シングルモルトスコッチウイスキー「グレンドロナック」の12年・15年・18年のパッケージがリニューアルし、そのお披露目とテイスティング&フードペアリングのスペシャルイベントが行われた。今回、初来日となるマスターブレンダーのレイチェル・バリー氏をゲストに迎えたセッションも興味深かった。

  • 「グレンドロナック」のパッケージが刷新された

開会のあいさつは「グレンドロナック」を販売するブラウンフォーマン社の日本法人である、ブラウンホーマンジャパン 代表取締役社長のアーロン・J・マーティン氏。ブラウンフォーマンのブランドは日本で75年以上にわたって販売されてきたが、日本における自社製品群の輸入・流通・販売・マーケティングを目的として、2022年に日本法人を設立した。

「ブラウンフォーマンのポートフォリオにはスコッチ蒸留所が3つあります。グレンドロナック、ベンリアック、グレングラッサで、今回はスコットランド ハイランド地方のシングルモルトスコッチ「グレンドロナック」を紹介します。グレンドロナックは職人技とシェリー樽熟成のブレンドで知られるブランドで、ここ日本でも熱烈なファンが増えています。本日は、ブランドの新たな一歩として、リニューアルした新パッケージの日本上陸を発表します」(マーティン氏)

リニューアルしたボトルは従来よりも少し背が高くなった。ボトルには新しくエンブレムがデザインされており、キャップシールはベリーの谷をイメージしたプリントを施している。従来は大きいラベルと創業年の入った小さいラベルが2枚貼られていたが、1枚にまとまって今どきのビジュアルになった。

  • ブラウンフォーマンジャパン 代表取締役社長 アーロン・J・マーティン氏

ブラウンフォーマンのマスターブレンダーであるレイチェル・バリー氏は、ウイスキーマガジン誌が主催する「Hall of Fame」を受賞。スコッチウイスキー業界の発展と普及に貢献した人を称えるために設立された協会、「The Keepers of the Quaich」にも名を連ねている。「スコッチウイスキーのファーストレディ」と呼ばれている有名なマスターブレンダーの一人だ。ウイスキー業界で30年以上活躍し続け、グレンドロナックだけでなく、ベンリアックとグレングラッサも統括している。

グレンドロナックは1826年にジェームズ・アラダイスによって設立され、2016年にブラウンフォーマンが買収した。ハイランドの東側、お城が多くある特殊な地域に位置している。バリー氏は2017年に入社し、グレンドロナックの未来に向け動いている。

「蒸留所は渓谷に囲まれ、ブラックベリーの谷と言われています。子どものころはブラックベリーがなくなるまで食べていたものです。スコットランドで最も肥沃な土地が広がっており、色々なお城も点在し、すばらしい景観を持っています」(バリー氏)

バリー氏はエジンバラの本社で働きながら、年間で5,000樽ものチェックをしているそう。蒸留してすぐのニューポットと呼ばれる透明な原酒もすべてテイスティングしているといい、「グレンドロナック」の味を統括するマスターブレンダーなのだ。

2019年には映画「キングスマン」とタイアップした「グレンドロナック キングスマンエディション」をリリース。2021年には50年熟成の「グレンドロナック」をリリースするなど、話題を集めている。2023年からは蒸留所とウェアハウスを拡大する作業がスタート。ビジターセンターにも大きな投資を続けており、2026年にはすばらしい体験が得られる施設が完成するとのこと。

  • ブラウンフォーマンのマススターブレンダー レイチェル・バリー氏

  • バリー氏はブラウンフォーマンがグレンドロナックを買収した翌年に入社

蒸留所の周りは品質の高い大麦の産地として知られており、もちろん「グレンドロナック」もここの大麦を使って作られている。発酵槽は創業当時と同じく、スコットランド産のカラマツ製。蒸留を行うポットスチルはユニークなサックス型をしている。このポットスチルのおかげで、表情豊かなスピリッツができるそう。

「蒸留された液体をカットし、良い部分だけを取り出しています。オレンジやベリー、チョコレートやレザー、そして微かなタバコの香りを持ったウイスキーとなっています。私はこの中にお茶のような香りも感じます」(バリー氏)

  • ポットスチルは独自のサックス型になっている

テイスティング&ペアリング

「グレンドロナック12年」「グレンドロナック15年」「グレンドロナック18年」のテイスティングとフードペアリングも行われた。ウイスキー文化研究所代表の土屋守氏も登壇しし、土屋氏はハイランド・ディスティラーズ社から「世界のウイスキーライター5人」の一人に選ばれているウイスキー評論家だ。

「グレンドロナック」のフレーバーは4つの要素を抱えている。濃い色の果実、オレンジ、ブラックベリーなどの香り、スパイスやダークチョコレート、ワインを思わせるエレガントなトップノート、土っぽいタバコとレザー、そしてスムースな口当たりとレーズンや煮込んだフルーツのような豊かな味わい――。これらは「グレンドロナック」のハウス・スタイルであり、バリー氏はこれら要素のバランスを取る、オーケストラの指揮者のような立場にあるという。

  • 「グレンドロナック」を構成する4つの要素

「グレンドロナック12年」と合わせるのはマンディアン。フルーツやチョコレート、干しレーズンのアロマやシルキーなオレンジの味わいにマッチし、とても美味しい。バリー氏はチョコレートと合わせることで、フレーバーのクレッシェンドが高まっていくと表現した。

この「グレンドロナック12年」はペドロヒメネスとオロロソのシェリー樽を両方使っているが、土屋氏から割合に関して質問が飛んだ。バリー氏は「シークレット!」と笑ったものの、結局はペドロヒメネスが65%~75%の間だと教えてくれた。12年の黒い果実感はペドロヒメネスによるものなのだろう。

「12年はアルコール度数が43%なのでボディもあるし、アロマがスイート。このベリー系フルーツのバランスもすごく良くて、多分レイチェルさんが考えるグレンドロナックのハウス・スタイルがこれなんだな、ということがわかりますね」(土屋氏)

12年はデイリーで楽しんでほしいという。もちろんストレートでもいけるが、ハイボールにしても美味しい。甘みが凝縮されているイメージがあるので、カクテルのロブ・ロイにもぴったりだった。

  • 「グレンドロナック」3製品とそれぞれに合う食材をペアリング

続いて「グレンドロナック15年」と合わせるのは、トリュフ&マッシュルームアランチーニ。マラスキーノ・チェリーやクルミリキュールといったアロマと、ハチミツをかけたアプリコット、熟したイチジクという味わいと絶妙にマッチ。うまみの相乗効果が生まれ、ストレートながら食中酒としても食材の魅力を際立たせていた。

作り方は12年物と同じだが、15年のほうがより洗練されたイメージがある。アルコール度数は46%と高め。15年物は食中・食後に楽しんでいるとバリー氏。

「とても洗練されており、日本の皆さまの味覚にはぴったりなのではないでしょうか。お茶のような感じもして、とてもシルキーです。マラスキーノチェリーやダークチョコレートのような甘みを感じますが、信じられないほどエレガントな後味です。そして、緑茶の味も少しします」(バリー氏)

「15年はとても長い余韻があります。レイチェルさんは日本のお茶のようだと言っていますが、お茶の旨み成分のようなところを感じ取っているのだと思います」(土屋氏)

  • バリー氏が感じる「グレンドロナック」のお茶のニュアンスは、うまみを感じ取っていると土屋氏

最後に「グレンドロナック18年」と合わせるのは、ローストビーフ&タルタルゴリゴンゾーラ。18年はオロロソのシェリー樽だけで熟成させており、15年よりもさらにフルボディでしっかりとした味わい。

ブルーチーズにマッチするオロロソの樽で熟成したため、こちらも最高のペアリングだった。グラスをスワリングすると、確かにお茶のニュアンスが感じられる。この贅沢な逸品はぜひストレートで楽しんでほしいとのこと。

バリー氏は「グレンドロナック」をエレガントと表現しているが、これはスパニッシュオークのシェリー樽によるものだという。これはフレンチオークやホワイトオークのシェリー樽では出せないフレーバーだそうだ。

「レイチェルさんがブレンドした新しいグレンドロナックを見ると、これから相当に面白くなりそうだと期待が持てますね」と土屋氏は語った。

  • 楽しい掛け合いのなか、「グレンドロナック」とペアリングに舌鼓を打った

バリー氏が手掛ける「グレンドロナック」は装い新たにまた歴史を紡いでいく。リニューアルしたパッケージは10月から出荷される予定だ。