをおすすめします。イベントの様子も交えて、ご覧ください!

作業時間:作業時間1時間半+乾燥時間1時間~
頻度:半年~1年に1回
準備するもの:マイクロファイバーウエス(布)、水性塗料、トレー、ウエットティッシュ、はさみ、刷毛、ローラー、マスキングテープ、マスカーテープ(マスキングテープと広い面を覆うシートがついた養生シート)
注意事項:よく換気を行うようにしましょう。
各商品の使用方法、注意事項を読んでご利用ください。

0.落書き(!)
まずは、みんなで落書きするところからスタート。どうせ上から塗ってしまうので、好きな絵や文字を思う存分描いた。(これも良い思い出です!)

1.養生
はねた塗料で汚れないように、壁と床を養生する。 まずは塗装しない面にマスキングテープをまっすぐ貼り付ける。塗装面から1.2ミリほど間隔をあけて貼ると仕上がりがきれいになる。(画像【1】参照)

マスキングテープの上からマスカーテープを貼り、マスカーテープのビニール部分を広げる。

  • 画像【1】

2.塗装準備
特に汚れが気になるところをウェットティッシュ、アルコール、中性洗剤などでふき取り、乾かす。

3.塗装
塗料を少量紙コップなどに出し、ローラーや刷毛などにつけ、該当箇所のみ塗って20分ほど乾かす。

しっかり乾いたことを確認したら、塗装の缶を良く振り塗装用の容器に入れて、塗料の半分程度の量の水を加えて混ぜる。塗った個所が乾いたことを確認したら、ローラーをかけにくい隅から刷毛で塗る。ある程度隅が濡れたら、ローラーで下から上に向かってゆっくり優しく転がす。

4.乾燥
30分程度乾燥させる。

5.再度塗装
塗装面が乾いたことを確認したら、上から再度塗り重ねる。塗る工程は3と同様。

6.再度乾燥
30分程度乾燥させる。

イベント開始から2時間、落書きタイムと養生を経て再び壁が真っ白になりました!

参加いただいたみなさまからは「塗装のいろいろを教えて頂き、大変参考になりました。」「壁へのイラスト描き、塗装すごくたのしかったです。」と大満足の声が届きました。また「今後、壁の色変えも自分でできそう!」というお声もあり、将来的な楽しみにも繋がったとのこと。

住まいに手を入れることは、「時間=劣化」ではなく、「時間=愛着」に代わるのかもしれませんね。他、リノベーションで人気の無垢床や塗装壁については上記で紹介したメンテナンス方法以外にも、清掃方法やひび割れ、へこみの補修方法なども紹介しているので、「リノベる。Days」の動画も参考にしてみてください。

【YouTube】リノベる。/ Renoveru 「住まいを育てる動画」はこちら