雪は、平凡な景色を輝かせる冬のマジック。いつもの見慣れた駅でも、雪の朝には撮影したくなるものだ。駅を利用する人と絡めて、生き生きとした駅の鉄道風景を撮影するコツと、白トビの防ぎ方、雪景色の露出の基本をマシマ・レイルウェイ・ピクチャーズの長根広和さんにうかがった。
平日の朝、構内踏切がある駅を狙え!
「雪は、いろいろなものを隠して駅の見栄えをよくしてくれます」と長根さん。この朝の気温はマイナス10℃以下だったとのこと。なお、寒冷地での撮影の装備は、連載8回目を参考に。
「人がいてこそ駅」と考えるプロは、平日の朝にこだわる。ローカル線の駅で確実に人の姿を期待できるのは、中高生が登校する時間帯。「通学生はたいてい、7~8時台の1、2本の列車に集中して乗ります。それを逃すわけにはいきません」。ちなみに、中高生の帰宅はバラバラになるケースが多いとのこと。
そして、人々が雪をかぶった線路の上を歩く様子を撮影できる駅には条件がある。構内踏切があり、そこを必ず乗客が通る構造になっているということだ。さらに最も大切なのが、それらを遠望できる撮影地があること。「列車で移動しながら撮影地を探し、列車がある駅の撮影をするのは、時間にかなりの余裕がないと厳しいです」。まるで汽車旅の途中に撮影したかのような作品だが、このような撮影はほぼドライブになるのだ。
シャッターを切るタイミングは、歩いている人の配置がよく、さらに足がハの字になったとき。とはいえ、これはコントロールのしようがない。「なかなか決まりませんが……、たくさんシャッターを切りましょうね」と苦笑する長根さんだった。
白トビを防げ! 露出はアンダーが基本
さて、「人のドラマよりも、雪がある駅と列車を確実に撮りたい」という読者もいるだろう。雪と列車というシチュエーションでの露出は非常に難しいが、「デジタルで駅の風景と絡めて撮るのなら、列車が停車している間に好みの露出に試し撮りができますよ」という。なるほど、その通りだ。
また、最近のデジタルカメラには白トビを防止する機能が付いたものがある。カメラによって呼び方が違うが、ダイナミックレンジ、ラチィチュード等の語句が使われている機能やモードを調べてみよう。これは、白い列車の撮影にも便利な機能だ。
白トビを防止したい理由は、デジタルカメラでは「真っ白=色のデータなし」となってしまうから。後から加工したくてもどうにもならない。「できるだけたくさんのデータを残すために、わからなかったらとりあえずアンダーに撮っておきましょうね」。
そう言いながらも「露出の勉強にならないな」と苦笑するプロ。長根さんが雪景色の露出を決定するときに基準にしている値は「TTL(カメラが適正と判断した絞り値)より3分の2開ける」。連載9回目にも書いたので、この記事と合わせて参考にして欲しい。
筆者は昨シーズン、この「TTLより3分の2開け、モニターをみて微調整」を実践したが、あらゆる雪の状況に素早く対応でき、確実だった。撮影モード百花繚乱の今だからこそ、鉄道写真においては基本的な露出を使いこなすことをおすすめする。
3年前に発売された初心者向けデジタル一眼レフカメラのプログラムAEモードで撮影。