物価上昇や先行きに対する不透明感から、投資を始める人が増えている。一口に投資といってもさまざまな選択肢がある中で、注目が集まっている投資手法のひとつが、インフレに強い不動産投資だ。

不動産投資というとマンションの一室を所有する「区分マンション投資」のイメージが先行するが、実は月々のキャッシュフローがプラスになりやすいのは「一棟アパート・マンション投資」だという。今回は、一棟アパート投資のメリットや始め方について、資産価値共創業として、一気通貫のサービスで不動産収益物件を提供する大和財託 代表取締役CEO 藤原正明氏に聞いた。

一棟アパート投資、最大のメリットは「収益性の高さ」

――まず、一棟アパート投資とは、どのような投資なのでしょうか。

一棟アパート投資とは、土地と建物をセットで購入し、賃貸として貸し出すことで家賃収入を得る投資です。不動産投資というと、マンションの一部屋を購入して家賃収入を得る「区分マンション投資」の印象が強いですが、一棟アパート投資は、文字通りアパート一棟と土地を所有する点に特長があります。

――一棟アパート投資にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

一番は収益性が高いことです。一棟アパート投資の場合、投資額は区分マンション投資よりも大きくなりますが、融資を受ければ400万円程度の自己資金で1億円の物件を持つことも可能になります。当社が管理している物件の場合、月の家賃収入は約60万円弱で、融資の返済や賃貸管理会社への管理手数料、ビルメンテナンス費用、固定資産税、都市計画税、火災保険などの諸経費を差し引いても、月10~11万円程度が手元に残る計算になります。

一方、区分マンション投資の場合は、毎月8万円の家賃収入があったとしても、融資の返済や諸経費で月9~10万円の支出が必要です。こうして毎月1~2万円の手出しが発生することで、月々のキャッシュフローはマイナスになってしまい、投資としては赤字になるケースがほとんどです。

区分マンション投資の投資回収ができるのは、購入から20~30年以上が経ち、物件の市場価格に対してローンの返済が大幅に進んだタイミングで売却したときです。区分マンション投資は投資額が小さいので始めやすいイメージがあるかもしれませんが、投資回収までに時間がかかり、売却しない限り利益が出ないという点で、当社としてはリスクのある投資だと考えています。

――一棟アパート投資のデメリットを教えてください。

立地によっては、将来的な人口減少で入居者を集めにくくなったり、資産価値が下落してしまったりするリスクがあることです。一棟アパート投資に適しているのは、容積率が200~300%程度の都心から少し離れたエリアです。例えば、埼玉県の大宮や上尾などですね。

容積率が高い都心は一棟アパート投資には適しませんが、かといって都市部から離れすぎてもいけません。一棟アパート投資をするにあたっては、都会すぎず、田舎すぎない、将来にわたって資産価値が担保できるエリアの選定が大事になってきます。

年収700万円以上、金融資産1,000万円以上ならチャレンジ可能

――どんな人なら一棟アパート投資に挑戦できるのでしょうか? 年収など属性の観点から教えてください。

投資額が大きくなるため、区分マンション投資に比べると要件がやや厳しくなります。年収が700万以上、有価証券なども含む保有金融資産が1,000万円以上あれば、一棟アパート投資に挑戦できる可能性があります。融資額は年収の10倍が目安ですので、年収700万円の方であれば、7,000~8,000万円程度の融資が見込めます。実際には、年収1,000万円以上、保有金融資産が2,000万円以上の方が一棟アパート投資に取り組まれるケースが多いですね。会社員の方も多く、当社のお客様の約半数が会社勤めをされています。

2018年にスルガ銀行の不正融資が発覚し、各銀行が一斉に融資を引き締めた時期がありましたが、2年ほど前から不動産投資向けの融資がおりやすくなっています。金利上昇傾向はあるものの、いまのところ月々の返済額に大きな影響を与えるレベルではありません。日米間の金利差も縮小傾向にあり、今後短期間で大幅な追加利上げが行われることは考えにくいため、いまは融資の観点から、会社員の方でも一棟アパート投資を始めやすいタイミングだと言えるでしょう。

――志向性や目指すリターンの観点から、一棟アパート投資はどのような方に向いているのでしょうか?

不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンに位置付けられるので、ハイリスク・ハイリターンを求める方には、不動産投資・一棟アパート投資は向いていません。

毎月確実に家賃収入が入ってくる一棟アパート投資では、ランニングコストを差し引いて年間130~180万円が手元に残れば、10年間で1,500~2,000万円の利益が得られます。それに加えて、経年による資産価値の下落はあるものの、購入から15年ほど経つと融資の返済が進むので、売却をしても一定の利益が出ます。したがって、一棟アパート投資は15年ほどの期間をかけて、長期的かつ着実に資産運用をしたい方に向いています。

一棟アパート投資では、融資を活用すればレバレッジを効かせることも可能です。初期に500万円の自己資金を投資して、年間150万円の手残りが出るとすると、自己資金は4年で回収できます。自己資金が回収できたタイミングでもう1棟買えば、月々に入ってくるお金をさらに増やすことができます。数年ごとに物件を買って2~3棟のアパートを所有すれば、会社員でも年間500万円弱の手取りが出る仕組みを作ることができるのです。

成功のポイントは「勉強」と「業者選び」

――一棟アパート投資はどのように始めたらいいのでしょうか。投資の流れを教えてください。

一般的には、新築の場合であれば、60~100坪弱程度のアパートに適した土地を探して購入した後、建設会社にアパート建設を依頼し、賃貸仲介会社・賃貸管理会社に入居者募集を依頼します。アパートが完成したら銀行から融資が実行されて物件を購入し、管理会社とともに賃貸経営を進めていくという流れになります。

ただ、これらをすべて自分でやろうとすると非常に大変ですし、立地の見極めなども難しいので、本業のある会社員の方などは、一棟アパート投資をパッケージ化してサービス展開している会社に依頼するのが現実的でしょう。私自身、会社員時代に一棟アパート投資を始めてその大変さを体験したことがきっかけで大和財託を創業した経緯があります。当社では、事前の資産運用に関するコンサルティングから、希望に合った物件の紹介、融資元の金融機関の紹介、契約・引き渡し、その後の管理・運営、さらには出口となる売却まで、一棟アパート投資にまつわるサービスを一気通貫で提供しています。

――一棟アパート投資を成功させるために大事なポイントを教えてください。

ひとつは「勉強」です。一棟アパート投資を成功させるには業者選びが重要になってきますが、不動産投資に関する最低限の知識がなければ業者の良し悪し、物件の良し悪しを見極めることすらできないからです。不動産業者は物件に関して良いことしか言いません。営業担当者の言うことが本当なのかどうかをジャッジする「ものさし」を持つためにも、ある程度の勉強は必要です。ただ、勉強といっても難しく考える必要はなく、本を2~3冊読んでYouTube動画で情報収集をする程度でもいいでしょう。

もうひとつは業者選びです。物件購入後も賃貸管理をする以上、業者とは長い付き合いになるため「賃貸経営のためのパートナーを選ぶ」という視点が欠かせません。業者を選ぶ基準のひとつが、物件を売って終わりではなく、その会社が賃貸管理もやっているかどうかです。賃貸管理までやっているかどうかに、最後まで責任を持ってお客様と並走する意思があるのか、その会社の経営姿勢が表れます。賃貸管理をやっているからといって良い業者とは限りませんが、賃貸管理をやっていることは最低限の条件だと考えています。それに加えて、物件の質や利回り、入居率などから総合的に判断する必要がありますね。

――「立地が重要」との話もありましたが、一棟アパート投資に適した立地はどう見極めればいいのでしょうか?

中長期的に人口の担保があるのは、ターミナル駅とその周辺まで、関東圏なら国道16号の内側です。そのエリア内であれば将来も入居者が見込めるため、当社でもその範囲内でしか物件を提供していません。

「タイムイズマネー」、早く始めれば時間が味方に

――最後に、一棟アパート投資に興味を持っている方に向けてメッセージをお願いします。

大和財託を創業して11年になりますが、時間が経てば経つほど「タイムイズマネー」であることを実感しています。早く投資を始めると、時間の積み重ねによってとてつもないリターンが返ってくるからです。不動産は私たちが仕事をしているあいだも、文句ひとつ言わずに毎月せっせと家賃収入を稼いでくれます。

特にインフレ局面にあるいま、不動産は現物資産なので、貨幣の価値よりも不動産の価値のほうが相対的に高くなりつつあります。一方、ローンは貨幣なので、借金の価値は相対的に低くなっていると言えるでしょう。今後、人口はますます都市部に集中し、都心とその周辺の価値は相対的に高まっていきます。建築資材や職人の手間賃の急騰で建築原価が大幅に上がっているので、当面、都心部およびその周辺の不動産市況が下がる要素は見当たりません。

私自身、会社員のときに始めた不動産投資で大きな利益が出ていますし、当社の創業当初にお付き合いを始めたお客様は、数千万、億単位の利益を手にされています。時間のすごさを実感しているので、不動産投資をするなら早く始めて時間を味方につけていただきたいです。