最終回となる今回は、プレゼンテーション資料について解説します。
実はプレゼンテーションの仕上がりを左右するのは、プレゼンテーション資料です。資料がダメだと、どんなに技術が高くてもいいプレゼンテーションになりません。
プレゼンテーション資料のレベルを確認
あなたはどんなプレゼンテーション資料を作っていますか? 現状認識のため、以下の質問に当てはまる項目にチェックを入れてみてください。
□資料は他のメンバーが作る
□資料は本番当日も手入れをしている
□図やグラフを多用する
□1枚のチャートに文字が5行以上ある
□20ポイント以下の文字サイズを使っている
□チャートに細かい説明を書いている
□時系列で説明する
□自己紹介から始める
□1枚目にタイトルを書かない
3つ以上チェックがつくようであれば、説得力のないプレゼンテーション資料になっている可能性が高いと考えられます。
プレゼンテーションは冒頭が重要
プレゼンテーションには大事なお約束があります。聞き手は、冒頭15秒で「今日は集中して聞くか? 気を抜いて聞かないか?」を無意識に決めています。
第一声を聞けば、今日はどんな話になるかがすぐに分かるからです。私はそれを「冒頭15秒のゴールデンタイム」と呼んでいます。
だから、資料作りでは1枚目のチャートが命です。
これはよくあるダメなプレゼンテーションの資料1枚目です。
このような1枚目を作る方々にお話を聞いてみると、こうおっしゃいます。
「自己紹介をするのが礼儀だから」
現実には、聞き手はプレゼンするご本人にはほとんど興味ありません。
興味があるのはテーマ。そのテーマを聞くためにわざわざ来ています。「今日のお話を聞くと、どんなお得なことがあるの?」と楽しみにしています。
ですので、冒頭で自己紹介が始まると、聞き手は「早く始めてほしい」と思っています。でも自分が話す立場になると、「まず自己紹介しなければ」と考えるのです。
「聞き手が自己紹介に興味を持ってくれるのは、有名人か芸能人くらいだ」と覚えておきましょう。
講師の自己紹介は、簡単に司会者にしてもらうか、配付資料に書いておけば十分です。
プレゼンテーション資料は1枚目が重要
こちらは、良いプレゼンテーションの資料1枚目です。
この資料のテーマは、「クラウドで情報を管理しましょう」という提案を行うためのプレゼンテーションです。
1枚目で大切なのは「ツカミ」です。最初にこの一言を見たお客さんは、「え? まだパソコン使っているけどダメなの?」と興味を持って、その後も聞いてみたいという姿勢が瞬時にできあがります。
この後に、「いまやスマホやタブレットで、まったくおなじ事が簡単にできます。効率もいいので、仕事も速く進むし、コストも下がりますよ」という本題の提案につなげていきます。
本題に興味を持ってもらうには、冒頭15秒のゴールデンタイムでどれだけ聴衆をつかむかがカギなのです。
ここで自己紹介に数分間も使い、クラウドの現状や機能説明をしてしまうと、「あれ? この人、なに言いたいの?」と思われてしまうのです。
あくまで単刀直入に「今日はこれが言いたい」ということを伝えるのが1枚目なのです。
また一枚一枚のチャートは、初めて見る人でも一目で分かるように作ってください。
あくまで感覚的な数字ですが、情報量を3割減らせば、メッセージは2倍力強くなります。情報が多くてじっくり読み込まないと分からない資料は、説明資料としてよいかもしれませんが、プレゼンテーションで使うべきではありません。
理解できないチャートが延々と続けば、聴衆は集中力が落ちて「このプレゼンテーションは聞かなくてもいい」と思われてしまいます。
プレゼンテーション資料作成時の注意点
ダメな資料は、「文字が小さい」「文章が何行も書かれている」「細かいグラフや図表が多い」などです。図表やグラフは、どうしても必要な「ここぞ」というポイントのみにしましょう。
一瞬で聴衆が理解できる作り方をしないと聞いてもらえません。文字で書かない部分は、言葉で補えばよいのです。
詳細な情報を持ち帰ってもらうことが必要な場合は、別途、詳細資料として配布しましょう。
プレゼンテーションの学びを振り返る
全7回の連載では、「5分で学べるプレゼンテーション」の方法についてお伝えしてきました。
前の6回分のふりかえりをお伝えしますので、ぜひ思い出してプレゼンテーションで活かしてください。
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執筆者プロフィール : 永井千佳(ながいちか)
広報・IR・リスクの専門メディア月刊「広報会議」では、2014年から経営トップ「プレゼン力診断」を毎号連載中。さらに、NHK総合、週刊誌「AERA」、文化放送、J-WAVE、TOKYO FM、雑誌「プレジデント」、日経産業新聞など、さまざまなメディアでも活動が取り上げられている。主な著書に、『DVD付 リーダーは低い声で話せ』(KADOKAWA 中経出版)がある。