家電のデザインは日々進化しているが、安全性や「大多数の使いやすさ」を追求するとどうしても「家電っぽい」見た目になりがち。そんな実状を変えていくかもしれないコンセプト展示が、5月11日から表参道の「Karimoku Commons Tokyo(カリモク コモンズ トウキョウ)」にて開催されている。コンセプトは「家具と家電の融合」だ。
日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立)のデザイン冷蔵庫「Chiiil」に、人気デザイン家具メーカー「カリモク家具」が木製パーツをデザイン。家電と木の組み合わせで生まれる雰囲気や使いやすさを、実際の生活空間を模したシチュエーションで体験できる。
設置場所を選ばないデザインの冷蔵庫「Chiiil」
今回の展示に使われた冷蔵庫は、日立の冷蔵庫「Chiiil(チール)」の右開き版と左開き版。Chiiilは「冷蔵庫に見えないデザイン」が大きな特徴で、扉のハンドルが正面から見えない工夫をしたりと、一見するとシンプルな箱のよう。寝室やリビングなどキッチン以外の場所に置いても違和感がないため、インテリアに関心のあるユーザーからも人気。
もともと「家電感」を極力排除したChiiilだが、ここに木の素材をデザインするカリモク家具が組み合わさることで、さらに生活に寄り添った製品になるのでは――? 多様な家庭の「ちょうどいい」にマッチする可能性を追求したのが、今回のコンセプト展示だ。
「木製パーツ」で生活にぬくもりをプラス
展示会場にリビングや寝室などを想定した生活空間を作り、日立+カリモクのコラボChiiilのある生活を体験できるようになっている。
たとえば、オーディオといった趣味の部屋を想定したスペースでは、Chiiilに木製の脚と天板を組み合わせた。今回の展示ではChiiil本体には手を付けず、カリモク家具がいわば専用の木製パーツを追加することで、シーンにあった家具的なデザインを実現している。
会場にはさまざまなコラボデザインが置かれているが、この「木製の天板と脚を後付け」したデザインはその基本形。木製パーツを組み合わせることでぬくもりを感じる空間を演出してくれるうえ、脚によって10cm近い高さを出すことでロボット掃除機での掃除も可能にしている。
住居の困りごとはデザインで解決できるかも
Chiiilは左右に並べたり、上下に積み上げたりして複数台を配置することも考えられた冷蔵庫。そこで、横に2台並べたChiiilの上部に木製の天板を渡した展示もあった。この展示は狭いキッチンでの使用を想定しており、木製の天板を追加することで冷蔵庫上部を調理台のように利用できる。狭いキッチンをデザインの力でオシャレかつ機能的になる好例だ。
単身や小世帯向けの賃貸住宅はキッチンが狭いことも多く、十分な大きさ冷蔵庫の置くスペースがないこともあるだろう。そんな住居を想定した展示には、カリモクらしさが前面に出たキャビネット。
左に常温保存食材を入れておくストッカー、右にChiiilを配置することによって、リビングに置いて絵になるキャビネットユニットが誕生した。ストッカー部の扉にはラタンを用いており、デザイン性と食材のための通気性も確保している。
残念ながら今回はコンセプト展示ということで、Chiiil用の後付けパーツが今後販売されるかどうかは未定だが、Chiiilの持つ自由度や拡張性の高さ、そして家電全体の可能性を実感した。また、実際に体験して感動したのは、追加された木製素材の手触りのよさ。スルリとした柔らかなぬくもりで、ずっと触っていたくなる心地よさがあった。期間中に訪れる機会があれば現地でチェックしてほしい。