サイゼリヤの2024年8月期は、経常利益が前期比で約2倍の大幅増益となりました。また、これまで海外事業の黒字で国内事業の赤字をカバーする状態が続いたものの、国内事業も2024年8月期は2019年8月期以来の黒字となりました。海外事業の成長が続く中で国内事業も黒字化し、同社は新たな第一歩を踏み出す形となりました。国内事業の黒字化を契機に、サイゼリヤは更なる成長を見せるか、今後の行方が注目されます。

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サイゼリヤの2024年8月期は経常利益が約2倍の大幅増益に

格安イタリアンのチェーン展開を行うサイゼリヤ<7581>が、2024年8月期決算を発表しました。以下が過去3期と来期の予想数字です。

2022年8月期 売上高1,442億円、経常利益107億円、当期純利益56億円
2023年8月期 売上高1,832億円、経常利益79億円、当期純利益51億円
2024年8月期 売上高2,245億円、経常利益155億円、当期純利益81億円
2025年8月期(予想) 売上高2,536億円、経常利益164億円、当期純利益103億円
※当期純利益=親会社株主に帰属する当期純利益

2024年8月期は前期比で売上高は22.5%増、経常利益は96.0%増となり、増収・大幅増益を達成しました。経常利益はほぼ倍増しています。

来期は増益ペースが落ちるものの、増収増益の維持を予想しており、最終利益で100億円突破を見込んでいます。2024年8月期の大幅増益により、サイゼリヤの利益水準は新たなステージ入りしたと言えるでしょう。

2024年8月期は国内事業の黒字化も見逃せない

2024年8月期のサイゼリヤの決算は大幅増益が注目されるものの、国内部門の黒字化も見逃せません。同社はこれまで海外事業の黒字で国内部門の赤字をカバーする状態が続きました。格安イタリアンを楽しめる環境も、海外事業の利益があればこそでした。しかし2024年8月期は海外事業の成長に加えて、国内事業も黒字化しています。以下が部門別の損益です。

2024年8月期 国内:売上高1,464億円、営業利益27億円/海外:売上高793億円、営業利益116億円
2023年8月期 国内:売上高1,204億円、営業利益▲14億円/海外:売上高627億円、営業利益84億円
2022年8月期 国内:売上高1,011億円、営業利益▲21億円/海外:売上高431億円、営業利益22億円
※海外は主力のアジア部門のみピックアップ

2024年8月期は国内・海外ともに黒字です。国内部門は2020年8月期から赤字が続いており、2019年8月期以来の黒字です。

ただし国内事業は黒字化したものの、利益水準は海外事業が上回っており、依然として同社の屋台骨は海外事業が支えています。

引き続き海外事業は伸びている

国内事業が2019年8月期以来の黒字となったサイゼリヤですが、海外事業の伸びは続いています。2024年8月期は遂に営業利益100億円を突破しました。

同社の海外事業は中国中心の展開ですが、8月にベトナムへの進出を発表しました(店舗の出店時期は未定)。成長が続く海外事業について、ベトナム事業の開始で成長が加速するか注目されます。

コロナ禍前から着手、国内店舗のスクラップ&ビルドが着地することに

サイゼリヤはコロナ禍の前に、国内店舗のスクラップ&ビルドに着手しました。2010年代半ば頃から国内出店を加速して急成長を果たした同社ですが、成長のピークアウトとともに採算性の悪い国内店舗が業績の重石となりました。それを受けて、2019年8月期に大規模な国内店舗のスクラップビルドを行っています。コロナ禍の前に、各地のサイゼリヤの店舗で"閉店のお知らせ"を見た方も多いのではないでしょうか。

しかし、国内店舗網の整理に目処が立ちつつあるタイミングでコロナ禍に見舞われてしまいます。その結果、国内事業の赤字は2023年8月期まで4期継続。2024年8月期の国内事業の黒字化により、コロナ禍前に着手した国内店舗のスクラップ&ビルドはようやく着地となりました。

  • 店舗数の推移※決算資料より引用

国内事業の立ち直りを契機に成長は加速か?

長く国内事業の赤字が続いたサイゼリヤですが、2024年8月期の国内事業の黒字化により、国内事業の立て直しは一段落しました。

会社全体として海外事業の好調に助けられていた状態でしたが、2025年8月期からは国内事業の黒字に加えて海外事業の成長もあり、全体としての成長が加速する可能性もあります。立て直しが一段落した後の国内事業をどのようにするのか、ベトナム進出は成功するのかといった課題はあるものの、サイゼリヤは新たなスタートラインに立ったと言えるでしょう。海外事業を中心にサイゼリヤは更なる成長を見せるのか、今後の業績の行方が注目されます。