健康を維持するには何を食べ、どんな運動をすれば良いのか。根拠の不確かな情報に翻弄されるよりも、健康長寿の人たちの生活習慣をマネするほうが賢明なはず。

本連載では、『世界一長寿で幸せな村 イタリア ピオッピ式 最高の長生き術』(わかさ出版)から、イタリア南部の長寿村、ピオッピ村の人々の生活習慣にならい、毎日多忙な社会人でも効率よくヘルシーになれる方法を紹介する。

  • 卵の栄養効果を知っていますか?

卵は1日1個以上食べてOK

前回の記事では、ピオッピ村の人々の長生きの秘訣として、常食しているオリーブオイルやナッツなどに含まれる"良質な油脂"に注目した。では、他にどんなものを食べれば、効率よくヘルシーになれるのだろうか?

オリーブオイル、ナッツに続いて本書が「毎日摂取」を推奨しているのが、卵だ。その摂取量の目安は「週に最低でも10個」、つまり、1日1〜2個食べることを勧めている。

  • 『世界一長寿で幸せな村 イタリア ピオッピ式 最高の長生き術』(わかさ出版)

コレステロール値は下げても意味がない?

卵というと、特にコレステロール値が高いと診断されている場合は、食べ過ぎないよう気を付けている人も多いかもしれない。血中のコレステロール値が高くなると、動脈硬化を引き起こして、心臓病などの心疾患を招く恐れがあるといわれている。

しかし著者によると、近年行われた研究では、総コレステロール値やLDL(悪玉)コレステロール値の高さと心疾患との間には関連性が見つからず、むしろ値が高いほど死亡率が下がるという研究結果もあったそうだ。

2016年に世界中の7万人近くの60歳を超えた人々(心臓発作を起こしやすい年齢層)を調査してデータを集めた研究によれば、LDLコレステロールと心血管疾患の間には何の相関もないばかりか、LDLコレステロールとあらゆる死因による死亡との間には、逆の相関が見つかったらしい。

つまり、60歳を超えれば、LDLコレステロール値が高ければ高いほど、死亡率はむしろ下がるということだ。

また、心臓発作で入院した13万人の患者を対象にしたアメリカの最大規模の研究では、患者の75%は、総コレステロール値もLDLコレステロール値も正常だったそう。一方で、メタボリックシンドロームの基準を満たしていた患者は66%に上り、これが心臓発作の最も有意義なリスク因子だったことが分かった。

著者によれば、これらを含む近年のさまざまな研究は、コレステロール値を下げる食事療法や薬物療法にはあまり意味のないことを示唆しているという。

卵はパーフェクトな高栄養食品

そもそも卵は近年の研究から、コレステロール値に悪影響を及ぼさないどころか、心血管疾患の発症リスクを低下させることが分かっている。本書によると、卵は1日3個までなら安全であるとのこと(ただし、高コレステロール血症の人やその疑いのある人は取り過ぎに注意したい)。

卵のコレステロールよりも注目したいのは、豊富に含まれる栄養素だ。9種全ての必須アミノ酸に加え、ビタミンA、D、E、K、B2、B5、B6、B12、葉酸、カルシウム、亜鉛、コリン……と挙げればきりがない。

完全たんぱく質の供給源であり、ビタミンなどの健康促進成分をひととおり揃えていて、生活習慣病を予防する働きのあるオメガ3脂肪酸も含まれている。おまけに味も良く、値段もお手頃。まさにパーフェクトな食品だ。

卵というとコレステロールの観点から良くないイメージを持っていたかもしれないが、その栄養素に注目すると、こんなに効率よく栄養を摂取できてヘルシーになれる食品は他にないといっても過言ではない。オリーブオイル、ナッツ、卵……忙しい社会人を救うコスパの良いヘルシー食材は、他にもまだまだたくさんある。次回も紹介したい。