日鉄興和不動産は30日、分譲マンション「リビオタワー品川」のゲストサロンを報道陣に公開した。地上34階建、全815戸という超高層タワーマンションの誕生は、品川駅最寄りで実に15年ぶり。品川エリアにおいて、階数・総戸数ともに希少性の高い大規模物件となり、既にエントリー数は1万4,000件超と注目を集めている。
今回のレポートでは物件の概要について解説しながら、再開発が進む港南・田町寄りエリアに与えるインパクトや物件の将来性について考えてみたい。
品川・田町エリアにおける唯一無二の立地と仕様
JR品川駅徒歩13分に立地する「リビオ品川タワー」。港区のウォーターフロントという唯一無二の立地を生かし、デザインコンセプトに据えたのは時代を先導する「船」。フィットネスラウンジやゴルフレンジ、スカイラウンジでの飲食提供サービスなど、大規模物件ならではの共用施設も備えている。マンション専用のシャトルバスも運行される予定だ。
個人的には、この規模だからこそ整備できる「車寄せ」、物件周りの土地を潤沢に使った緑地の形成、防災備品倉庫やかまどベンチの設置、顔認証セキュリティシステムの導入なども、周辺の既存物件と差別化が図れる魅力的なポイントだと感じた。
共用部のアートディレクションにおいても、多くのデザイン賞を受賞してきたデザインスタジオwe+が手掛け、廃材などのサステナブルな素材を活用したアートワーク等が採用されており、これらも周辺物件との差別化になるだろう。
居住的資産価値、金銭的資産価値の両面から期待ができ、「パークタワー晴海」のように継続的に引きがある物件となるかもしれない。
住戸の間取りは1LDK~3LDK、専有面積は42.10平方メートル~130.24平方メートル。設備仕様は最上階のプレミアム、スーペリア、スタンダードとグレードが分けられている。ファミリータイプは原則エアコン天井カセットタイプであり、いまのハイエンド物件の基準を満たしている。標準仕様でカップボード等も設定されている。
内覧会の中では、建築費の上昇影響について「建築費が上がりきる前に工事の請負契約や着工ができており、影響は少ない。物価自体が上昇しているので、なるべくコストを下げるような受注のやり方、メーカーとの交渉をやっている。」とのコメントもあり、標準仕様や共用設備の充実度は想像以上であった。
価格の妥当性は?
内覧会では、第1期販売予定価格も一部紹介された。例えば、4階 3LDK+WIC+N(73.5㎡)/北東向き・角住戸のスタンダードグレードで1億4,000万円台。13階 3LDK+N(75.10㎡)/南東向き・角住戸のスタンダードグレードでは1億8,000万円台。スーペリアグレードの29階 3LDK+WIC+P+SIC(89.89㎡)/東向きで2億3,000万円台で、最高額は未定としていた。
現状、周辺エリアで通常仕様・ファミリータイプの新築物件(70㎡程度)であれば、1億5,000万円台がベンチマークとなりつつあるので、価格としては妥当だろう。
晴海フラッグをはじめとした直近の傾向を見ると、プレミアム価格を払ってでも、景色が良く広い住戸に住みたい層は一定数いる。スタンダードグレードとスーペリアグレードで差はあるものの、平米単価の差はそこまで大きくないので、スーペリアグレードの住戸も動きやすいのではないかと思う。
ただし、品川駅とともに最寄りとなる高輪ゲートウェイ駅から浄水場側の最短ルートが設定されることは、物件の価格・賃料維持のための必須要件であるので、駅南側の開発の進捗は丁寧に見ていく必要がある。
今後の新築レジデンスプロジェクトの方向性を左右する試金石に
日鉄興和不動産によれば、2024年2月22日より始まったエントリーは港区・中央区・品川区からが4割、30代が半数程度で、約8割が自己居住用としての購入を検討しているという。共有部分が充実しており、継続的に価値をキープしうる今回の物件は、自己居住用として一定の期待ができると思う。
建築費・土地価格が上昇する中、「リビオタワー品川」の仕様がどれだけ顧客に刺さるかにより、今後の新築レジデンスプロジェクトの方向性が決まるといっても過言ではない。
港南・田町寄りエリアは開発が停滞していた"これから"の街。開発が完了する前の段階でどれだけ物件価格を上げられるのか、周辺エリアの既存・新築物件の価格・賃料のベンチマークたりうるフラッグシップマンションとして、今後の展開に注目したい。
『リビオタワー品川』物件概要
所在地 :東京都港区港南三丁目 7番2(地番)
交通 :JR山手線・JR京浜東北線(根岸線)・JR東海道本線・JR横須賀線・JR上野東京ライン・JR東海道新幹線「品川」駅港南口徒歩13分、京急本線「品川」駅高輪口徒歩17分
総戸数 :815戸(他に店舗1区画)
敷地面積 :6,821.38平方メートル
延床面積 :76,130.35平方メートル
構造・規模 :鉄筋コンクリート造・地上 34 階建
間取り :1LDK~3LDK
専有面積 :42.10平方メートル ~130.24平方メートル
建築確認番号:第UHEC建確R040650号(令和5年1月30日付)
土地の権利 :所有権
事業主 :日鉄興和不動産株式会社、関電不動産開発株式会社、九州旅客鉄道株式会社、京浜急行電鉄株式会社、中央日本土地建物株式会社
設計者 :浅井謙建築研究所株式会社、株式会社長谷工コーポレーション
施工者 :株式会社長谷工コーポレーション
管理会社 :株式会社日鉄コミュニティ
販売代理 :株式会社長谷工アーベスト、伊藤忠ハウジング株式会社、日鉄興和不動産株式会社
竣工予定 :2026年05月上旬(予定)
引渡可能年月:2026年10月上旬(予定)
販売開始時期:2025年03月上旬(予定)
渕ノ上弘和(ふちのうえ・ひろかず)/不動産ナビゲーター
2000年に立教大学法学部法学科卒業後、コンサルタントとしてECサイト運営会社を起業すると同時に不動産コンサルタントとしても業務を開始。区分所有建物の資産価値マネジメントに従事するため、2008年より住友不動産建物サービス株式会社、2013年より株式会社東急コミュニティーにて区分所有建物の共用部分・専有部分のマネジメントに従事した後、不動産の資産性を流通の側面から評価するために、2018年にコンドミニアム・アセットマネジメント株式会社の設立代表に就任。2022年2月より株式会社MFS不動産投資事業部執行役員として不動産投資総合プラットフォームサービス・INVASEの事業責任者に就任。