店頭に並ぶ食品のパッケージには、購買意欲をそそる魅力的な言葉が書かれていますが、地味で面白みのないあの表示ラベルこそ、食品の正体が書いてあるということはあまり知られていません。裏に書かれた商品ラベルの向こうにあるものを、ちょっとのぞいてみましょう。
暑い日に食べるアイスクリーム、おいしいですよね。でもそのアイス、本当に“アイスクリーム”ですか? アイスクリームは見た目は似ていても、製法によってカニカマボコとカニくらいの違いがあるものです。
牛乳じゃないミルクの正体は……
ラベルには国が定めたJAS規格に基づく表記がされており、そこを見れば正体が分かる食品が多くあります。アイスクリームもそのひとつで、アイスクリーム・アイスミルク・ラクトアイス・氷菓という4種類が、一見“アイスクリーム”として売られているわけです。
気が付けば、乳脂肪ではないもので作られた“アイスクリームモドキ”が最も身近なアイスになっているのです。では、乳脂肪以外の成分は何でできているのでしょうか?
牛乳から作った乳脂肪ミルク、当然本物のアイスクリームは乳脂肪を材料に作られています。ですが、ラクトアイスや氷菓などは、牛乳由来の成分ではないミルク成分を用いています。牛乳じゃないミルク、そう、コーヒーフレッシュでおなじみの「植物性ミルク」です。
卵は未使用、凍らせてかき混ぜもしない
植物性ミルクってのはよくよく考えれば不思議なモノで、ミルクの出てくる植物なんて存在しませんね。詳しくは追って今後取り上げますが、原材料はパーム油と呼ばれるヤシ由来の油で、植物油の中でも30度以下では固まってしまう硬い油です。それを水と混ざる成分に加工することで、植物性ミルクを生成します。
この植物性ミルクが大半で乳脂肪分はたったの3~10%以下のモノが、ラクトアイスとして売られているわけです。製法もアイスクリームとは全くの別物。卵も使わなければ、凍らせてかき混ぜるという行程すら必要有りません。そんな馬鹿な……と信じられないあなた、是非自分で試してみましょう。
方法は簡単。スーパーでパック入りの植物性ミルクを開け、そこにガムシロップ(なければ砂糖)を20~30g、少し甘くなる程度に加え、バニラエッセンスを一振りして蓋を閉じ、よく振ってまぜます。これを冷凍すれば出来上がり。実際のラクトアイスは更にレシチンという高性能なつなぎを使えば再現性がより高くなりますが、それでも味やスプーンですくった感じは、100円アイスそっくりなものが出来上がります。
1個で1日に必要な脂質の6割を摂取
ちなみに脂質は約3割。カップ入りのラクトアイスを1個食べると、1日に必要な脂質の6割に匹敵してしまいます。食べ過ぎると脂質過剰になってニキビなどの肌荒れの原因に……。
特に年齢を重ねると油の代謝は下手になっていくので、歳を取ってからアイスを食べると吹き出物が……という人は、たまのぜいたくに本物の“アイスクリーム”をどうぞ。味が濃く少量で満足感があるので、結果的に摂取脂質は減るのです。
筆者プロフィール : くられ
『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」やツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。