ビタミンC。現代人はビタミン不足とよく言われるのはご存じの通り。特にビタミンCはその中でも顕著で、様々な粘膜の再生や糖の代謝に関わっており、カルシウムの吸収代謝には欠かせないと、人間が身体の中で作れない補酵素なのに、依存度の極めて高い栄養素です。
サプリはあまり効率的ではない!?
「それくらい知ってるよ!」という話なのですが、ではどうすればいいのか? 答えは簡単、野菜や果物を多く食べればいいわけです。とはいえ、毎日ブロッコリーやピーマン、ユズにキュウイと豊富に野菜や果物を食べることができればいいのですが、現代生活においてそれはそれで難しいものがあります。
普通はここで、「だからサプリメント」という話につながるのですが、サプリもまた難ありです。空腹時に単品で飲んでも吸収が悪く、つい飲み忘れることもあります。また、日本のサプリの大半は、十分な効果を求めると金額的にも高くついてしまうので、継続できる人は少ないわけです。
ここでちょっと雑学をひとつ。ビタミンCの欠乏で発症する病気に、「壊血(かいけつ)病」というものがあります。壊血病は長期的な虚弱時に古傷が開いたりなどして、歯茎からの出血が収まらずゆっくりと死に至ることもある病気です。16世紀から18世紀の大航海時代にこの病気が指摘され、船乗りたちを怯(おび)えさせたと伝えられています。そのため、ビタミンCを補給する薬「アスコルビックアシッド(アスコルビン酸)」は、壊血病の英語「scurvy(スコルヴィ)」から転じて命名されています。
合成も天然も基本的には同じ
話を戻します。ビタミンCにも合成と天然が存在しますが、基本的に同一の物質として考えられます。一部では、石油から作られるビタミンCがあるという話もありますが、これは認識として誤りと言えます。そもそも合成と言っても、その生産過程は発酵という生物の力を得ているため、元を辿(たど)れば天然由来と何ら変わらないわけです。
その合成法とはまず、トウモロコシなどから得られたデンプンを分解し、液糖(ガムシロップ)を作ります。それを更にソルビトールというものにします。ソルビトールもまた、もともと一部の食品中に存在する成分で、これを発酵という細菌の力を使い、アスコルビン酸が出来上がります。当然、石油産業的な薬品を分離や精製に使いますが、それが悪影響の出るレベルで残留することはありません。
台所にピッタリなアスコルビン酸
さて、ビタミンCを補助する薬・アスコルビン酸はサプリ前の原末(原料)であり、一般の人も薬局などで購入できます。薬局では300gあたり3,000円程度ですが、ネット通販などでは1kgあたり3,000円程度と、更に安価に買うこともできます。ただし、業務用のものなので梱包(こんぽう)が極めて簡易です。開封後は遮光の小瓶に入れ替え乾燥剤を入れるなどの手間をかけないと、劣化してしまうので注意が必要です。
ビタミンC(アスコルビン酸)は非常に弱い酸味を持つため、様々な料理やふだんの生活に取り入れることで、その摂取量を底上げすることができます。例えば、酢とオイル、そして小さじ1杯のアスコルビン酸だけで、味わい豊かなドレッシングを作ることもできます。
また、オレンジジュースにスプーン1杯分を加えると、非常に吸収率の高い状態でビタミンCを摂取することができます。味もほとんど変わらないどころか風味が増します。ビタミンCを補助するアスコルビン酸は、薬棚よりも台所に置くべき存在というわけです。
筆者プロフィール : くられ
『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」やツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。