ラジオ業界に関わる様々な人を掘り下げる連載「ラジオの現場から」。今回登場するのは、『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)の金子司ディレクターだ。現在は『三四郎のANN』、『ファーストサマーウイカのANN0』、『Creepy NutsのANN0』を担当。この秋から『オールナイトニッポン』のチーフディレクターに就任。また、クリスマス恒例の『第46回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』も取り仕切ることになった。
今回の話題は、単発時代からディレクターを務めるファーストサマーウイカとCreepy Nutsの『ANN0』について。スタッフから見たパーソナリティの素顔と番組作りの裏側を語っていただいた。
■ウイカの『ANN0』「本当にタイミングよくできた」
――金子さんが現在、担当されている番組は?
『ANN』だと、ファーストサマーウイカ、Creepy Nuts、三四郎ですね。『前田裕二のゼロイチ』は一時的に担当から離れています。あとはJFN系列で放送している『WANIMAのラジオ』、田中宗一郎さんと三原勇希さんがやっているPODCASTの『POP LIFE:The Podcast』です。
――ウイカさんは単発から担当されているとか。最初にお会いしたときの印象はどうでした?
あのままです(笑)。事務所やニッポン放送の偉い方もいる中でお会いしたんですけど、あの感じでしゃべっていて、面白い方だなあと。僕はBiSの時から知ってたので、「単発、僕がやりたいです」と自分から言ったのを覚えてます。それで、去年の11月に単発をやったんですけど、本当に面白かったので、「絶対にレギュラーをやったほうがいいです」と各所にたくさん言いました。この時点でもう完成されていたんですよね。
――ウイカさんがまさにメジャーになっていこうとするタイミングでレギュラーが始まった印象があります。
本当にタイミングよくできたんで。単発やったときと比べると状況が全然違いますからね。
■挑戦的な企画の裏側「形にするにはどうしたらいいか?」
――ウイカさんの『ANN0』では挑戦的な企画が多いですよね。『波よ聞いてくれ』とのタイアップもありましたし、この夏には『涼宮ハルヒの憂鬱』の「エンドレスエイト」(アニメ版では8週に渡ってほぼ同じ内容を放送し話題になった)をオマージュして。
ウイカさんもいろんなインタビューで言っていると思うんですけど、スタッフを含めたチームで話はしているものの、“ウイカさんがやりたいことを形にする”というのが基本的な考え方なんです。もちろん全部をウイカさんが考えているわけではないんですが。
ウイカさんからの提案を受けて、「じゃあ、形にするにはどうしたらいいか?」という話を僕と作家がしているという形なんですよ。僕はどっちかというと、“パーソナリティがやりたいことを形にする”のがディレクターだと思っているんで。
――とにかくパーソナリティありきだと。
それだとスタッフが受け身じゃないかと捉えられるかもしれないですけど、そこに僕たちの意志がゼロというわけではないんですけどね。いろいろなディレクターがいると思うんですけど、僕はどっちかと言うと、そういうタイプなので。「自分の演出はこうだ」というタイプももちろんいると思いますけど、『ANN』に関して言えば、パーソナリティありきなので。
その人の魅力が120%出るのが1番いいと思うので、その手助けができればいいなと考えています。もちろん「これは違うんじゃないですか?」ということもあるんですけど、基本的にはいつも「やりたいことを形にするにはどうしようか?」って考えています。
――ウイカさんの『エンドレスエイト』は3週連続で、前代未聞の試みだったと思うんですが、ディレクターとしてああいう作りは大変なんですか?
ディレクターどうこう言うよりも、チームみんなで挑んだ感じですね。ウイカさんからお話をもらって。ご本人が『涼宮ハルヒの憂鬱』が好きというのもありつつ、原作と日付がピッタリだったんですよ。「今年のカレンダーを見たらそうなんですよ」と言われて、「それならやりましょうか!」と。じゃあ、どうやったら、ただの悪ふざけじゃなく、毎週聴いてもらえて、意味のあることができるかなとみんなで考えて。
それで、「フリートークは一緒だけど、粗品さんの要素を入れてみませんか?」と提案したりとか、原作のセリフを入れてみたりとか、曲は全部一緒だけどカバーバージョンにしてみるとか、気付く人は気付くことをやろうかと。
――放送でも触れていたように、賛否両論あったようですが、個人的には深夜ラジオらしい面白い企画だったなと思います。
聴けばまったく同じじゃないというのはわかってもらえると思ったんですが、賛否両論あったので、それは言い訳になってしまうかなと。ただ、大変だったのでもう一生やらないです(笑)。この番組では「変なことやろう」という話がたまにチーム内で出ますね。
――11月にはゲスト出演した劇作家の根本宗子さんの脚本によるラジオドラマも放送しましたね。
今まで会ったことのある人の中でも、ウイカさんは特に毎回全力投球をする方なので。だからこそいろんな案も出てくるし、スタッフもそれに応えられるようにならないといけないと思っています。
――ラジオドラマには金子さんをはじめ、スタッフさんも声優に挑戦していました。
出演するのはマジでイヤでしたけど(苦笑)。でも、「やってください」と言われたら、「やりましょう!」と。成立させることを第一に考えたので。一生自分では聴かないと思います(笑)。