「上司を出せ」「ネットにさらすぞ」といった理不尽で合理的ではないクレームを、「ハードクレーム」といいます。

立て続けにハードクレームを受けると、自分や組織が疲弊してしまい、お客さんとの関係がこじれてしまうかもしれません。

そこで今回は、『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』(著・津田卓也)より内容を一部抜粋して、ハードクレームが発生したときの適切な対応について解説します。

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■まずは6W3Hで相手の話を聞く

6W3Hとは情報をやりとりする際に網羅すべき要素で、Who(誰が)、Whom(誰に)、When(いつ)、Where(どこで)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)、How many(どれだけ)、How much(いくらで)があります。

ハードクレーム対応は、

(1)相手の話を聞き出す
(2)謝罪は部分的にする
(3)毅然として断る
(4)場で連携して解決にあたる

の流れで行います。

今回は、「(1)相手の話を聞き出す」について、具体的な対応とそのコツを紹介します。

ハードクレーム対応において、相手の話の聞き方で大事なのは、お客様の真の要求を見つけ出すことです。

基本は一般クレーム対応と同じで「最初の3分間は8割は相手にしゃべらせる」をまず行います。

相手が、文句や主張を「一通り話し終わったな」と思ったら、こちらの知りたいことを6W3Hで聞き出していきます。

メーカーのコールセンターに「購入したばかりの商品が壊れている」というお客様から、入電がありました。お客様はお怒りの様子で「すぐに商品を交換しろ! 」と繰り返し怒鳴っています。

対応者:ご不便をお掛けし、申し訳ございません。お客様が購入されたときの状況をお聞かせいただけますか?
お客様:状況も何も不良品だよ! 今すぐ新しい商品を家まで持ってこい!
対応者:申し訳ございませんが、こちらではそのような対応はいたしかねます。
お客様:どうしてだ、いいから早く持ってこい!
対応者:お客様、では恐縮ですが、購入されたのは「どちら」の店舗でしょう?
お客様:なんでそんな質問に答えなくちゃいけないんだよ!
対応者:お近くの販売店で対応できるかもしれませんので、教えていただけませんか?
お客様:インターネットショップだよ!
対応者:さようでございましたか。それでは「いつごろ」お手元に届きましたか?
お客様:さっきだよ! さっき届いて開けたら壊れてたんだよ!
対応者:破損していたのは「どの」部分ですか?
お客様:俺を疑っているのか!
対応者:いいえ、そうではございません。状況によっては操作し直すことでお使いいただける可能性がありますので、今、お調べできればと思いました。恐れ入りますが、どの部分が壊れているのか、もう少し詳しくお聞かせいただけないでしょうか。

「新しい商品を今すぐ家に届ける」など、対応できないことは「できない」と相手に明確に伝えた上で、詳しい内容を聞き出していきましょう。

■お客様との会話のなかでハードクレームを見極めるポイント

お客様の言っていることがハードクレームなのかを見極めるために、相手の受け答えに不審な点がないかを探ります。

特殊クレームや悪意クレームを見極めるためには、次のサインに注意してください。

  • 特殊クレームのサイン:筋違いの原因を持ち出す

話が何度も飛躍する・質問に答えなかったり、こちらの話を遮ったりして、同じ主張を繰り返す・説教をしてくる、といった特徴があります。

  • 悪意クレームのサイン:事実や要求を曖昧にする

同じ質問を繰り返し、揚げ足を取る・時折大声を上げたり、机を叩いたりするが、恐喝のフレーズは使わない・要求が曖昧・対応車を長時間拘束し、疲弊させる、といった特徴があります。

  • 画像:『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』より

ここで相手の要求が、特殊クレームや悪意クレームだと分かれば、「ハードクレーム対応モード」に切り替えて、先ほど述べたような対処をしていきましょう。

津田卓也

津田卓也(つだ・たくや)株式会社キューブルーツ代表取締役。1995年ブックオフコーポレーション株式会社に入社し、2000年にはブックオフコーポレーションの年間MVP獲得、前年対比売上150%以上を3度達成。2005年にセミナーamp;研修会社キューブルーツを設立。特に、OJT(部下指導)研修・クレーム対応研修は、国内随一の登壇実績を持ち、「こんな研修は初めて!」「非常に勉強になった!」「感動した!」と評価され、リピート率100%、2016年にはセミナー受講者数が、国内最速で10万人を突破。メディアでも活躍し、フジテレビ『バイキング』、テレビ東京『解禁! 暴露ナイト』、テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』、NHK『あさイチ』等に出演。執筆活動にも力を入れており、雑誌では『日経ビジネスアソシエ』等にも寄稿。著書に『どんなクレームも絶対解決できる!』(あさ出版)、『なぜか印象がよくなるすごい断り方』(サンマーク出版)など。

『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』(津田卓也 著/あさ出版 刊)

現場の従業員を疲弊させないためには、カスハラ、悪意クレームなどの“ハードクレーム”への対応方針を企業・組織が明確に打ち出すことが必要です。本書では、豊富な事例をもとに、従業員と組織を守るための仕組みづくりを紹介。お客様の要望を真摯に受け止めるべき“一般クレーム”と避けるべき“ハードクレーム”を区別し、“ハードクレーム”を断るための対応法を、クレーム対応研修国内随一の登壇実績をもつ著者がお教えします。