今回は貨物列車の話題。三井造船は12月7日、ロサンゼルス港向けに鉄道ヤード用自動化コンテナクレーン3基を引き渡したと発表した。コンテナ船から鉄道に積み替えるために使う門型のクレーンだ。このような装置が必要になる背景は何か。日本では導入できるか。いま話題のシベリア鉄道北海道延伸構想が実現するなら、これを使えばいいと思う。

三井造船の鉄道ヤード用自動化コンテナクレーン(画像提供 : 三井造船)

鉄道ヤード用自動化コンテナクレーンは、鉄道の貨車に海上輸送コンテナを積む、または降ろすための装置。船と貨物列車の間でコンテナを橋渡しするシステムのひとつとして機能する。ロサンゼルスではコンテナ港に鉄道線路が直結しており、船から貨物列車へコンテナの受渡しが行われる。世界各地で1990年代から自動化コンテナターミナルが建設される中、ロサンゼルス港は米国西海岸で初めての自動化ターミナルとのこと。

コンテナターミナル内のコンテナの動きはこんな感じだ。コンテナ専用船で港に到着した海上コンテナは、まず岸壁のクレーンで釣り上げられ、AGV(Automated Guided Vehicle System、自動運搬台車)に載せられる。AGVはコンテナターミナル内を無人で自動運転し、定められた場所へ向かう。

AGVが鉄道留置線の側に到着すると、鉄道ヤード用自動化コンテナクレーンがコンテナを引き上げて貨車に積み込む。鉄道から船へコンテナを移すときは、この逆のルートになる。これらすべてが、コンテナに搭載された電子タグを読み取ることで自動的に行われる。コンテナターミナル内には安全を確認する作業員のみ。作業の監視と積み荷への指示は遠隔操作室で行う。

AGVもクレーンも自動運転。遠隔操作室の指示で動く(画像提供 : 三井造船)

それまでは、岸壁のコンテナからターミナル構内用のトレーラートラックに積み替えられ、ドライバーがコンテナの目的地まで運送し、トラック、保管庫、鉄道のヤードクレーンに引き渡していた。これらが独立して伝票ベースで動いていたため、非効率だった。

AGVを使った自動化ターミナルは、輸送の高速化、安全性の向上、配送ミスの低減、荷役作業員削減による低コスト化、人身事故防止など、さまざまなメリットがある。ここに鉄道ヤード用自動化コンテナクレーンが加わり、船と鉄道のコンテナ移動は一貫した自動化が実現する。貨車にコンテナを二段積みにする「ダブルスタック」も対応している。

「船と鉄道でコンテナを円滑に受け渡す」という作業が米国で重視される理由は、米国に限らず大陸の国家にとって、「貨物列車は陸の船」という感覚で使われるからだ。

米国やヨーロッパなど大陸の国々では、内陸部に大都市があるため、船では到達できない。長距離輸送はトレーラートラックでは効率が悪い。そこで貨物列車の輸送力と低コストが必要とされる。一方、日本は大都市の多くが沿岸にあり、コンテナ船からトレーラートラックに乗せればすぐに目的地に到着する。したがって港のコンテナターミナルに鉄道線路が隣接し、さらに遠方に輸送する事例は少ない。

それでもJR貨物は、東京貨物ターミナル駅から東北方面や名古屋・神戸・福岡を結ぶISO規格のコンテナ輸送を実施している。東京貨物ターミナル駅は大井埠頭のコンテナターミナルと隣接しているから、大井埠頭に向けて線路を延ばせば、鉄道ヤード用自動化コンテナクレーンを使った効率アップも期待できそうだ。

実用化の期待がかかるとすれば、もうひとつ。現在、日本とロシアが経済協力を進めていく中で、ロシア側が提案する「シベリア鉄道の北海道延伸」だろう。ロシア側の線路が稚内に到達したとしても、線路の規格が異なるため、列車の直通運転はできない。ロシアも日本も独自の路線網を持っているため、どちらかに合わせた規格統一も難しい。

日本の貨物駅では、大型コンテナの積み卸しにトップリフターが使われている(筆者撮影)

そこで、稚内でロシアの線路と日本の線路を並べて、コンテナをそっくり積み替える必要がある。JR貨物は鉄道のコンテナを積み替えるにあたり、小型コンテナはフォークリフト、大型コンテナはトップリフターを使っている。なんだか手間のかかる作業だと思っていたけれど、三井造船が作ったような鉄道ヤード用自動化コンテナクレーンがあれば、この作業もスピードアップできそうだ。