ハイジュエラーとして長く、その王座に君臨するカルティエ。実は、いち早く腕時計を手掛けた歴史を持ち、それまでの常識をくつがえす優美さ、ラグジュアリーさを加えた存在だ。
カルティエのファンを筆頭に、コレクターが集めるシリーズもいくつかあり、またファッションに高級感やシックさをプラスするためのアイテムとして人気が高い。ハイジュエラーとしてのカルティエの人気や、金やジュエリーの相場が上昇するにつれ、カルティエのシリーズも相場が上昇しているのだとか。
「カルティエ」の腕時計の魅力や人気モデル、相場の動向について、KOMEHYOを運営する(株)コメ兵 商品部の鳥居真 氏に聞いた。
ブランドの歴史とデザイン性の高さが魅力
――カルティエの腕時計が幅広い層から愛されている背景を教えてください。
世界屈指のジュエリーブランドとして名を馳せている「カルティエ」ですが、実は時計ブランドとしても長い歴史を持っています。
例えば、1904年に生まれたカルティエの「サントス」。いまでは誰もが知る定番モデルですが、"世界初の腕時計"という説も聞きます。世界初という説の真意はどうであれ、時計に対してラグジュアリーさやエレガンスを加えた、装飾性と実用性を兼ね備えた現在の腕時計の原型を作ったとはいえると思います。
それゆえに、なかでも腕時計にファッション性を求める方から、広く愛されている印象があります。ジュエリー、バック、財布などと一緒に腕時計もカルティエで揃えて「トータルコーディネート」を楽しめるのもブランドの魅力となっています。
――現在のトレンドとしては、どんなモデルが人気なのでしょうか?
1990年代から2000年前後のファッションが現在のトレンドとなっているので、カルティエの腕時計も同年代に流行したモデル「マストタンク」に注目が集まっています。
また時計コレクターの間では、カルティエの最上級ラインと言える『CPCP』(コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ)の評価が高まっています。このシリーズの機械式ムーブメントは美しく、あえて見せているこだわりにグッとくる方も多いです。
比較的生産数が少なく、希少性の高いシリーズなので、状態の良いものは1本数百万円から1,000万円を超える価格で流通しています。
オークションで2億円超の値をつけたモデルも
――過去のオークションなどで高値をつけたモデルはありますか?
ゆがんだ形が印象的な「クラッシュ」の1967年製ファーストモデルが、オークション史上最高値の2億円超えで落札されています。その額、なんと165万ドル(約2億5,000万円)です。
「クラッシュ」は、サルバドール・ダリの代表作「記憶の固執」からインスパイアされて生まれたと言われています。ダリの作品の特徴といえば、溶けて柔らかくなった時計。一度見たら忘れられない奇抜なデザインです。明らかに量産に不向きなスタイルで、製作本数もごくわずかだったと推測されます。希少性の高さも、高値をつけた理由の一つでしょう。
カルティエが高値で取引される理由
――一般的に中古市場に流通しているモデルの相場は、どのように推移していますか?
例えば、最も人気のある「タンク フランセーズ」シリーズ。中でもW51008Q3は、いまから5年前に中古販売価格が20万円だったものが、現在では38万円になっています。どのモデルも、全体的に相場が上昇していますね。
――昨今、中古相場が上昇しているのはなぜなのでしょうか?
いわゆる高級腕時計を持ちたいと考えたとき、数百万円もするロレックスは手が届かなくても、カルティエの中古なら10万円台のものもあり、購入に踏み切りやすい価格帯なので、需要が高まっています。
さらに、原材料や人件費の高騰からブランド自体の定価も上がっています。中には約10%の値上げもあり、中古市場の価格にも影響しています。