社会人になって楽しみなものは、やはり毎月振り込まれる給与ではないでしょうか。頑張って働いて手にしたお金ですから、うまくやりくりして自分の好きなことにも使いたいものです。
ただし、新社会人のうちはあまり所得が多くはないのが普通です。それゆえに、支払いを先送りしたり、お金を前借りできたりする手軽で便利なサービスが魅力的に見えてしまうでしょう。そこで本稿では、「リボ払い」や「キャッシング」など、仕組みを知らないと痛い目に遭いかねないサービスについてご紹介します。
「リボ払い」のシステムとは
新社会人の皆さんにまず知っておいていただきたいのは、「リボ払い(リボルビング払い)」というクレジットカードの支払い方法です。似たものとして「分割払い」がありますが、両者の違いは一体どこなのでしょうか。
リボ払いとは、クレジットカードの利用金額や利用件数に関係なく、毎月の支払いがあらかじめ自分で設定した金額に固定される方法です。お金を使い過ぎても、月々の支払い金額は一定であるため、支出を把握しやすい点がメリットと言えます。例えば、月々5,000円のコースに設定すれば、基本的にはどれだけ買い物をしても毎月の支払いは5,000円で済むということです。
一方の分割払いは、買い物ごとに支払い回数を指定する方法です。少ない回数で支払いを終わらせようとすれば、その分毎月の支払い金額が大きくなります。例えば、30万円の買い物をして3回払いなら、月々の支払い金額は10万円+手数料。5回払いなら、月々の支払い金額は6万円+手数料となります。また、リボ払いと違い、買い物をするたびに月々の支払い金額がかさんでいきます。
ここまでの内容だけを見ると、毎月の支払いが一定であるリボ払いのほうが負担が少ないうえに管理もしやすく、利点が大きいように思えます。ただし、リボ払いにはデメリットも多く、安易に利用するのは危険なのです。
リボ払いのデメリットはいくつかありますが、まず挙げられるのは「手数料が高い」という点です。リボ払いでも分割払いでも、利用するには手数料がかかります(分割払いは2回まで手数料無料)。分割払いの場合、手数料は商品単体に対して実質年率〇~〇%という形でかかります。一方のリボ払いの手数料は、毎月の支払い金額に関係なく、支払い残高全体に対してかかります。
例えば、初めに3万円の買い物を、次に4万円の買い物をしたとすると、リボ払いの場合、手数料はこの2回の買い物の購入額を足した7万円に対してかかることになります。リボ払いで毎月の支払い金額を安く設定していると、支払い残高がなかなか減りません。そのため支払い回数が増え、高い手数料を長く支払い続ける危険があるのです。
リボ払いのデメリットは他にもあります。リボ払いは支払い金額が一定で管理がしやすい反面、「自分がお金を使い過ぎていても気付きにくい」という点です。加えて、リボ払いには、支払い残高が一定金額を超えると毎月の支払い金額が上がってしまう方式もあるので注意が必要です。
リボ払いは手軽に使えますし、一定期間内であれば1回払い等を選択した利用分をリボ払いに変更できるサービスもあります。しかし、便利な反面、リボ払いの使い過ぎで返済が難しくなったという声は少なくありません。リボ払いは、基本的には使わないのが賢明でしょう。
お金を前借りできる「キャッシング」
リボ払いと並んで、もうひとつ注意しておきたいのが「キャッシング」です。クレジットカードには、買い物に使う「ショッピング利用枠」の他に、ATMなどから現金を借りられる「キャッシング利用枠」というものがあります。
キャッシングは、急な出費が発生した時などに、すぐに現金を引き出すことができるサービスです。返済方法は、翌月1回払いかリボ払いが選べますが、キャッシングは1回払いでも必ず金利手数料が発生します(ショッピングの1回払いは手数料無料)。キャッシングの上限額をクレジットカードの申し込み時や申し込み後に希望すると、審査によって利用枠が設定されます。
社会人になって日が浅いうちは、もらった給与のやりくりがうまくできず、給料日前には金欠になることも考えられます。そんな時はキャッシングに頼ってしまいたくなることもあるでしょう。しかし、キャッシングと言っても、要は将来にツケを回す借金なのです。「自分は大丈夫」と思っていても、現金をすぐに手にできることからキャッシングを繰り返して返済に困るケースは多いものです。場合によっては「キャッシングは使わない」と初めから自分でルールを作っておくのもいいかもしれません。
口座残高以上の無理な買い物はしない
リボ払いもキャッシングも、テレビCMなどで目にする機会が多く、ついつい安心感を抱いて仕組みを詳しく知らないまま利用してしまう人がいます。確かに、どちらも金銭的に苦しい時には便利なサービスです。それに、リボ払いは高いポイントがもらえる場合があり、計画的にお金の管理ができる人にはメリットもあるでしょう。
ただし、「今あまりお金がないからリボ払いで」という安易な気持ちで使うと、後々返済が家計を圧迫する恐れもあります。新社会人の皆さんはぜひ、「自分の銀行口座にある金額以上の買い物をしない」ということを基本に、上手なお金の使い方を心がけてください。
武藤貴子
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント
会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。