前回は、プレゼンテーションでライバルに勝つためのプレゼンテーション構成方法についてお伝えしました。

  • プレゼンテーション力を高めるには?

さて、「プレゼンでは毎回四苦八苦しています。プレゼン力が足りないせいでしょうか?」というお悩みをよく聞きます。そこで今回は、プレゼンテーション力について説明します。

プレゼンテーション力は自分らしさ

プレゼンテーション力を発揮している人には、共通点があります。話し手の個性を発揮したプレゼンテーションをしているのです。

人は自分らしくしているとき、力を発揮します。自然体の自分でいると、気持ちが楽になりますよね。身体のムダな力みも抜けます。プレゼンテーションも同じなのです。

プレゼンテーションを普段の自分で行えたら、ぐっと楽になり、出来不出来の差も少なくなります。そして自分らしい個性を発揮すれば、それが差別化されたプレゼンテーションとなり、聴衆への訴求力が強まり、聴き手が行動するようになるのです。

自分自身のスタイルは? プレゼン力は、あなたの個性を発揮すれば高まる

でも「自分らしいプレゼンなんてどうすればいいの?」と思いますよね。自分らしいプレゼンをするやり方があります。その方法が「トッププレゼン・マトリックス」です。

  • トッププレゼン・マトリックス

この「トッププレゼン・マトリックス」は、私が数多くのトップ会見を取材してきて、「プレゼンテーションする人の個性に合わせると説得力が高まる」という気づきを得たのがきっかけで、まとめたものです。

縦軸に「感情重視―ロジック重視」、横軸に「自然体重視―個性重視」を取って、トップを「パッション型」「信念型」「ロジカル型」「優等生型」の4タイプに分類したものです。どのタイプがよい・悪いということはありません。それぞれ強みと課題があります。

これで考えれば訴求力あるプレゼンテーションが可能になります。「トップ」という名前が付いていますが、あらゆる人が使うことができます。

自分がどのタイプかをこのマトリックスで分類すると、普段のプレゼンテーションとは全く違うものになることもよくあります。これはプレゼンテーションで自分が本来持つ強みを活かしていなかったということです。

「無理にスタイルを変えなくいい」とわかれば、プレゼンテーションで自然にメッセージを語れるようになり、説得力も高まります。

世の中では「理想型はスティーブ・ジョブズのプレゼンテーション」と認識されており、「ジョブズにみたいにプレゼンテーションをしたい」という方も多いのですが、このトッププレゼン・マトリックスで考えると、実はそうでないことも多いのです。

4つのプレゼンスタイル

各タイプ別の傾向と対策は次の通りです。

パッション型

パッションが強いため注目されやすく、プレゼンテーション後の反響が盛況になることも多いのが特徴です。パッションは「熱伝導」するからです。プレゼンの熱量が高ければ高いほど強く、広く伝わります。

パッション型は、冒頭から聴き手との距離を縮め、自分のペースに持ち込むと力を発揮しやすくなります。現場目線を前面に押し出すのも有効です。注目を集めて敷居を下げるために仮装をする方もいますが、パッション型であれば不自然にならず、より強みが活きてきます。

反面、加熱しすぎて話が長くなりがちなこともあります。よいプレゼンテーションでも時間超過は確実に満足度が下がります。資料は短めに作っておくことも必要です。

余談ですが、パッション型営業は売り上げに熱心で数字を厳しく追及する面があります。周囲にブラック&ハードなイメージを持たれないよう、言動に注意しましょう。

信念型

自分の得意分野に引き込むと、抜群の説得力を発揮するタイプです。自分が心の底から何を本当に話したいかを見極め、メッセージに自らの言葉を入れることが重要です。資料を用意して読みあげすると、この強みは発揮できません。

一方で信念型は、聴き手が理解しないまま一方的に信念を語りがちです。さらに自分のプレゼンがわかりにくいことを認識していないこともよくあります。これはプレゼンを録画し自分で確認することで、大きく改善します。また服装が無頓着な傾向もあります。

だからといって高級スーツや最先端ファッションをまとう必要はありません。自社製品を身につけたり、コーポレートカラーの小物を着用したりすると、良い印象を与えることができます。

信念型の別格、カリスマ的存在の「超越ゾーン」

理念やビジョンを説き、相手を味方にすることに長けています。大抵のことは、「ああ、あの〇〇さんだからね」で許されてしまいます。社内・社外問わず、ファンが多いのも特徴です。

自由に話すことが最重要ですが、収拾がつかないまま終わることも多いので注意が必要です。予め重要ポイントを最大3つに絞り、メモをしておさえておくと話しやすくなります。

自分の言葉で話すので、説得力が高い反面、調子に乗ってくると、不用意なことを話す場合もあります。心配な場合は、メンバーに同席してもらい、サポートしてもらう用意が必要でしょう。

ロジカル型

冷静に分析した事業戦略を語り、数字の受け答えも完璧。一方で共感が苦手で、感情を交えずに話すために冷たい印象を与えがちです。笑顔で話すようにするだけでも好感度が上がります。

またビジネスへの思い入れが強いあまり、専門用語を多用しがちで、意図が伝わらない傾向も強いのも特徴です。「中学生でもわかること」を目安にわかりやすく話すことがポイント。これで伝わらなければ、本質的なことを話していない証しであると思ってください

優等生型

大きな失敗や失言が少ないのが特徴です。人前で堂々と振る舞えない傾向があり、社内各部門に配慮した総花的メッセージになりがちで訴求力も弱く、聴き手が物足りなさを感じることも多くあります。

対策は、冒頭で単刀直入に本題に入り、シンプルで骨太なメッセージを一本通して用意することです。また連載第1回のY社社長のように、「存在感が薄い」ことを逆に強みとして活かし、チームワークで乗り切ることも有効です。

グループのメンバーに役割を持たせてプレゼンすることで、仲間のやる気を引き出すことも効果的です。

自分がどこに当てはまるか、ぜひイメージしてみてください。

執筆者プロフィール : 永井千佳(ながいちか)

広報・IR・リスクの専門メディア月刊「広報会議」では、2014年から経営トップ「プレゼン力診断」を毎号連載中。さらに、NHK総合、週刊誌「AERA」、文化放送、J-WAVE、TOKYO FM、雑誌「プレジデント」、日経産業新聞など、さまざまなメディアでも活動が取り上げられている。主な著書に、『DVD付 リーダーは低い声で話せ』(KADOKAWA 中経出版)がある。