たとえどんなに美人でも、待っているだけでは誘われることも少なくなってしまいます。実際、美人で魅力的なのに、モテなかったり、なぜか寂しそうだったりする人がいるものです。そういう人、心当たりありませんか? せっかく魅力があるのに、行動しないがゆえに「誘われ下手」になっているというのは、自分自身が持っているものを生かしきれていない、非常にもったいない状態といえるのではないでしょうか。

美人ゆえに孤独だった彼女が、勇気を持って自分をチェンジ

今回紹介するカオリさん(仮名)は、筆者と出会った頃、まさにそんな女性でした。

「思わずハッとするような美人」も、人知れず悩みを抱えているようで…(写真はイメージ)

東京・新宿の実家住まい、両親の伝手で映像制作会社でアルバイトするかたわら、モデル事務所に登録し、撮影モデルを中心に芸能活動も行っている"美形さん"です。初めて出会ったとき、彼女は29歳でした。実家が裕福なこともあって、立ち振る舞いにも華があり、周囲はいつも人が絶えません。

いい意味で生活感がなく、子育てはもちろん、結婚さえ念頭に置かず自由に生活している女性。ただただかっこよく、「スタイリッシュな生き方」を体現しているタイプ……、そんな風に見えました。

でも、出会った頃から不思議に思っていたことがあります。彼女の人間関係はどうもおかしいのです。

たとえば、自他ともに認める「親友」であるはずの女性が、みんながいる場所で彼女の悪口を言うのです。それに、カオリさんに彼氏ができても、なぜかすぐ別れてしまいます。「モテて人気があるのに、いつも孤独な影がある人」、そんな印象がありました。

不思議に思った筆者は、しばらく真剣に彼女の様子を見ながら考えていました。そしてなんとなく理解しました。彼女は魅力的な女性なので人は集まるのですが、当の本人が人間関係をケアする努力をしないので、友人ができてもすぐに離れていくのです。彼女は美人であるがゆえに、その後も再び新しい友達グループができます。でもまたみんな去ってしまうのです。どうやら彼女の周囲は、これの繰り返しのようでした。

それって寂しいんじゃないかと思い、筆者も直接尋ねてみましたが、当時の彼女は気にする様子もなく、「来る者は拒まず、去る者は追わず」を装っていました。子供の頃からずっとそんな状態が続いているので、とくに問題とも思っていないようでした。

それまでの彼女は、おそらく「怖いものなし」で過ごしてきたのでしょう。当時はあらゆる面で若かったから、まあそれでもよかったのでしょう。でも30歳を超えても「来る者は拒まず、去る者は追わず」のままだと、近づく人より離れていく人の方が多くなるのは当然と思うんです。ちょっと近寄りがたいくらいの美貌を持つ彼女の場合はとくに。

昔は黙っていても周囲が財布を開けてくれたのに(なんてうらやましい!)、徐々にその回数が減ってきたことが、彼女に危機感を抱かせるきっかけになったようです。モデルの仕事も、はっきりわかるくらいの勢いで減っていきました。考えてみれば、そういう目に見えてわかる"物差し"があったことも、彼女にとって良かったのかもしれませんね。

飲み会に出かけたら、素敵な出会いが待っていた

「このままじゃいけない!」と気づいたカオリさんは、すぐに自分を変えるための行動を起こしました。そこが彼女のすごいところだと思います。実際に何をしたかといえば、「いまのままでダメなら、これまでと違うやり方を試してみればいい」と考えたそうです。

飲み会への参加がカオリさんの人生を変えたという(写真はイメージ)

その後、筆者から見てもさまざまな面で彼女は変化しましたが、一番大きく変わったのは付き合いがよくなったこと。それまでの彼女は、「(彼女が考える)自分にとってプラスがある人からの、ある程度高い店」への誘いにしか乗らないような人でした。でも考えを改めてからは、飲み会に誘われたら大衆居酒屋でも顔を出すようになりました。

最初の頃は、せっかく出かけても飲みの席で不快な思いをし、ただお金と時間を無駄にしただけ、という出来事もあったようです。でもさまざまな場所へ出かけていくうちに、彼女にとって本当の意味で合っている場所はどこか、自分に合っているのはどんなタイプの人か、だんだんつかめてきた様子。やがて1人ではない時間が増えていきました。

カオリさんが出会いをつかんだのは34歳のとき。最寄り駅の地下にあるタイ料理屋だったそうです。安くておいしいというその店に友達と飲みに行ったところ、後ろに座っていたグループと意気投合。そのグループにいた5歳年上の知宏さん(仮名)から猛烈なアプローチを受け、2人は付き合い始めました。

知宏さんは郵便局勤務で、カオリさんは出会った当初、彼に対してお堅い印象を持っていたそうです。しかし、知宏さんの考え方はこれまで自分が考えていたこととはまるで違うものだと気づき、それが彼女にとって興味深かったそう。そこをフックとして、2人は関係を深めていくことができました。

カオリさんと知宏さんの交際は現在も続いています。まだ結婚には至っていませんが、つい先日、カオリさんが「私に子供ができたら……」という話をしていました。彼女とは長い付き合いになりましたが、そんな話をしてきたのはこのときが初めてです。

いまの彼女はとても幸せそうに見えます。それまでの変なこだわりを捨て、飲み会への誘いにも気軽に応じて出会いを増やしたことで、彼女は幸せへの道を見つけたようです。

※当連載における「レイディ」とは、「女子」「ガール」といった、どことなく少女をイメージさせる存在からもう1歩踏み込み、「若々しさ」だけでなく「歳相応の深み」も持つ"オンリーワンの魅力"を秘めた「淑女(レディ)」をさす。「レイディ」という表現は新井素子氏のSF小説『通りすがりのレイディ』の主人公が憧れる、魅力的な女性への呼び名にちなんだもの

執筆者プロフィール : 来栖 美憂(くるす みゆう)

文筆家(男性)。ジャンルを問わない媒体で執筆中。近代カルチャーに詳しく、自身でもメイド喫茶などのイベントを企画・参加するなど実践派でもある。『アキバ☆コンフィデンシャル』(長崎出版)など編・著書多数。TwitterID「@mewzou