外出自粛、接触回避の大型連休となった。外出しにくい状勢の中、人々のストレスを和らげようと、ネット上でお楽しみコンテンツを無料で提供する動きがある。鉄道事業者も動画公開や塗り絵、ペーパークラフトを提供し始めた。各事業者のお楽しみコンテンツから注目の作品を紹介する。

  • JR九州が提供する塗り絵「ななつ星 in 九州」

■塗り絵はコンテスト実施企画も

鉄道事業者が提供する無料サービスで、最も多いコンテンツが電車の「塗り絵」。プリンターで印刷し、色鉛筆やクレヨンなどで色を塗り、背景を描いて仕上げよう。実物と同じ色に塗っても良し、自分の好きな色に塗っても良し。描画ソフトに取り込んで着色すれば、PCの操作の練習になるかもしれない。作品をSNSで紹介する人も多く、同じ下絵でここまで違うかと、発想の豊かさに感心した。

JR九州は「おうちであそぼう!」特設サイトにて、賞品付きの塗り絵コンテストを実施している。応募はメールまたは郵送で5月31日まで受け付ける。作品は随時、同社のTwitterアカウント「その日まで、ともにがんばろう【JR九州公式】」で紹介されるほか、日常生活を取り戻した時点で展示会を開催予定。賞品は「或る列車」への招待、「ぐるっと九州きっぷ」「発売中のきみの好きな『プラレール』3両単品車両1つと『新幹線N700S確認試験車立体レイアウトセット』」とかなり豪華だ。

  • 東急電鉄はオリジナルキャラクター「のるるん」の塗り絵を提供

  • 「のるるん」塗り絵の作品例。背景に工夫あり

東急電鉄のように、作品をTwitterで投稿すると公式アカウントがリプライ、リツイートする事業者もある。ファンのみんなで楽しもう。

■動画は前面展望から名作舞台の無料公開まで

鉄道関連の動画はYouTubeなどの共有サイトにたくさんある。すでに前面展望動画などで「バーチャル乗り鉄」気分を楽しんでいる人も多いことだろう。

その中で、プロが撮影した有料作品の無料公開がうれしい。販売作品だけあって、有名撮影地をベストな天候で見せてくれるほか、プロカメラマンが選んだ構図やテクニックの発揮で迫力がある。前面展望動画は鉄道事業者の正式な協力を得て、運転室のベストポジションから撮影されている。アマチュアカメラマンは立ち入れない場所の映像が魅力だ。

前面展望動画や劇場映画『れっしゃだいこうしん』シリーズを制作するビコムは、公式YouTubeチャンネルで6作品を無料公開している。同社のチャンネルは通常、新作紹介にとどまっているものの、今回は『れっしゃだいこうしん2019 キッズバージョン』(約38分)のほか、『鉄道ビデオ入門 TEN-BOWS 関東私鉄編』(約2時間)など長編も公開。こども向けだけではなく、『九州の鉄道 ~昭和60年・国鉄時代最後の記録~』のようなブルートレインブーム世代に懐かしい作品も公開している。

水戸芸術館は2018年9月に上演された舞台『海辺の鉄道の話』の映像化作品を無料公開している。配信サービスはvimeoで、5月10日までの期間限定。『海辺の鉄道の話』は、茨城県のひたちなか海浜鉄道湊線の実話をもとにした感動物語。開業以来ずっと赤字だった湊線が第三セクター化し、地域の人々とともに成長し、路線延伸が決定するまでを描く。那珂湊駅の駅猫「おさむ」「ミニさむ」が擬人化されて登場する。舞台装置はシンプルな立体路線図で、駅ごとの心温まるエピソードをつなぎ、希望に満ちたラストシーンへ導く。親子で楽しめる作品だ。

■ペーパークラフトはNゲージ鉄道ジオラマやプラレール対応作品も

お楽しみコンテンツで、塗り絵の次に豊富な分野がペーパークラフトだ。幼児向け雑誌や学年誌の付録でおなじみだった。PDFファイルをダウンロードして、家庭のカラープリンターで印刷して組み立てる。普段使っているコピー用紙やプリンター用紙だと薄くて組み立てにくいから、厚手の用紙を使うと良いだろう。

ネット通販で購入する場合は、「斤量」というスペックに注目したい。書類の印刷で使う用紙は、薄いタイプが斤量60kg前後、厚いタイプが70kg以上。しっかり組み立てるなら、ペーパークラフト用紙やフォトプリント用紙が良い。斤量は160~180kgで、厚みはコピー用紙の2倍程度になる。紙面に光沢がある紙は完成したときの見栄えも良い。ほとんどの用紙はカラーインクジェットプリンターに対応している。レーザープリンターで使える用紙は少なく、光沢が抑えられているようだ。

鉄道事業者が自ら制作・配布しているだけあって、実車にかなり似た仕上がりになる。小田急電鉄のペーパークラフトはウェブサイト上で好きな色に塗ってから印刷できる。京成電鉄は牛乳パックに貼り付けて組み立てるタイプの型紙で、組立ての手間が省ける。相模鉄道の一部車両はプラレール車両に被せて遊べるという。東武鉄道は4扉車が3扉に短縮されており、こちらもプラレールに応用できそうだ。旧型車や東武博物館の展示車両もある。

プリンターを製造するブラザー工業は、自社サイトの「プリふれ模型店」にて精密なペーパークラフトを無償提供している。鉄道模型用品のメーカー、津川洋行が監修しており、ジオラマにも使えそうだ。Nゲージサイズは店舗、アパート、雑居ビル、ホテル、HOサイズはナロータイプの気動車がある。プラレールに並べても楽しそうだ。津川洋行はナロータイプの車両に対応する動力ユニットや、A4サイズでレールとコントロールユニットが付いたジオラマベースも販売している。

■お楽しみコンテンツを提供する鉄道事業者リスト

お楽しみコンテンツは関東の大手私鉄のほとんどが実施している。もともとファンサービスとして実施している会社もあった。一方、関西大手私鉄は少ない。国の要請に先駆けて、関東の都府県知事が外出自粛を呼びかけたからだろうか。

最後に、おもな鉄道事業者の公式サイトに掲載されたコンテンツを紹介する。これらの他に、鉄道事業者の公式SNSで配布されているコンテンツもある。好きな鉄道事業者があったら、この機会に公式SNSをフォローしよう。