コロナ禍が始まってそろそろ1年、リモートワークにも慣れる方もいる一方、環境が変わったり、一緒に働くメンバーが変わることで「リモートだとうまくコミュニケーションできない……」という悩みは尽きないものです。そんな悩みを解決するヒントとして、『リモートワーク大全』(ポプラ社刊)を上梓したシックス・アパートの広報・壽かおりさんに、「リモートワークのコミュニケーション」のコツを伺います。

いつものメンバーとの会議なら顔を出さなくてもいい

リモートワークと聞いてイメージするのは、「自宅でデスクに向かっている姿」「画面に何人もの顔を写しながら、オンライン会議をしている姿」ではないでしょうか。そのイメージから、オンライン会議と言えば、カメラをONにして全員が顔出しして行うもの、と思っている人も多いと思います。

ですが、すべてのオンライン会議で顔出し必須というわけではありません。いつものメンバーとの定例会議や、突発的なクイックコールの場合には顔出しナシで、資料を画面共有しつつ行っても良いのではないでしょうか。

社外の人には驚かれることもあるのですが、社内メンバーとのオンライン会議に限っては、リモートになった当初からずっと顔出しなしでした。そのため、話を聞いていることを示すために神妙な顔でうなずくなど、態度で表明することは必要とされません。

そのかわり、「なるほど」と言葉で反応したり、疑問があれば質問したり、意見を聞きたい場合は問いかけて返事をしてもらうなど、言葉で明確に伝えることを意識しています。

とはいえ、オンライン会議で顔を出さないことに抵抗がある人もいるかもしれません。そこで「なぜオンライン会議でも顔を出さなくてよいのか」をまとめました。

理由1:対峙するのは顔ではなくて議題

会議の参加者が対峙するのは相手の顔ではなく、議題です。

会議室に集まって行う会議も、相手の顔をじっと見ながら話をするのではなく、ホワイトボードに議題を書き出してみんながホワイトボードに向かって議論することがほとんどでした。

当社のオンライン会議では、画面には常に資料を共有しています。顔が見えなくても、いつものメンバーなら声やしゃべり方でも誰が話しているのかわかります。仮に声でわからなくても、参加者リストを見たら話している人の名前やアイコンにマークがつくので問題ありません。

理由2:通信量が増えてパソコンの処理が重くなる

リアルタイムの映像と音声を受信しつつ、さらにこちらからも映像と音声を送信するとなると、1時間で数百メガバイトの通信量になります。音声だけのオンライン会議なら数十メガバイトですむことを考えると、通信量は1桁違います。

自宅の通信環境の品質や、オンライン会議に利用するパソコンのスペックによっては、処理が重くなって肝心の会議の内容が途切れ途切れになってしまいます。

理由3:自分と家族のプライバシーを守るため

自宅から参加することが多いオンライン会議。家族にとってもプライベートな場所で参加することになるので、自宅でオンライン会議に参加する以上、家族のプライベートを晒さないよう責任を持って対策する必要があります。

背景から伝わる情報量はとても多いです。写っているアイテムから公にしていない趣味がバレてしまったり、窓の外の景色や建物から家の場所がわかってしまったり、聞こえてくる音から家族構成を推察されてしまったりします。

背景を隠すことで、プライベートを見せない方法はあります。でも参加者全員が、常にこれらの選択肢を用意できるとは限りません。

自宅をワークスペースにしている以上、個人の事情も考慮し、「毎回必ず」顔出しを強制する必要はないと思っています。

顔出しナシに持っていく方法

いつものメンバーのいつもの会議なのに、毎回カメラをONにして顔出しするのが当たり前という「空気」が続くこともありますよね。その空気、変えたいならば変えましょう。

あなたが会議を仕切るならば、招集の際に「資料を画面共有して行うので、参加者のカメラはオフでかまいません」のように宣言するだけです。会議を仕切る人が別の人ならば、あなたがその方と直接話して、顔出しナシに話を持っていきましょう。

問題は、偉い人が顔出しにこだわっている場合です。「しゃべっていても、反応が見えないから不安」というのは、よく聞く、顔出しをして欲しい側の意見です。

とはいえ、これまで社内外の方と電話のやりとりでたくさんの仕事を進めてこられたはず。常に顔を見続けなくても、仕事はできます。声に加えて資料共有もチャットもあるのに、反応が伝わらないわけありません。

まず、会議冒頭の挨拶が終わったらカメラをオフにしてしまいましょう。誰かが画面共有に切り替えて、大きく資料が表示されている時がベストなタイミングです。

画面共有時は、顔は小さくしか写りません。また資料に注目している状態なので、顔を消してもバレにくいです。さらにカモフラージュしたければ、カメラ映像をキャプチャーした画像をアイコンに設定すれば、気付かれにくいでしょう。

もしも言い訳が必要なら、以下の中で適したものをご利用ください。

機材やネットワークのせいにするシリーズ

「さっきからネットワークが不安定なので、カメラはオフにしておきます」 「パソコンが熱くなってきたのでフリーズする前に、カメラだけ切りますね」

家庭の事情シリーズ

「家族が帰ってきて後ろが騒がしいので、カメラオフにしますね」 「別の部屋に移動しないといけなくなったので、カメラ切ります」

自分の事情シリーズ

「ずっとこちらの顔がカメラで写りっぱなしなのも緊張するので、切ります」 「最近肌荒れがひどくて、自分の映像見てるのも辛いのでカメラなしにします」

特に言い訳しないシリーズ

黙ってカメラをオフにする。もしそれを誰かに指摘されたら「あ、はい切ってました」とさらっと言う。「写ってませんか? あー、なんでだろう? 声は聞こえますよね? ならば、よかったです。あとで設定確認します」と適当にごまかす。

顔出しナシにしつつも、議論には積極的に参加しましょう。

参考書籍:『リモートワーク大全』(壽かおり著、ポプラ社刊、税込1,870円)
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、「会社に出社しない」働き方を導入し、リモートワーク・テレワークを実施する会社が増えてきている。本書は、主に一般のビジネスパーソンが、リモートワーク・テレワーク時に必要なことがすべて書かれた一冊。ツールやアプリ、会議・打ち合わせの効率的なやり方から、家族や子どもとの接し方まで、読むだけでリモートワーク・テレワークに必要なことがすべて身に付きます。