世界的なハイブランドの値上げが相次ぎ、ブランドバッグの販売価格は新品・中古ともに上がっています。中でも値上がり幅が大きいブランドとして注目されているのが「シャネル」。20年前には定価約15万円だったバッグが、現在中古でも60~70万円だというのです。
これほどシャネルのバッグが高騰しているのはなぜなのでしょうか。また今後の相場はどうなるのか、大手買取専門店「買取大吉」の鑑定士である木村健一さんに聞きました。
シャネルのバッグがステイタスシンボルに
――ハイブランドバッグの中古価格が総じて上昇している中でも、シャネルの値上がり幅は特に大きいそうですね。それはなぜなのでしょうか。
おもな要因として、定価が上がっていることと、シャネルの人気が非常に高まっていることが挙げられます。
ブランド品の値上げの背景には原料費の高騰もありますが、ハイブランドの原価率はそれほど高くないため、原料費の高騰が極端な値上げにつながるとは考えにくいです。
近年、広告などによってブランドの価値を高め、1点の品物の価格を上げる戦略をとるハイブランドが増えています。シャネルもブランドとしての価値を高める動きを強めているので、ブランディング戦略の一環として大幅な値上げをしているのではないでしょうか。 シャネルというと、数十年前は派手なイメージや、やや年配の女性が持つイメージがあり、万人受けするブランドではありませんでした。ところが、次第にカジュアルなファッションアイテムも作るようになり、ブランドイメージが変わってきました。
SNS上での海外セレブやインフルエンサーの発信も、近年のシャネル人気に拍車をかけています。いまでは、20代の若い方もこぞってシャネルのバッグを持つようになっていますね。
幅広い層に支持されるブランドとしての地位を確立した上で、値段を上げる戦略をとったことで、シャネルを持つことがその人のステイタスを表す指標のひとつになっています。ロレックスの時計と同じで、一種のステイタスシンボルになっているからこそ、高いお金を出してでも買いたいという人が多いのです。
20年間で定価が約10倍に急騰、中古の買取価格も上昇
――シャネルのバッグの価格推移を教えてください。
定番人気のチェーンバッグ「マトラッセ」を例に挙げると、20年前の定価は15万円、買取価格は8~10万円ほどでしたが、10年前には定価が40~50万円程度に上昇。いまでは150~200万円弱にまで値上がりしています。
信じられないような値上げ幅ですが、それでも非常に人気が高いため、ブティックに足を運んでも購入できないことがしばしばあるようです。エルメスのバーキンほどではありませんが、ブランド側も売る相手を選んでいるのではないでしょうか。お金さえ出せば誰でも買えるアイテムではなくなった結果、持っていると余計にステイタスが上がるという状況になっています。
――定価が上がっているということなので、二次流通の価格も年々上がってきているのでしょうか?
いまはピーク時よりも若干下がっていますが、基本的には二次流通価格も年を追うごとにどんどん上がっています。20~30年前は「マトラッセ」の定価が15万円ほどでしたが、いまは特に目立った傷や汚れがなければ中古の販売価格は60~70万円ほどです。中古価格が20~30年前の定価の3~4倍になっているので、状態が良ければ買取価格は当時の定価である15万円を上回ります。
――シャネルのバッグの中でも、特に高く買い取られるアイテムはありますか?
アイコンバッグである「マトラッセ」シリーズの人気が根強いものの、シャネルのバッグは全般的に人気があるので、特に「これ」というアイテムはありません。やはりシャネルのバッグが欲しい人はロゴマークが目当てなので、特定のアイテムというよりは「ココマークのついたバッグが欲しい」という感覚ではないでしょうか。
アイテムにもよりますが、ほとんど使用感のない新古品の場合、定価の8~9割の価格で販売されています。定価150万円の商品なら120~130万円で売られているイメージですね。
シャネルのバッグ、いまは売りどき
――シャネルのバッグを持っている場合、いまは売りどきでしょうか?
ズバリ売りどきです。年配の方が数十年前に使っていたシャネルのバッグの買い取りを依頼されるケースも少なくありませんが、買取価格を聞くとみなさん飛び跳ねるほど驚かれます。定価が上がっているだけでなく、いまはシャネルというブランドの人気がかつてないほど高まっているので、売却するには絶好のタイミングではないでしょうか。
――今後の相場はどうなると予想されますか?
ハイブランドが1度値上げした商品を値下げすることはないので、定価は年々上がり続けるでしょう。定価に比例して中古市場の相場も上がっていくというのが基本的な考え方です。
ただ、バッグなどのファッションアイテムには流行があるため、実際にはそれほど単純ではありません。過去を見ても、数十年前に人気があったブランドの人気がなくなったり、一度人気が低迷したブランドの人気が復活したりと、ブランドの人気には波があります。
いまはシャネルのブランド価値がピークを迎えているので中古でも高く売れますが、今後も同レベルの人気が続くとは限りません。ブランドの人気にかげりが出ると、定価が上がったとしても二次市場における価値は下がります。二次流通価格は需要と供給の関係で決まることは常に意識しておく必要がありますね。