2020年度から、小学校ではプログラミング教育が始まっています。そんなこと知らなかった! という皆さんや、聞いたことはあるけれど、どんなことを学習するのか興味と不安がいっぱいという皆さんに、いったい学校ではどんな学習をするのかをご紹介しましょう。

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時間割にも登場しないし教科書もない!?

小学校でプログラミング教育が始まったと聞くと、学校でプログラミングの教科書を渡され、毎週「プログラミング」の授業を受ける姿を想像するかもしれません。でも実は、プログラミングは新しい教科として時間割に登場するわけではなく、もともとある教科等の時間にプログラミング活動が取り入れられるスタイルで実施されています。

例えば算数で「正多角形」の学習をする際にプログラムで図形を描いたり、理科で「電気の利用」の学習をする際にモーターで動く装置をプログラムでコントロールしたりといったように、教科の学習内容とプログラミング活動を結びつけることになっています。ほかにも、音楽で曲やリズムをプログラムしたり、図工でプログラムで動く作品を作ったり、どの教科のどの学年の学習内容とでも組み合わせることができます。

また、総合的な学習の時間を使ってより広い視点でプログラミングを体験することもあります。例えば学校や地域の困りごとを解決するためにプログラミングで何かを作るプロジェクトに取り組んだり、企業の出張授業で本物のエンジニアと交流しながらプログラミングを体験したりと、学校によって学習方法はさまざまです。

技術者養成コースではないので安心して!

このように、教科の学習や身近な課題と結びつけてプログラミング体験をするのが、小学校で始まったプログラミング教育の姿です。現在、私たちが囲まれている便利な道具や仕組みの多くはコンピューターで動いていて、その働きはプログラムによって作られています。そんな身の回りの仕組みに興味を持ち、自分がプログラムの作り手にもなれるのだということに気付く大切な機会になります。

特に小学校では、プログラミングの技術力をつける訓練をしようとしているわけではなく、「プログラミング的思考」と名付けた論理的思考力を育むことをねらいのひとつとしています。プログラミングならではの思考力は、自分でプログラムを作って何かを動かそうと試行錯誤する過程で結果として身につくものですから、実際に繰り返しやってみることが大切。知識を暗記させてテストで測るような学習はしませんし、プログラミングだけの成績がつくこともありませんから、子どもたちの負担になるのでは? と心配する必要はありません。

むしろ、小学校ではプログラミングのほんの入り口の部分しか扱えないので、もしお子さんが興味を持っている様子だったら、ぜひ学校外でプログラミングの学びを深める場を見つけてあげてください。スポーツや音楽などと同様に、熱中するものに出会い、経験値を上げ、生き生きと活躍の場を広げることにつながりますし、将来につながる強い興味と情熱を持ってのめり込み、力を伸ばす子どもたちもいます。

小学校のプログラミングは中高につながる基礎になる

豊かな経験となる小学校でのプログラミング教育ですが、ただ体験して終わりなのではなく、その先の学習につながる大切な基礎でもあります。2020年度の小学校での必修化に続き、中学校では2021年度から技術・家庭の技術分野で学ぶプログラミングの内容が増加。高等学校では2022年度から情報の必履修の範囲にプログラミングが入り、選択で扱う内容も高度化します。さらに、大学入学共通テストでは2025年度入学者選抜より情報が新たな出題教科になることが決まりました。

現在小学校では、積極的なプログラミング活動を行っている学校がある一方、ごく限られた活動しかしていない学校もありさまざまです。プログラミングを実施する学年や時間数などに決まりはなく学校ごとに計画を立てることになっているため特徴が出やすいのです。

また、プログラミング教育必修化の2020年度はコロナ禍による休校や感染対策で大混乱の中スタートした上、国が計画していた小中学校での1人1台のPC整備が前倒しで進み、この2年間学校は新たな習慣や環境に対応し続けています。そのため十分なプログラミング活動にまで手が回らないという率直な声も聞こえてくるほど。現実は少し失速気味で実施状況もさまざまですが、今後PC活用が定着するにつれて、プログラミング活動はとても進めやすくなるでしょう。

次回は、この2年ほどで過去前例がないほど大きく変わった学校のPC環境について、プログラミングとの関係をふまえてご紹介します。