ファストフード店に行くと、ついつい頼んでしまいがちなポテトだが……

最近、インターネット上の「ファストフードのポテトはカビない」などといったトピック内で、「腐らせないための添加物は恐ろしい」というような形で添加物が紹介されているという話を聞きました。

ただ、そもそも添加物で「腐らない食品」を作れるのでしょうか。その「都市伝説」の正体を2回に分けて探ってみようと思います。

「カビないポテト」の揚げ油の成分とは

まず、アメリカで情報開示されている、その「カビないポテト」に用いられているという揚げ油の成分についてご紹介しましょう。

・植物油(なたね油、コーン油、大豆油)

・水素添加油

・tert-ブチルヒドロキノン

・クエン酸

・ポリジメチルシロキサン

などがそうです。

化学になじみのない人が見ると、「ポテトフライ一つとっても、横文字の化学物質がこんなにも入っているのか……」と思う人が多いことでしょう。ただ、そこで思考停止せず、「使われている理由」に迫ってみます。

まず、ベースになっているのは「植物油」と「水素添加油」です。こちらは、遺伝子組み換えされたものが使われているとかいろいろな話がありますが、遺伝子組み換えした植物から得られた油に毒性があって、人間に悪影響を及ぼすということはまずあり得ません。

アメリカでは、製造しているメーカーだけでなく、日本の厚生労働省に相当する行政機関「FDA(アメリカ食品医薬品局)」やWHO(世界保健機関)などの国際機関でも、食品の毒性試験を評価しています。

一部のアメリカ企業は非常に強い「政治力」を持つため、「わずかな毒性があっても、その事実が伏せられているのではないか」といった陰謀論がインターネット上などでよく見られます。ですが、アメリカ国内だけならともかく、販売している世界全ての国に圧力をかけるなんて、現実問題として不可能ですよね?

遺伝子組み換え植物が環境に及ぼす影響はなんとも言えません。ただ、少なくともそこから生産されるデンプンや油といったものに毒が含まれているというのは、少なくとも消費者としては気にしなくてよいでしょう。水素添加油は、以前もご紹介したマーガリンやショートニングといったものです。

油の劣化を防ぐ「tert-ブチルヒドロキノン」

次に「tert-ブチルヒドロキノン」についてですが、これはアメリカではポピュラーな油脂の酸化防止剤です。ファストフードの揚げ油は、1週間以上もフライヤーの中で食品を揚げ続けるものが大半なので、酸化して劣化するのを防ぐために酸化防止剤が含まれています。

ただし「tert-ブチルヒドロキノン」に関しては、日本では認可されていないので使われていないでしょう。その代わりとして「BHA」や「トコフェロール」などの似たような酸化防止剤が使われていると思われます。

いずれにしても、これらの添加物自体には毒性なんてものは無く、むしろ油の酸化で生じた過酸化油脂や有害な分解物のほうに発がん性があるものが多いのです。そうした有害な物質が発生しないよう、酸化防止剤は添加されています。むしろ、企業努力の部分として見るべきところでしょう。かんきつ類に含まれる有機化合物の「クエン酸」は、「すっぱい成分」としてご存じの方も多いでしょう。これに毒性があるというのならば、レモンなどもすべて毒ということになりますよね?

最後は「ポリジメチルシロキサン」についてです。これは、シリコーンオイルの分子を加工して油が分離しないようにつなぐため、また、食品同士がひっつきにくくなるために使われています。豆腐のはく離剤や、腸内のガス生成を減らすための医薬品としても使われているので、添加されている量から考えても毒性は無視できます。

さて、以上のように成分を見る限りは問題がなさそうなのですが、カビない理由や栄養面での問題点が残ります。

では、ポテトをカビさせない物の正体は何でしょうか? 次回はその謎に迫ります。

写真と本文は関係ありません

筆者プロフィール: くられ

シリーズ累計15万部以上の『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス)の著者で、近著に発売3カ月で売り上げ6万部を突破した『薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬 よく効く! 得する! 市販薬早わかりガイド』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。本連載に加え、食品関連の話題をギュっと詰め込んだ新作「本当にコワい? 食べものの正体 」(すばる舎)を10月15日に上梓。無料のメールマガジン「アリエナイ科学メルマ」も配信しており、好評を博している。