サーキットやガレージを飛び出し、街の施設やイベントへやって来たマシンに会いに行く、シリーズ「街なかの競技車」。今回は、東京・港区のHondaウェルカムプラザ青山で出会えた、鈴鹿8時間耐久レース出場車「ロスマンズ ホンダ RVF750」(1985年)のお話です。

  • 「ロスマンズ ホンダ RVF750」(1985年)@Hondaウェルカムプラザ青山(東京・港区)

今年で41回目を迎えた夏の風物詩“鈴鹿8耐”

“鈴鹿8耐”こと鈴鹿8時間耐久ロードレースは、バイク好きはもちろん、モータースポーツファンに広く親しまれている真夏の祭典。レースは夜にフィニッシュを迎え、花火が盛大に打ちあがります。

  • 「2017-2018FIM世界耐久選手権シリーズ 最終戦 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第41回大会」決勝スタートのようす

その第41回大会の決勝が、7月29日に行われました。パブリックビューイング会場となったHondaウェルカムプラザ青山(東京・港区)には、8耐を盛り上げようと、7月中旬からかつての参戦マシンが展示されていました。

  • 右から「TEAM HRC33 CBR1000RR」(2007年)、「Team HRC RVF/RC45」(1994年)、「ロスマンズ ホンダ RVF750」(1985年)

過去41大会中27勝を挙げているホンダのマシン

今年、「Red Bull Honda with 日本郵便」として「CBR1000RR SP2」で参戦した「チームHRC」は、ホンダ・レーシングのワークスチーム(メーカーが運営するチーム)。ホンダワークスとしての出場は、実に10年ぶりとなります。2015年の第38回大会から連勝中のヤマハワークス「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」の勢いを止めようと、鈴鹿8耐へ戻ってきましたが、惜しくも準優勝に終わりました。ヤマハワークスはV4達成です!

  • 8時間を走りぬいた「Red Bull Honda with 日本郵便 CBR1000RR SP2」

鈴鹿8耐41年の歴史を振り返ると、プライベーター(個人参加チーム)も含めて27勝を挙げ、圧倒的な強さを誇ってきたのがホンダのマシン。空前のバイクブームを背景に、鈴鹿8耐が社会現象となった1980年代には、大会初の3連覇を成し遂げ、その強さをファンに印象付けました。そんな時代を回想させる1台が、展示された「ロスマンズ ホンダ RVF750」(1985年)です。

  • 「ロスマンズ ホンダ RVF750」(1985年)

バイクブームのなかV3を達成したホンダワークス

1978年にはじまった鈴鹿8耐ですが、1984年の第7回大会より、排気量の上限が1000ccから750ccに変更。これに伴い、V型4気筒750ccエンジンを搭載したロードレーサー「RS750R」を投入したホンダワークス勢は、表彰台を独占する快挙を果たしました。翌1985年からは、「RS750R」を進化させた「RVF750」で快進撃を続けます。

  • 「RVF750」のため新開発されたアルミツインチューブフレームを採用

ジェラルド・コードレイ選手/パトリック・イゴア選手組の「ロスマンズ ホンダ RVF750」も、ワークス勢の1台として1985年の鈴鹿8耐にエントリー。4番グリッドからのスタートで入賞が期待されたものの、残念ながら完走はなりませんでした。ただし、鈴鹿8耐が組み込まれていた、当時の世界耐久選手権シリーズの年間チャンピオンを獲得! 青を基調としたロスマンズ(メインスポンサーのたばこ/ビールメーカー)カラーが鮮烈です。

  • 1984年にもシリーズチャンピオンに輝いていたコードレイ選手/イゴア選手組のゼッケンは1番

ちなみに、1985年の鈴鹿8耐優勝車は、同じホンダワークス勢の「RVF750」(ワイン・ガードナー選手/徳野政樹選手組)。ガードナー選手は翌1986年も「RVF750」で優勝し、鈴鹿8耐で通算4勝を挙げました。また、同じ時期にロードレース世界選手権(WGP)にて、ロスマンズカラーのホンダ「NSR500」を駆り、大活躍したのもガードナー選手です。

  • スイングアームは両持ち。ガードナー選手/徳野選手組のマシンも同様だった

90年代には計7勝、2006年まで10連勝!

さて、80年代以降の鈴鹿8耐におけるホンダ車の活躍にも触れておきましょう。同時に展示されていた「TEAM HRC RVF/RC45」は、1994年に開催された第17回大会の優勝車。「RVF/RC45」は、この年のレギュレーション変更に合わせ、新たに送り出されたV型4気筒750ccエンジン搭載車で、翌1995年にも勝利しました。また、1997~1999年にも3連勝しています。

  • 「Team HRC RVF/RC45」(1994年)

もう1台の展示車、「TEAM HRC33 CBR1000RR」は、直列(並列)4気筒1000ccエンジン搭載の市販車をベースとしたマシン。前年の2006年までホンダ車が10連勝していましたが、第30回記念大会のこの年は、「ヨシムラ・スズキwith JOMO GSX-R1000」に連覇を阻まれ、2位に終わりました。

  • 「TEAM HRC33 CBR1000RR」(2007年)

そして、天候が安定せず、転倒も相次いで、セーフティーカーが何度も⼊る波乱のレースとなった、今年の「2017-2018FIM世界耐久選手権シリーズ 最終戦 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第41回大会」。ホンダワークスは悔しい結果となりましたが、5位でチェッカーを受けたプライベートチーム「F.C.C. TSR Honda France」の「CBR1000RR SP2」が、日本チームとして初のEWC(FIM世界耐久選手権シリーズ)年間チャンピオンに輝き、ホンダ伝説に新たな1ページを書き加えました。

【ロスマンズ ホンダ RVF750(1985年)】

エンジン 水冷 4ストローク 90度V型4気筒 DOHC 4バルブ ギヤ駆動 748cc
最高出力 130ps以上/12,000rpm
乾燥重量 160kg

【Hondaウェルカムプラザ青山について】
東京・青山にある本田技研工業本社の1階は、ショールームとして一般に公開されています。開館以来、毎年、鈴鹿8耐のパブリックビューイングが企画され、今年で32回目。ホンダが参戦するビッグレースの開催前後には、関連する競技車両が展示されることも多いです。

  • Hondaウェルカムプラザ青山は、東京メトロ 青山一丁目駅5番出口を出てすぐのところにあります