「寝付きが悪く、なかなか眠れない」
「夜中に目が覚めてしまう」
「よく寝たはずなのに、翌朝スッキリしない」
「ちゃんと寝ても、日中眠たくなる」
あなたはこのような悩みをお持ちではないでしょうか。働き盛りの多くの人が、うまく眠れないことで慢性的な疲れを溜め込んでおり、本来の能力やパフォーマンスを十分に発揮できていない現状があります。
そこで、睡眠研究家であり『最強の睡眠』(SBクリエイティブ)の著者である西川ユカコさんが、「最高の体調」を取り戻すための方法をお伝えします。
最高の体調を保つには「朝起きたら太陽光を浴びる」
体のさまざまな生体リズムを調節する「体内時計」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。もちろん、あなたにも立派な体内時計が備わっています。それを、どのくらい大切にしていますか?
体内時計を整えることは、睡眠の質を上げるための一丁目一番地。にもかかわらず、多くの人が、自分の体内時計を粗末に扱っています。とくに睡眠に悩んでいる人はもれなく、この体内時計を狂わせています。
もともと体内時計は狂いやすいもの。実際に多くの人の体内時計は1日24時間ぴったりではなく、「24時間と少し」に設定されています。それを、朝起きて太陽の光を浴びることで、私たちは自分の体内時計を地球の時間に合わせるようになっています。これは、太古の昔から変わらない仕組みです。
しかしながら、現代人は朝の日差しをなおざりにしています。室内の照明が明るいので、それだけで何となく日差しを浴びたような気になってしまうのでしょう。
ちなみに室内照明は明るくても500ルクス(明るさの単位)、体内時計の調整に必要な朝の光は2,500ルクス程度と言われています。太陽光であれば曇りの日や雨の日でも1万ルクス程度の明るさはあります。
体内時計はメインの親時計の他に、体中に子時計を持っています。親時計は、脳の「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という両耳をつないだ中間あたりにあります。この親時計は、朝起きて太陽の光を網膜で感じることで整います。朝起きたらカーテンを開けて、窓も開け、窓ガラスを通さずに太陽の日差しを直接網膜に取り込みましょう(危険なので、太陽の直視は避けてください)。
一方、子時計は、胃腸や肝臓、肺など全ての内臓器官、血管、筋肉、肌、髪の毛など体のあらゆる細胞の中にあります。それらの莫大な数の子時計が、親時計に素直に従って規則正しく動いてくれれば心身ともに最高の状態を保てますが、なかなかそうはいきません。
子時計まできちんと合わせていくには、朝の日差しだけでは不十分。朝起きて日差しを浴びてから1時間以内に朝食を取る必要があります。
よく、オーケストラに例えられるのですが、それぞれの子時計は、演奏前のチューニングのように、自分のペースで音を立てているような状態です。そこに、朝食を取ることで親時計の演奏にピタッとそろっていきます。指揮者はもちろんあなた。自分のオーケストラがきれいにそろって素晴らしい曲を奏でるのか、それとも相変わらず好き勝手な音だけを鳴らしているのか。全ては、あなた次第なのです。
睡眠こそ「最高のストレス・マネジメント」
「朝起きられない」という理由から、太陽光を浴びる機会を自ら減らしている人もいるでしょう。たくさんの情報が溢れる今、私たちはストレスとは無縁ではいられません。とくに今は在宅で仕事をすることも多く、外で発散しづらくなっています。
これまでとは異なる環境にストレスが溜まり、睡眠の質が落ちて朝起きられない、という人もいるのではないでしょうか。
もともと人間は、楽しいことよりも、嫌なことを記憶する傾向にあります。つまりは、何らかの形でリセットしなければ、脳はストレスで疲れ果てて正常に機能しなくなることは明らかです。そのリセットを、多くの人が、お酒や甘い物、ギャンブル、ネットショッピングなどに頼ろうとします。かつての私もそうでした。
しかし、そうした活動で嫌な記憶を一時的にやり過ごすことはできても、薄れさせることはできません。睡眠には不必要な記憶やストレスを薄れさせたり、消したりする力があります。
ですから、嫌な思いをした日は、いつもより長めに寝てください。以前はお酒やお菓子などへの依存でストレス解消を図っていた私も、数多くのトライ&エラーを経て、睡眠こそ「最高のストレス・マネジメント」だという結論に達しましたので、ふだんから実によく眠っています。
次回は、働きながら睡眠負債を返済する「三つの解決策」についてご紹介します。