2024年8月、「グレンモーレンジィ」のフラッグシップウイスキー「グレンモーレンジィ オリジナル 10年」がグレードアップし、「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」となりました。すでに販売されており、店頭で購入したり、バーで飲んだりできます。
グレンモーレンジィは、スコットランドのハイランド地方に位置するグレンモーレンジィ蒸溜所で作られているシングルモルトウイスキーです。蒸留所は1843年に設立された老舗で、スコットランドで最も背の高いポットスチルを使用していることが特徴となっています。
9月半ばには新製品のローンチ記念イベント「グレンモーレンジィ ハウス 2024」が開催され、グレンモーレンジィ 最高蒸留・製造責任者であるビル・ラムズデン博士も来日しました。そのときの様子も交えながら、新旧のグレンモーレンジィ オリジナルを実際にテイスティングしたレポートをお届けします。
ビル・ラムズデン博士はグレンモーレンジィ蒸留所に加えて、アードベッグ蒸留所の最高蒸留・製造責任者も務めています。生化学の博士号を取得しており、世界屈指のウイスキークリエイターとして数々の賞を受けている人物です。
「初めて“グレンモーレンジィ オリジナル 10年”を飲んだのは24歳のときでした。とてもソフトなテクスチャがあって、甘いフレーバーもあり、一目ぼれしました。そこから、グレンモーレンジィに携わって30年目になりますが、その間、“グレンモーレンジィ オリジナル”にいくつかの変更を加えてきました。でも必ず、クリーミーなテクスチャや複雑な味わいというハウススタイルはずっと守り続けています」(ラムズデン博士)
グレンモーレンジィは10年熟成から30年熟成まで、8種類の製品をラインアップしています。その中で「オリジナル」がフラッグシップです。理由は、グレンモーレンジィの良さ、テロワールを最も良く持っているためとのこと。ラムズデン博士は長らく、10年熟成が最高だと思っていましたが、4年前、このフラッグシップをさらに完ぺきに近づけることに挑戦しようと考えました。
「色々な樽やレシピを試しましたが、あまりうまくいかず、11年熟成と12年熟成が候補に残り、最終的に12年を選びました。12年熟成になると、グレンモーレンジィが2倍“美味しい”と感じました」(ラムズデン博士)
イベントでは「グレンモーレンジィ インフィニータ 18年」も提供されましたが、実は、ラムズデン博士はグレンモーレンジィに参画した30年前、当時の18年は好きではなかったと言います。
「グレンモーレンジィらしさがなかったのです。そこでレシピを変え、シェリー樽を使った原酒の比率を減らし、よりバーボン樽の比率を増やしました」(ラムズデン博士)
2024年7月に「グレンモーレンジィ 18年」は、「グレンモーレンジィ インフィニータ 18年」に改名されました。バーボン樽で15年間熟成し、一部をオロロソシェリー樽で3年間追加熟成しています。インフィニータ(無限)の由来は、一口飲むとさわやかな香りと深みのある味わいがずっと続くところからきているそうです。公式サイトのコメントは以下の通り。
“一口ごとに異なる風味があなたを迎えてくれます。キャラメリゼしたオレンジのプールに波打つ蜂蜜のような香り。そよ風に吹かれたジャスミンとレモンの花畑。あるいは、暖かなイチジクのコクとオレンジマーマレードの深みの狂想曲が、焚き火の煙にそよぐ……”
「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」は、350mlのハーフボトルと700mlのフルボトルが販売されています。ラベルや箱のデザインは踏襲されており、熟成年数の部分が12になっています。バーボン樽熟成、アルコール度数は40度。希望小売価格はハーフボトルが4,125円、フルボトルが6,875円です。
たった2年違い、なのに中身は別物。ストレートで味わいたいスムース感がクセになる
「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」が発売されたあとも、従来の「グレンモーレンジィ オリジナル 10年」は購入できますが、流通在庫のみです。元の「グレンモーレンジィ オリジナル 10年」ファンであれば、今のうちに確保しておくことをおすすめします。
個人的に「グレンモーレンジィ オリジナル 10年」は数えきれないくらい飲んでおり、トップクラスに好きなウイスキーです。
色は淡い黄色ですが、イメージと違って香りは芳醇。オレンジなどの柑橘系や桃、ややスパイシーなさわやかさも感じます。かすかにウッディというか古い家具のような印象もあります。
味わいは何といってもスムース。オレンジ感もありつつ、バタークッキーのような甘くビターなニュアンスも感じられます。アフターもしっかりとあり、レモンのような余韻が残ります。
「グレンモーレンジィ オリジナル 10年」はストレートでもとても美味しいのですが、手ごろな価格ということもあり、ハイボールにすることも多い銘柄です。
一方の「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」は10年と比べて色が濃く、琥珀色になっています。香りは、やはりオレンジピールが真ん中にあるのですが、バニラやピーチもしっかりと感じます。当たり前とはいえ、明らかに10年よりも長く熟成していることがわかります。
一口飲んだだけで、失礼ながら10年よりも段違いに美味しく、笑みがこぼれます。クリーミーなのはその通りだとしても、ハチミツやバターの感じが強くなり、複雑さが増しています。
樽の使い方は同じとのことなので、単に熟成期間を2年間延ばすだけでこうなるとは驚きです。コスパも念頭に置きつつ、12年をチョイスしたラムズデン博士の慧眼には恐れ入ります。
ハイボールであれば幅広い料理に合うと思います。フルーティなので海鮮にいいと感じますが、パスタ系に合わせてみたいですね。ストレートであれば、デザートが合います。バニラアイスはもちろん、カカオ比率の高いチョコレートにもぴったりです。オイルサーディンといったおつまみにも合うでしょう。
ウイスキーはリニューアルしたからといって美味しくなるとは限らず、近年は味が落ちたと言われるブランドもあります。しかし、「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」は文句なしに、明らかに美味しくなっています。わずかに価格は上がっていますが、昨今の状況からすると気にならないレベルです。ウイスキー好きとしては、もろ手を挙げて歓迎したいところです。
以前に「グレンモーレンジィ オリジナル」を飲んだことがあって、気に入った人も、合わないと感じた人も、ぜひ「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」を飲んでみてください。また、今後飲めなくなる「グレンモーレンジィ オリジナル 10年」も自分のために確保してみてはいかがでしょうか。
撮影協力
BAR 原価割れ 池袋
(https://genkaware.foodre.jp/)