チャンネル ミステリチャンネル
この番組がスゴイ! Mysteryブックナビ

このミステリがイチオシ!

NHK衛星第2テレビに90年代初頭に放映を開始し、現在も放映中の「週刊ブックレビュー」なる長寿番組がある。毎回、さまざまなジャンルの選者が推薦の本を紹介するという珍しい書評番組だ。書評というと雑誌や新聞の片隅の方にひっそりと咲いている姿が思い浮かぶ。それをテレビで行っているわけだ。前述した新聞や雑誌の限られた枠に比べ、こちらは一冊をより掘り下げて紹介してくれる。ひっそりとではなく、本を肴にして話に大輪の花が咲く。本好きにはたまらない番組といえよう。ただ、紹介される本は文芸書が中心である。そこはお堅いNHKというわけか。そこで柔らかい頭を持つ人のためにオススメしたいのがこちら。ミステリ小説好きのための書評番組『Mysteryブックナビ』(ミステリチャンネル)だ。

ミステリ好きにはおなじみのミステリチャンネルの中でも、『Mysteryブックナビ』の出演陣による濃い話は必見だろう

番組は月刊更新。メインとなるのは「これがイチオシ」コーナーで、関口苑生、香山二三郎、大森望という『このミステリーがすごい!』の選者としてもおなじみの出演陣が、それぞれ新刊ミステリを持ち寄って、その本のどこが気に入ったかを一人ずつ大喜利よろしくアピールする。最後に司会の豊崎由美が、そこからイチオシの最優秀作を選出するというものだ。イチオシ作品に選ばれた本の選者には、これまた大喜利よろしく豊崎からバッジが一個与えられるのがお約束となっている。しかし、それを10個集めれば褒美が貰えるわけではなし。話される内容は濃いがノリはかなりゆるい。毒舌書評で知られる出演陣の普段の姿は影を潜め、和気藹々と軽口を叩き合いながらミステリを語る。それは会議室然とした場所で撮影されていることもあり、まるで大学のサークル部屋で仲の良いマニア同士が話しているかのよう。当然、好きな人ならニヤニヤしてしまう。

というわけで相当に限られた人のための番組である。いい年をした出演陣が「うっへっへ」と殺人事件をほくそ笑みながら語る姿には、赤文字雑誌を好んで読む方なんぞは、一瞬でチャンネルを変えることだろう。だが、そのままにしておく人にとっては、本を選ぶ際には実に参考になるハズ。とくに海外ミステリの新刊となると書評を目にする機会が少ないだけに貴重だ。また、番組では業界におけるニュースも紹介される。文学賞の授賞式で仏頂面したミステリ作家や、幻影城主催のパーティなど、ここでしか見ることができない映像が流されることもあり、こちらも好きな人にとってはたまらない内容。ミステリの今を知りたいならご覧あれ。

コラム『多チャンネル? どれ観りゃいいのよ』

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