セイコーウオッチの情報発信拠点「Seiko Seed(セイコー シード)」では、セイコーの機械式腕時計が持つ特性と魅力を伝える展覧会「からくりの森」を開催する。期間は2024年10月11日~12月8日。入場は無料だ。
Seiko Seedは、腕時計の新たな可能性を育み、様々な楽しさと体験を提供するスペース。東京・JR原宿駅の近くにある。
今回の「からくりの森」は3回目を数え、セイコーウオッチのデザイナーとともに、アーティストの小松宏誠(こまつこうせい)氏、エンジニアリングデザイン集団のsiro(シロ)、SPLINE DESIGN HUB + siro(スプライン・デザイン・ハブ + シロ)の3組が参画。機械式腕時計のエッセンシャルな要素のさらなる可能性を表現、発信する。
それぞれのクリエイターが制作したのは、時を刻む機械式腕時計およびその心臓部でもあるメカニカルムーブメントからインスパイアされた作品たち。「1分」や「1秒」といった普遍的な単位を、それぞれの感性で豊かに表現している。「からくりの森」特設サイトもぜひご覧いただきたい。
「からくりの森」概要
- 会期:2024年10月11日(金)~12月8日(日) 11時~20時、会期中は無休
- (水曜日のみ14時~20時)
- (入場は19時45分まで)
- 会場:Seiko Seed
- 所在地:東京都渋谷区神宮前 1-14-30 WITH HARAJUKU 1F
- 入場料:無料
展示作品とクリエイターのコメント
■森のリズム(The Rhythm of the Forest):小松宏誠氏
機械式腕時計の内部を覗くと、さまざまなパーツが動いています。さまざまな速さの動きが伝わりあって、最終的に1 秒、1 分、1 時間と、時計のリズムが表現されていました。小さく精密で、質量を伴った動きの連鎖が続いていく様子にとても魅了されました。僕は森のかけらを拾い集め、1分に1秒間だけ高速で捻られるゴム紐に吊るしていきます。整えられた1 分の中に、森のかけらによって、さまざまな動きとリズムが表現されていくのです。(森のかけら収集場所:盛岡セイコー工業株式会社)
■ばねの羽根(Feather Coils):小松宏誠氏
「動力ぜんまい」を機械式腕時計から取り出すと、美しい曲線のしなやかなバネに戻りました。そのシンプルな部品が機械式腕時計の動きの源であることに感動し、「動力ぜんまい」と「しなやかなバネの動き」をインスピレーションの元として動きのある作品を制作したいと試行錯誤を始めました。円形に並んだバネ状の連続体を少しだけねじることで、かざぐるまの羽根のようになっているモビールです。2つのモビールはつり合って安定しており、風によるわずかな力を加えることで天秤状の吊元が動き出します。
■時の囁き(Whispers of Time):siro
機械式腕時計の動きを眺めていると、強い「魅力」を感じます。機械の正確性についての驚きや感動。小さいながらも力強く時を刻む姿のけなげさやひたむきさ。時にそれは、生きて呼吸をしているようにも、見ている私たちへ何かを語りかけてきているようにも思えてくるのです。
機械式腕時計の原型は16世紀ごろに発明されたと言われます。レンズは紀元前からありますが、投影機は17 世紀頃の発明と言われます。その古くからあるレンズや投影機の2つの技術の組み合わせによって映し出される機械式ムーブメントの姿は、鮮明でありながら幻想的でもあります。
見れば見るほど魅了され、まるで時計の中に入り込んでしまったのではないかと思うような感覚、そしてその囁きに耳を傾けるような体験を通して、この永遠に続く「時のロマン」を感じていただけたらと思います。
■時の足音(Footsteps of Time):SPLINE DESIGN HUB + siro
時間は一般的に、皆に平等に流れるものと捉えられます。しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎるのに対し、退屈な時間はなかなか過ぎないと感じた経験は、誰にでもあるでしょう。人間には時間を直接感じ取る感覚器官はなく、脳が間接的に時間を推測しています。時間への意識の向け方によって、その感じ方は大きく変わるのです。
本作品『時の足音』では、人が時間に対して持つ2つの性質を対比的に表現しています。連続的につながる円形の土台は常に流れを続ける時の普遍性を、歩幅を変えながら不規則なリズムで跳ねるロボットは生き物の象徴として、その時々により感じ方が変わる時の流動性を視覚的に表現しています。
二つの時間が触れ合うことで生まれる「時の足音」と共に、あなたの時間に思いを馳せてみてください。
■回遊する時(The Time of Wandering):セイコーウオッチ デザイナー
機械式腕時計の心臓として存在するちいさな機械。普段の彼らは手首にそっととどまり、規則正しく針を送り続けます。けっして持ち場を離れることなく、ただひたむきに人々の日常を動かすのです。
そんな彼らに「あし」を与え手首から解放すると、どんな歩みをするのでしょうか。その分針に着けた足では、一見静止しているかのようで、実はしばらく眺めていると、わずかに脈動しながらのんびりと歩みをすすめています。さながら休暇の散歩を思わせるその動きからは、普段の生真面目さとは異なる健気な生命体としての面影を感じます。
本作品では腕時計機構の分針を車輪に置き換えることで、日常の中に溶け込むちいさな機械に秘められたまだ見ぬ動きの可能性を提示します。
■時の鼓動(Beat of Time):セイコーウオッチ デザイナー
機械式腕時計の内部を見ると、なぜだかついその動きを眺めてしまいます。そこでは絶え間なく部品が動き、微かな駆動音からは健気さや息吹を感じます。
今回は正確に時を刻むために凝縮された機械式腕時計そのものに着目し、腕時計機構を球体で覆い、その秘められた魅力を表現しました。
球をのぞきこむと、そこでは小さなちいさな機械が時を刻んでいます。透明な球に耳をすませば、駆動音が鼓動のようにささやき、白い球はやわらかい光と映る影の揺らぎで、時の流れを・・・
機械式腕時計の多彩な魅力に触れていただければと思います。