前回、鶏肉の利用増加から、その残りの肉の使い道としてひとつの解決策がチキンナゲット、という話をしました。今回は具体的にどのようにして作られているのかを紹介します。
丸ごと粉砕は都市伝説
手羽元や手羽先、ササミなどもありますが、それ以外を取り除いても、首周りに結構な肉が、残りの骨にもかなりの肉が張り付いた状態になります。「トリガラ」として売られているものを見ると、思った以上に肉が残っていることが分かります。
こうした肉を、材料の一部として食べやすく加工したものが、チキンナゲットとなるわけです。一部では、鶏を丸ごと粉砕し消毒したものがピンクスライムとして出ているという話がありますが、技術的には可能でも、せっかくの丸鳥をコストの低いものへ加工する理由はないため、これは都市伝説と言えるでしょう。
チキンナゲットの正体は多種多様
さて、このチキンの端材とも言うべき肉を利用して、どのようにチキンナゲットが作られるのか。ここから先は各社千差万別となります。つまり、鶏肉味の骨のない唐揚げ風であれば、全部チキンナゲットなわけです。
例えば製法のひとつとして、先ほどの端切れ肉をチキンエキスに加工し、それを大豆タンパクと混合。つまり、大豆タンパクをベジタリアン向けの代用肉と同じような技術で、繊維化するのです。これをプレス成形して衣をつければ、チキンナゲットにすることも可能です。原材料欄を見て、早々に「大豆タンパク」や「大豆」といった表記が見つかれば、こうした工程を経ていることが想像できます。
また、別の製法では、チキンの端材をそぼろのように熱処理加工し、それを結着剤とともにプレスして成形することで、鶏肉のような繊維を生み出しています。チキンナゲットを真っ二つにしてみて、鶏肉とは思えないほど細かい繊維が走っているなら、こうして作られている可能性があります。
他にも、こうした肉を鶏ガラごとペースト化して、カニカマボコのように繊維化再成形することで作られるものもあります。最近は、ササミなどの脂身の少ない身をほぐしたものに、油の多い皮をすりつぶしたものを各種薬品でつなぎ止めたタイプのチキンナゲットも多いようです。
結果的に中身がどうであれ、こういったものが全てチキンナゲットと名乗れるのは、チキンナゲットというものにJAS的な取り決めが存在しないからです。そのため、外見とは異なる千差万別の中身の商品が、数多くあるという状態になっているのです。
結局チキンナゲットは、急場しのぎのおかずやお弁当の彩りを添える程度であれば問題ありません。ただ、毎日食べるとグラム当たりのカロリーは鶏の唐揚げを遙かに超えるものであり、揚げ物の中でも一際油分が多いものなので、健康管理の上では考えて付き合うべき食品と言えるでしょう。
筆者プロフィール : くられ
『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」やツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。