相模鉄道の西谷~羽沢横浜国大間が11月30日に開業し、JR東日本の埼京線と相互直通運転を開始した。始発列車は早朝にもかかわらず報道陣と鉄道ファンが集まり、にぎやかだったようだ。筆者はその日に別件があり、行けなかった。その代わり、平日の運行開始日である12月2日、海老名駅から新宿駅まで、通勤時間帯の電車に乗ってみた。

  • 相鉄・JR直通線が11月30日に開業。海老名発新宿行の始発列車に合わせ、海老名駅で出発式が行われた

筆者が乗った車両の範囲では、羽沢横浜国大駅を経由して相模鉄道とJR東日本の境界を越えた乗客は約50名。座席が埋まり、ドア横に2~3人が立つ程度だった。新宿方面の通勤電車としてはかなり空いているほうといえる。ただし、次の武蔵小杉駅からたくさん乗ってきた。タワーマンションが林立するため、武蔵小杉駅の混雑はよく知られている。そこに空いた電車が来るわけで、混雑緩和に貢献していると言えるだろう。

帰りは新宿駅から海老名駅まで乗り通した。新宿駅始発で21時35分発、筆者が乗った車両では、座席がすべて埋まり、数人が立つ程度。小田急線や京王線、渋谷駅からの東急線に比べるとかなり空いている。ただし、渋谷駅、恵比寿駅と停車するにしたがって乗客は増え、武蔵小杉駅に着く頃には吊り手がすべて使われる程度の混み具合になった。そして武蔵小杉駅でごっそり降りていく。横須賀線や湘南新宿ラインに乗り換える人々だろう。

帰りの電車で武蔵小杉~羽沢横浜国大~西谷間を乗り通した人は、座席がすべて埋まる程度だったと思う。思ったより少ないけれど、今後、便利さが伝われば乗客は増えるだろう。定期券の更新をきっかけに、横浜経由から羽沢横浜国大経由へ切り替える人もいるかもしれない。この路線が受け入れられたか、その評価は定期券利用者が完全に移行する6カ月後を待ちたい。

■路線愛称が混沌としてきた

ところで、相模鉄道は今回の開業区間を「JR直通線」と表記している、しかし、2018年に相模鉄道と東急電鉄は連名で、西谷~新横浜(仮称)間の路線名を「相鉄新横浜線」、新横浜(仮称)~日吉間の路線名を「東急新横浜線」とすることを発表している。西谷~羽沢横浜国大間の正式な路線名は相鉄新横浜線のはずだけど、いまのところ新横浜には到達していないから誤解を招く。そこで、2022年に新横浜(仮称)駅に到達するまで、便宜的に「JR直通線」としているようだ。正式名称は相鉄新横浜線、愛称は「JR直通線」である。

ちなみに、JR東日本の公式サイトで羽沢横浜国大駅の構内図を見ると、1番線は「相鉄新横浜線」と正式名称を表示していた。ただし、2番線は「相鉄線直通(新宿方面)」となっている。ここは「埼京線」でも良かったと思う。正式な路線名ではなく、旅客案内上の愛称であれば、「埼京線」の延伸としてもよかったはず。もしかしたら、将来的に横須賀線品川方面と直通する可能性を考慮し、「埼京線」を避けたかもしれない。

  • 路線名と路線愛称の関係。黒文字が路線名、赤文字が路線愛称

JR東日本の路線愛称はもっと込み入っている。JR東日本の路線図では、「埼京線・川越線・りんかい線・相鉄線直通」と表記されている。いままで「埼京線・川越線・りんかい線直通」だったから、そこに「相鉄線直通」をくっつけた。大崎~羽沢横浜国大間の愛称があいまいになっているけれど、これは埼京線の延伸と考えたほうが素直だろう。鶴見駅から湘南新宿ラインと横須賀線をなぞっているけれども、新川崎駅を通らないから同一視できない。

そもそもJR側の正式名称は、羽沢横浜国大~鶴見~大崎間が東海道本線の貨物支線、大崎駅から池袋駅まで山手線の貨物線、池袋駅から赤羽駅まで赤羽線、赤羽駅から大宮駅までが東北本線の⽀線、大宮駅から川越駅を経由し、高麗川駅までが川越線。通称として、羽沢横浜国大~鶴見~大崎間を「東海道貨物支線」と呼ぶ人もいるし、大崎~大宮間は埼京線の名が定着している。

湘南新宿ラインは埼京線と少し違うルートになる。大崎~池袋間は埼京線と同じ山手貨物線を走るけれども、池袋~赤羽間は赤羽線ではなく、山手貨物線を走って田端駅へ。ここから東北本線に並行する貨物線を走る。

鶴見~品川間を「品鶴線」と呼ぶ人もいる。「品鶴線」は沿線の人々にも定着していた。筆者が幼少の頃、大田区に住んでいた親戚から「品鶴線」と教わった。貨物専用だった「品鶴線」は、1980年に横須賀線が乗り入れると「新横須賀線」と呼ばれた。いまは湘南新宿ラインとしても知名度を上げている。

何が言いたいかというと、相鉄・JR東日本の双方で「JR直通線」「相鉄直通線」「相鉄・JR直通線」などと呼び分けることはやめて、相鉄もJR東日本も路線愛称を「埼京・相鉄ライン」で統一してはどうか、と提案したい。約3年後、相鉄が東急電鉄との相互直通運転を開始したら、「東急・相鉄ライン」と呼べば統一感がある上に、「埼京・相鉄ライン」との乗り間違いを防げる可能性もある。ただし、東急電鉄にとっても相鉄にとっても、東海道新幹線の新横浜駅に直結するという意味は重要だ。こちらはあえて愛称を設けず、「相鉄新横浜線」「東急新横浜線」の名を押し立てたほうがいいかもしれない。

路線愛称は鉄道事業者が決めるだけでなく、ユーザー間で納得のいく愛称が広まって定着する場合もある。今後、利用者がこの路線をどう呼ぶか、気になるところだ。