鉄道趣味の世界で大型連休の最大のトピックは京都鉄道博物館だ。休日掲載のニュースは楽しく華やかにお届けしたい。しかし今回はJR北海道の話題。公式発表も報道も厳しい内容が続いた。
4月28日、JR北海道は留萌本線留萌~増毛間の鉄道事業廃止届出書を提出した。沿線の留萌市・増毛町の同意を取り付けた上での届出となった。鉄道事業法は廃止期日の1年前が届出の期限。しかし、代替交通手段の確保や地元の同意が得られる場合は廃止日を最大6カ月間繰り上げられる。JR北海道は廃止日を12月5日とする意向だ。最終運行日は前日の12月4日となる。
JR北海道は当初、月締めとなる11月30日を最終運行日としたい意向だった。しかし地元の要請で12月4日になった。11月30日は水曜日。12月4日は日曜日。わずか4日間の延長だけど、週末の廃止日になったおかげで、多くの人々がお別れ運行に参加できるだろう。
ところで、増毛駅6時11分発の始発列車のために、留萌駅から5時30分頃に回送列車が出発する。これからの時期、あの列車を旅客扱いしてもらえないだろうか。留萌の宿泊者も増えると思うのだが。
JR北海道にとって、留萌本線留萌~増毛間の廃止は事業再編の「決着」ではない。路線全体が赤字であるから、安全を第一の御旗を掲げた「事業の選択と集中」の過程だ。今後の廃止を危惧する路線としては、札沼線北海道医療大学~新十津川間、石勝線新夕張~夕張間、根室本線滝川~新得間・釧路~根室間、釧網本線東釧路~網走間、日高本線苫小牧~様似間、宗谷本線名寄~稚内間などが挙げられる。どれも輸送密度500人未満の閑散路線だ。留萌本線深川~留萌間は今回の廃止対象から免れたとはいえ、安心できない。
留萌本線廃止届提出の2日前、4月26日には、「北海道新幹線開業後1カ月間のご利用状況について」という報道資料を発表した。この資料に関しては2つの見解がある。青森~函館間において、対前年比246%を「好調」とする考え方と、乗車率27%を「低迷」とする考え方だ。JR北海道や北海道新幹線に批判的な報道機関は乗車率を叩く。
しかし乗車率に関しては、本来は批判に値しない。使用車両は東京~仙台間の混雑を前提としており、末端となる新青森~新函館北斗間では座席数が供給過剰になっている。それが乗車率の低さの正体だ。数字の見せ方の問題だ。乗車率を上げたいなら列車を短くすればいいだけの話。10両編成ではなく、5両+5両編成として、仙台駅または盛岡駅あたりで5両を切り離せば、乗車率は単純計算で2倍の54%になる。
そうしない理由は、分割併合の手間や分割編成を開発するよりも、10両をそのまま走らせたほうが低コストだから。北海道新幹線は乗車率をあげつらうよりも、前年実績の好調を重視したい。倍増した利用者をいかに道内各線につないでいくか、という提案こそ必要で、批判だけではどうにもならない。
ところが、北海道新幹線の乗客をさらに札幌方面へつなぐ期待の光が消えた。北海道新聞は4月26日、JR北海道などが開発してきた285系気動車の試作車について、未使用のまま廃車する見通しと報じた。285系気動車は車体傾斜装置と動力装置のそれぞれに画期的なハイブリッドシステムを搭載し、函館~札幌間を2時間40分前後で結ぶ計画だった。
285系気動車の実用化試験は2014年に中止となっている。JR北海道は安全性を重視し、最高速度を下げる方針となったからだ。函館~札幌間どころか、在来線各線の高速運行自体が見直された。納車された試作車は軌道検査車両として再利用する計画だったけれど、その改造費用が多額になるとして転用計画も廃止となった。285系気動車は使い道がなくなった。このままでは維持費もかかることから廃止になるだろう。実にもったいない。
こうなると、函館~札幌間の高速化の真打ちはやっぱり北海道新幹線だ。開業目標は2030年度である。しかしここでも札幌駅の設置について、JR北海道と札幌市の意見が合わない。JR北海道が「新幹線札幌駅は現在の札幌駅に設置できない」と言い出したからだ。
北海道新聞によると、新幹線の札幌駅は現在の札幌駅を拡張しつつ、在来線ホームを転用する方向で3つの案がある。しかし4月27日、JR北海道は在来線の本数削減はできないとして、現札幌駅の3案とも不可能と表明した。これに対し、札幌市は反発している。札幌市は札幌駅への新幹線の乗入れを前提として二次交通や街作りを計画している。そのプランがすべてひっくり返された。
これほどまでにこじれ続けると、一体JR北海道は誰のための鉄道なのか、という根本的な問題になる。JR北海道と北海道の行く末が心配だ。その綻びが日本そのものに広がりそうで、不安になってくる。