フカヒレ。中華料理の代名詞ともいえる食材ですが、「高級」といったイメージがある人が大半かと思います。そんな中華料理の花形が今回の主役です。よくインスタントで「フカヒレスープ」というのを見かけますが、あの正体は何なんでしょうか。
フカヒレというのはその名の通りフカ、サメのヒレで、尾びれや腹びれ、背びれが使われます。皮をむいて乾燥させたもので、味の特徴は少ないものの、非常に口当たりのよい独特の食感を持ち、それが中華料理と相性の良いことから、高級中華=フカヒレといったイメージがある人も多いでしょう。
日本は丸ごとサメを加工
日本ではフカヒレは、マグロ漁やカツオ漁などで混ざって釣れたサメ(アオザメやヨシキリザメ)を材料として作られます。残りの身はハンペンやカマボコといった練り物に使われるそうです。一方海外の一部の国では、船の上で捕まえたサメのヒレだけを切断して海に捨てる漁船もあり、そのイメージが先行し、フカヒレが動物愛護や環境保護の観点からネガティブに取られる原因になっています。
とはいえ、海洋生態系のトップに君臨するサメのヒレですから、高級食材であるのは間違いありません。価格は安いアオザメのものでも、仕入れ値で1枚千円程度はするため、提供されるのはひとり当たり1万円は下らない高級中華料理店などに限られます。
フェイクフカヒレの正体
しかし、安価に提供したいという思惑から、フカヒレのフェイク(ニセモノ)があるというのも、中華料理店などでよく見かけるのでご承知の人が多いかと思います。廉価な中華料理店やインスタントのフカヒレ(風)スープなどに入っているアレです。
昔はフカヒレの形に似せた春雨を使っていたのですが、最近はゼラチンやアルギニンを使って人工イクラに近い原理を用いて、極めて良く似せたものまで登場しています。ゼラチンフカヒレは成形も簡単なため、何と姿煮用のものまで作れてしまいます。
さすがにバラのフェイクフカヒレは、この値段ならニセモノだろうな……と思う人もいるかもしれませんが、姿煮タイプは食通の人でもだまされてしまう人がいるようです。逆に言うと、もはやそこまで似せることができるようになったら、本物の保護のためもっと小売りされて、広く認知されるべきだと思うのですが、残念ながらまだ知名度は低いようです。
さらに、その知名度の低さを逆手にとって、「フカヒレ姿煮」と記したニセモノを出している店も少なからずあります。消費者が疑心暗鬼になるのも当然ですが、本物はそれなりの値段になることを頭に入れておきましょう。
筆者プロフィール : くられ
『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」やツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。