株式会社SBI証券は、株式会社FOLIOホールディングスと共同で、全自動AI投資「SBIラップ」について、メディア向け勉強会を11月29日に実施した。

本会では株式会社FOLIOホールディングスより代表取締役社長兼CEOの甲斐真一郎氏、株式会社SBI証券より投資信託部管掌執行役員常務の上原秀信氏が、SBIラップの商品性や直近の実績、SBIラップの今後などを紹介した。

サービス開始から2年半、残高は1266億円を達成

「SBIラップ」は、厳選された特色ある運用コースの「併せ持ち」ができることを特徴とする投資一任サービス。2022年3月、「SBIラップ AI投資コース(AIラップ)」のサービス提供開始を皮切りに、同年10月には対面チャネル向けサービス「SBIラップ×(クロス)SBI新生銀行」の提供を開始した。

2023年7月には野村アセットマネジメント株式会社が投資助言を行う「SBIラップ匠の運用コース(匠ラップ)」の提供を始め、2022年度に続き、「SBIラップ」は投資一任契約増加件数においてNo.1を2年連続で獲得。11月25日現在、提供開始から2年7ヶ月の間で残高は1266億円に到達している。

「SBI証券がSBIラップに取り組んだ背景には、SBI証券の口座を持つ投資家のお客様をはじめ、広く投資家の方々にロボアドバイザーのサービスを広げたいという意図がありました。日本投資顧問業協会の発表した「契約資産状況」では、投資家が金融機関に運用を一任する「ラップ口座」の残高合計は20兆円を超え、うちロボアドバイザーが約2兆円を占めています」と、SBI証券の上原秀信氏。

「特色のある差別化した商品を揃え、選択肢を与えることがオンライン証券にとっては非常に重要なポイントとなります。もともとファンドラップ商品には富裕層向けというようなイメージもありましたが、当社では広くマス向け商品として「SBIラップ」の取り組みを進めてきました」(上原氏)

SBIグループ傘下で、投資一任サービスの運用基盤システムと運用商品をワンストップで提供するプラットフォーム「4RAP」事業を展開しているFOLIO社の甲斐真一郎氏は、「SBIラップ」の好調な成長要因について説明。販売チャネルなどに合わせて特色あるサービス展開が可能な点などを挙げた。

「これまでのロボアドサービスは仲介する金融機関とロボアドバイザー会社との間で仲介契約が結ぶかたちで提供され、お客様は新たに口座を開設して入金する必要がありました。仲介モデルではない「SBIラップ」は、SBI証券口座からそのままシームレスに利用でき、追加購入も非常にスムーズに行える工夫がなされています」

高いパフォーマンスを支える独自のAIアルゴリズム

「4RAP」が初めて導入された「SBIラップ」には現在、「AI投資コース」「匠の運用コース」という2種類のファンドラップ商品が存在する。

「一般的なロボアドバイザーと異なり、「SBIラップ」では「AI投資コース」も「匠の運用コース」も大胆に投資配分を変更します。「AI投資コース」はリスク許容度と関係なく機動的な資産配分を行うことで、通常のロボアドバイザーでは達成できないαのパフォーマンスを叩き出すことを目的とする運用商品です」(甲斐氏)

金融庁が公表したロボアドバイザーのコース別パフォーマンスで、「SBIラップ」の土台であるロボアドバイザー「ROBOPRO(ロボプロ)」は、圧倒的なシャープ・レシオ(運用効率を計る指標)を叩き出していることも紹介された(2022年末までの過去3年間のパフォーマンス)。

「「AI投資コース」では金や株、債券、不動産など8種類のラップ専用の投資信託を通じて、米国上場のETFに投資を行います。我々はAIに複雑な予測をさせず、8種類のアセットクラスのパフォーマンス順位を1~8位まで予想させることにAIを用いることで、その予測精度を上げています。

機械学習のインプットデータは銅の価格や為替、長短の金利差といった経済を読む上で先行性が高いとされる40種類ほどのマーケットのデータです。これにボラティリティ(価格変動の度合い)等々の25種類の特徴量(機械学習において、対象となるデータの特徴や属性を数値化して表したもの)を掛け合わせ、約1000種類の特徴量から独自に抽出することで、「ROBOPRO」はより高い予測精度を持つAIアルゴリズムとなっています」(甲斐氏)

AIがインデックスファンドをアクティブに分散投資する「AI投資コース」対し、「匠の運用コース」は野村アセットマネジメントのプロの投資プロセスや集合知によって相場を判定。アクティブファンドへの投資で収益を追求する。

「リリース後のリターン推移を見ると、「AIラップ」はリリース以来プラス40%を超えている状況です。相場変動も激しかった直近1年間では、「AIラップ」・「匠ラップ」ともに20%超のパフォーマンスということで、どちらも高いパフォーマンスを叩き出しています」(甲斐氏)

年初には第3弾の運用コースもリリース

「SBIラップ」のユーザーは40代~60代が最も大きなボリュームゾーンとなっており、「AIラップ」の保有者の24%が「匠ラップ」を、「匠ラップ」の保有者の約9割が「AIラップ」を併せ持ちしているという。

また、「SBIラップ」に対するユーザー評価のアンケートでは、7割以上のユーザーが5年以上の長期運用を予定していると回答。「SBIラップ」口座のうち、8割弱が新NISA口座を保有しているそうだ。

「SBIラップ口座での取引ではNISAは利用できません。値上がりした資産の一部を売却し、その売却分を他の資産に振り向けてリバランスしていくということを繰り返していると、NISAの非課税枠を超えてしまい課税対象となることが、しばしばあります。しかし「リバランスをしない」ということは、相場局面でのパフォーマンスを放棄することにもなりかねません。取れるリターンは取る、抑えるリスクは抑えることこそ運用の基本と考え、「SBIラップ」ではリバランスを放棄しないことを選択いたしました」(上原氏)

来年初頭には新たなアセットマネジメント会社と提携し、「SBIラップ」第3弾となる新しいコースをリリース予定。今後も投資初心者も取り組みやすい投資一任型を低コストで並べることで、資産運用立国のコンセプトを具現化していくと語った。

「この第3弾は、「AI投資コース」とも「匠の運用コース」とも全く違う運用エンジンを持つ、おそらく国内で初めての誰も目にしたことがないファンドラップになるかと思います。「SBIラップ」全体の残高としては、2025年3月末に1500億円、5年後には1兆円を目指しており、ぜひこの第3弾のリリースにもご期待いただければ」(上原氏)