この年末年始は横浜近郊の新線の話題が相次いだ。12月31日は相鉄・JR直通線の運転開始時期について。1月1日は横浜市営地下鉄ブルーラインの新百合ヶ丘延伸について。どちらも未確定要素が多い分、予想合戦も楽しい。神奈川県・東京都ほか首都圏の皆さんに、新年会の話題としておすすめしたい。
■相鉄線からJR埼京線へ、12月の相互直通運転開始で調整
相鉄・JR直通線の運転開始時期に関するニュースは共同通信社が配信し、産経新聞電子版や神奈川新聞のニュースサイト「カナロコ」などが報じた。相模鉄道の都心直通計画、いわゆる「神奈川東部方面線」では、相鉄線からJR線・東急線へ直通する連絡線が整備される。昨年末に路線名が発表され、新横浜(仮称)駅を境に「相鉄新横浜線」「東急新横浜線」となることが決まった。
このうち、相鉄線西谷駅から羽沢横浜国大駅を経てJR東海道貨物線に合流する連絡線が先に開業する。この区間の都市計画決定は2010年。当初の開業予定は「2015年4月」だったけれど、2013年に「2018年度開業」へ延期され、2016年に再度延期されて「2019年度下期」となり、現在に至る。
年度の下期という表現は、JRグループが毎年3月に実施するダイヤ改正に合わせる意味を含むと思われた。しかし、今回の報道によれば「2019年12月を軸に調整している」とのこと。来年1月、新しい路線で都内の神社へ初詣に行ける可能性が出てきた。
相鉄線と相互直通運転を行うJR東日本の路線については、これまでにいくつか取り沙汰されてきた。東海道貨物線は鶴見駅付近から分岐し、横浜羽沢駅を経由して東戸塚駅付近に至る。鶴見駅付近から先は品鶴線(横須賀線)経由で品川・東京方面または渋谷・新宿方面へ行ける。「湘南ライナー」をはじめ、大幅遅延が発生したときの上り寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」など、一部の旅客列車も東海道貨物線を走行する。
東海道貨物線から品鶴線(横須賀線)への直通を軸とすれば、相鉄線と横須賀線・総武快速線あるいは湘南新宿ラインが相互直通運転を行う可能性もあった。湘南新宿ラインは大崎~池袋間の山手貨物線区間で埼京線と線路を共用しており、埼京線も相互直通運転の候補路線のひとつだった。
一方、相鉄グループのサイト内に開設された都心直通プロジェクトのページ、整備主体である鉄道・運輸機構のサイト内に開設された事業紹介のページでは、いずれも相鉄・JR直通線開業後のルートとして渋谷・新宿方面が示され、「JR埼京線」と明記されている。相鉄線からJR線への相互直通運転の「本命」は渋谷・新宿方面であり、今回の報道で埼京線への乗入れがほぼ確定したといえる。ちなみに、埼京線の新しい案内看板に描かれた文字の一部をテープで隠した様子がTwitterなどに投稿されており、隠された文字は「相鉄線」ではないかと噂されていた。
埼京線に乗り入れると、現在の直通先である川越線にも乗り入れ、川越駅まで足を伸ばすと考えられる。そうなると、延長約100kmのロングラン列車が走るかもしれない。
なお、埼京線の大崎方面へ向かう列車は現在、ほとんどがりんかい線に直通している。相鉄線との相互直通運転を開始した後、現行のりんかい線直通列車のいくつかを相鉄線方面に振り向けるか、あるいは現行の新宿駅折返し列車を延長し、相鉄線方面へ向かわせるか。後者であれば、新宿駅以南の列車が大増発となるかもしれない。大崎駅まで並行する山手線をはじめ、横須賀線西大井駅・武蔵小杉駅の混雑緩和も期待できそうだ。
■横浜市営地下鉄の新百合ヶ丘延伸、ルートを予想する
神奈川新聞のニュースサイト「カナロコ」が1月1日に配信した記事「あざみ野-新百合、延伸へ 横浜市営地下鉄30年ごろ開業」によると、横浜市と川崎市が横浜市営地下鉄ブルーラインの延伸で大筋合意に至り、1月末に開く共同会見で正式発表する見通しだという。同紙のスクープだ。
この区間は2000年に運輸大臣(当時)に提出された運輸政策審議会答申第18号で、「2015年までに整備すべき路線」と記載されていた。この答申を受けて、横浜市は2014年から調査に着手。経由地の検討、地質調査、空中写真測量などを実施していた。ただし、新百合ヶ丘側の約半分の区間が川崎市内にあり、横浜市側のボーリング調査も横浜市内のみ。延伸検討調査について両市の調整が進められていた。
ブルーラインの西側の終点である湘南台駅は藤沢市にあり、横浜市にとって市境を越えた地下鉄建設は実績がある。あとは川崎市の交渉次第という状況だった。川崎市は南東~北西を結ぶ市営地下鉄を検討していた時期があり、新百合ヶ丘駅から小田急多摩線に乗り入れる構想もあった。しかし計画は2015年度に休止となっている。
地下鉄を断念した川崎市が、市中心部の川崎ではなく、横浜へ向かう路線を歓迎できるかという心配もあった。けれども、川崎市北部を住みやすくするための市民サービスになると“英断”したようだ。なお、この路線については、新百合ヶ丘駅で接続することになる小田急電鉄も歓迎を表明している。同社は新百合ヶ丘駅を郊外地区の拠点として力を入れており、ブルーライン延伸によって東海道新幹線の新横浜駅にアクセスできる。小田急沿線の価値を高められるというわけだ。
報道によると、延伸区間の新駅として横浜市青葉区に2駅、川崎市麻生区に2駅を設けるという。横浜市側のルートはほぼ確定しているようだ。一方、川崎市側は複数のルートを検討中とのこと。正式な発表が待ち遠しい。ルートの予想としては、横浜市の資料で挙げられたバス「新23系統」が参考になりそうだ。地下鉄建設のセオリーは「公道の地下」だからである。
「新23系統」はあざみ野駅と新百合ヶ丘駅を結び、朝のピーク時は1時間あたり片道6本で10分間隔、日中は1時間あたり片道3本で20分間隔の運行となっている。あざみ野駅を出発すると、ショッピングセンター「あざみ野ガーデンズ」、すすきの団地、虹ヶ丘団地、東急バスの拠点である虹ヶ丘営業所を経由して川崎市内に入り、高級住宅地として知られる王禅寺地区を通る。ただし、その先にランドマークとなる大型施設は少ない。
いっそバスルートを東に離れ、田園調布学園大、川崎記念病院がある地区を拠点として整備するアイデアもありそうだ。経由地の誘致合戦が始まれば、担当者を悩ませるかもしれない。新横浜へ直行できるメリットを考えると、王禅寺から新百合ヶ丘まで直行したほうが良さそうな気もする。1月末の記者会見でルートが確定されるか、期待して待ちたい。