チャンネル サスペンスシアターFOXCRIME
この番組がスゴイ! DEXTER~警察官は殺人鬼

善良なシリアルキラーVS凶悪犯罪者

マイアミ署に勤める科学分析官のデクスター・モーガン。彼は法では裁けぬ悪人を闇に紛れて始末する。というと、必殺仕事人風でなにやら正義の味方のように感じるが、まったくもってそうではない。とにかく殺人が趣味、大好き、殺さずにはいられないから殺す。己の欲望に忠実な実にアブナイ人物だ。殺した相手が流した血の一部は、スライドガラスに納めて大切にコレクションしている。まさしくテッド・バンディか、ヘンリー・リー・ルーカスか。サイコパスであり、シリアルキラーなのである。

まさに地上波放送ではお目にかかれない超異色ドラマ『DEXTER~警察官は殺人鬼』(「FOXCRIME」より)

こうなってしまったのは幼少期に彼の目の前で母が惨殺されてしまったから。おかげで人としての感情を失ったデクスターは、彼を助けた警察官の家に養子として引き取られるが、成長するにつれて小動物を殺すなど殺害衝動が溢れてきてしまう。そこで一計を案じたのが育ての父親であるハリーだ。なんとか悪の道に走らないように、どうせ殺すなら凶悪犯罪者を殺せと教える。さらに自身が敏腕警察官だったことから、警察の捜査方法や証拠を残さない方法を徹底的にレクチャーしたわけだ。

というように『DEXTER~警察官は殺人鬼』は、英才教育を施されたエリート殺人鬼が主役のドラマだ。いや、ぶっとんだ設定である。地上波ではおそらく放映できないレベルのグロい描写も数多い。しかし、全体的に漂う雰囲気はどこかコミカルだ。普段のデクスターは「好きこそものの上手なれ」というべきか、血液専門の分析官として絶大な信頼を置かれている。本当は他人の心はくみ取れない"KY"な性格なのだが、署内ではいつもドーナツを差し入れし、同僚の悩みをよく聞き、男あさりの激しい義妹を諫め、おかしな人と思われないように四苦八苦して、社会に適合するために愛すべき人物を演じている。その二重生活におけるギャップがコメディタッチに描かれているからである。

だが、同じようにアブナイ人物にはデクスターの演技は通じないらしい。シーズン1では同じ殺人鬼である"冷凍庫キラー"が、シーズン2では放火魔の美女が周囲をうろつき困らせる。そして現在、放映中のシーズン3でも、またも自身の身を危うくさせる人物がデクスターに近寄ってくることに。いやはや、昼も夜も苦労が絶えないデクスター。はたして彼は捕まらず、趣味を満喫できるのか。殺人鬼を応援したくなるというのは問題だが、かなり新しいタイプのドラマといえるだろう。

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