デジタルになって、その場で成否がわかるようになった流し撮り。チャレンジしやすくなった一方で、新たな注意点も発生した。それも含め、列車の流し撮り応用編として、斜め方向の手持ちでの流し撮りについて、マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズの長根広和さんにうかがった。
NDフィルターで絞りボケを回避
「今回の流し撮りが、今までのこの連載の中でいちばん難しいんじゃないかな」と前置きをする長根さん。まずは今回の記事を読む前に、流し撮り入門の連載18回目と19回目を読んでいただきたい。また、「真似事でいいから流し撮りをしてみたい」という方は、今回の欄外のコラムを参照のこと。
長根さんの流し撮りは、ほとんどが手持ち。どんな線路の形にも対応できるからだ。構図、レンズを決めた後、露出を決定する。240km/hくらいのスピードで走っている新幹線を流すのに適したシャッタースピードは、1/125(ちなみに在来線の場合は1/60以下)。シャッタースピード優先モードで、絞り値を決定すればよい。
ただし、絞りがF22などと大きな数字になったら要注意。デジタルカメラ特有の現象"絞りボケ"が起こる恐れがあるからだ。絞りボケとは、画面全体がにじんだようになってしまう現象で、絞り値がF11よりも大きくなると発生しやすい。「そこで、F8かF11で希望のシャッタースピードを得るために、NDフィルターを使います」と長根さん。NDフィルター(減光フィルター)とは、カメラに入る光の量を少なくするフィルター。3絞り分暗くなる"ND8"くらいが便利である。
連写は秒間5コマ以上が成功の目安
長根さんの流し撮りは、目標物(この作品の場合はライト)が、光学ファインダーの中の一点で止まった状態になるように、カメラをパンしながら連写するというもの(下のイラスト参照)。「遠くに列車が見えてきたときからずっとカメラをパンし続け、いい場所に来たら連写し続けます」。
ここで気を付けたいのが、カメラの連写性能だ。長根さんは、秒間10コマの連写ができるフイルムカメラを使用している。しかし、デジタル一眼レフでは、上級機でもここまでの連写が出来るものは限られている。「連写が秒間5コマ以下だと、タイミングが合わない可能性が高くなります。最もいいところでのワンショットを狙いましょう」。また、ファインダーは、昔ながらの光学ファインダーがベストとのこと。かなり敷居が高い新幹線の流し撮り。「うまく決まればかっこいいけど、なかなかねぇ」とプロも苦笑する。しかしめげずにいつかはトライしてもらいたいものだ。
筆者、携帯カメラで流し撮りに挑戦
事前に自分の携帯カメラの液晶ビューとシャッターのタイムラグを熟知しておくこと、本体をしっかりと持つこと(構え方は連載24回目を参照)が必須。目標物(この場合は車両ドア横のブルーの四角部分)が画面の中の一点で止まるようにカメラをパンするというコツは、カメラの性能に関わらず同じ。
とりあえず「流れた! 」という感覚は味わえたが、鉄道を表現できているは言えず、作品と呼べる画質は得られない。と、プロに指摘される前に自分で書いておこう。