小学校で必修になっただけでなく、習い事としても注目度の高いプログラミング。小学校での実施は体験的なものになる可能性が高いので、お子さんが興味を持ったら、ぜひ思い切りプログラミングに触れられる別の環境を用意してあげてください。無料の場からプログラミングスクールまでさまざまな方法と、その選び方をご紹介します。
無料の方法もいろいろ!
まずは個人でやる方法から。タブレットやパソコンさえあれば利用できる子ども向けプログラミングツールがたくさんあり、例えばこの連載の『プログラミングツール紹介(2)クリエイティブ型のアプリで好きなものを作ろう!』で紹介したツールはどれも無料です。とくにScratch(スクラッチ)は利用者が多く、ウェブや書籍で作例などの情報をたくさん見つけられるので、個人でいくらでもチャレンジできます。
……とはいえ、個人で進めるのはちょっとハードルが高いと感じる方も多いはず。やっぱり誰かに教えてもらったり、仲間がいたりするとモチベーションも安心感も上がります。そこで注目したいのが、地域に根ざしたプログラミングのコミュニティです。
例えば「CoderDojo(コーダー道場)」という子どものためのプログラミングクラブは、非営利で運営されていて無料で参加できます。全国にクラブ(道場)があるので、みなさんが住んでいるエリアでも見つけられるかもしれません。アイルランド生まれのコミュニティで、共通の基本理念のもとに各クラブは自律的に運営されています。きまったカリキュラムを教えるのではなく、子どもの自主性が尊重され、適宜ファシリテーターがサポートするスタイルです。
他にも例えばコンピュータークラブハウスなど、地域によっては無料や安価でプログラミングやデジタルものづくりができる場が運営されていケースがありますので、ぜひ探してみてください。子ども向けのプログラミングのコミュニティは、強制力がなくゆるいつながりを大切にしているところが多いので、そんな雰囲気を気に入るお子さんもいます。
また、児童館や学校などを会場に単発で実施されるワークショップや、企業が実施する体験イベントなどに参加するのもおすすめです。お子さんの反応を気軽に確かめることができます。
スクール選びのポイントは?
定期的にきちっと基礎から学びたい! という場合は、プログラミング教室に通うのが良いでしょう。ただしプログラミング教室はいろいろなタイプがあり、非常に幅が広いので、お子さんに合う教室を見つけるポイントを3つご紹介します。
(1)カリキュラムと基本方針
保護者としてお子さんをプログラミング教室に通わせたいと思うのはどんな理由でしょうか? 「好きなことで力を伸ばして自信をつけてほしい」、「プログラムで動くものの仕組みに興味を持って探究心をつけてほしい」、「アプリ開発ができるくらいまでの技術力をつけてほしい」……思いはそれぞれ違うはずです。
保護者のみなさんの思いと同じくらい教室の運営方針もさまざまです。どんな力を育てようとしているのか、教室の方針を確認してみてください。その方針が、保護者のみなさんの思いと近い方が、納得感が上がります。
また、カリキュラムや授業の進め方も違います。プログラミングは学習塾のように一斉に知識中心の授業を受けるのではなく、手を動してプログラミングしながら体験的に学んでいくのが基本ですが、いろいろなスタイルがあります。
例えば、統一のカリキュラムがあり小グループで予定通りに進める教室、統一のカリキュラムを個人のペースで進める教室、個人のやりたいことに合わせて個別に進める教室などです。お子さんに合うスタイルかどうか確認してみましょう。
(2)どのプログラミングツールを使うのか
教室やコースによって、プログラミングの学習に使うツールが違います。入門的なプログラミングの難易度や学べる基礎に大きな違いはありませんが、プログラミングで何を作るのかが違うので、子どもの体験は大きく異なります。
大きく分けると、ロボットキットでリアルに動くものを作る教室と、子ども向けのプログラミング環境Scratch(スクラッチ)でゲームやクイズなど画面上で動く作品を作る教室があります。
プログラミングを学ぶには、プログラミングの手法を知りたいという気持ちと自分なりの試行錯誤が大切です。それには、自分が作りたいものを作るのが一番。リアルなロボット系か、画面で動くゲーム系か、子どもが作りたいと思うものの好みは不思議とはっきり分かれるので、ぜひ体験授業などでお子さんの気持ちを確かめてみてください。
なお、ロボットキットを使用する教室の場合、教室で借りられる場合と、購入が前提になっている場合がありますので、確認しておきましょう。また、入門的な学びを経て、本格的なゲーム開発やスマートフォンのアプリ開発など、より専門的なプログラミング技術をつけることを見越している場合は、教室に中上級のコースが用意されているかどうかを確認しておくと良いでしょう。
(3)居心地がいいかどうか
そしてなにより、お子さんの居心地の良さが重要です。見学や体験をして教室との相性を確かめ、お子さんと保護者のみなさんの直感を大切にしましょう。
教室の雰囲気を決定づけるのは、運営方針と人の要素が大きく、個人経営の教室の場合は運営者次第でさまざまです。ある程度の規模のスクールの場合、運営形態によってチェックポイントをしぼれます。
大手のプログラミングスクールが複数の地域で教室を直営している場合、統一カリキュラムや方針によって、教室による差が比較的少なく運営されています。スクールの大きな運営方針を確認すると良いでしょう。
大手のプログラミング系のスクールでフランチャイズ方式の場合は、統一カリキュラムがありますが、教室の運営者による雰囲気の差が大きく出る可能性があります。スクールのカリキュラムと教室独自のカラーを確認すると良いでしょう。
学習塾などがプログラミングのコースをあとから併設した場合、別の会社が開発したプログラミング教育用のパッケージカリキュラムを採用しているケースが多く見られます。パッケージの内容と教室運営者のプログラミングに対する思いの強さや専門性を確認すると良いでしょう。
なお、子どものモチベーション維持の工夫にも違いがあり、内部の成果発表会などを通して自信をつけさせていくタイプの教室もあれば、コンテスト出場や独自の検定などで鼓舞するタイプの教室もあります。こうした取り組みの違いも、お子さんの居心地の良さに影響するポイントです。
プログラミングは長期的に見て、人から強制されて教え込まれて伸びるものではありません。逆に、プログラミングを好きになってのめり込んだ子どもたちはどんどん自分で学び進める力をつけていきます。
子ども向けプログラミングコンテストの入賞者は、スクールに通っている人ばかりではなく、独学の人もいれば、学童クラブで体験したのがきっかけという人もいます。お子さんの気持ちを最優先に、もし少しでもプログラミングに興味を持っている様子なら、知識と経験を深める場をぜひ見つけてあげてください。