似たようなモノやサービスが溢れている現代。その中から選ばれるためには、「ブランディング」の考え方が不可欠です。そしてそれは、モノやサービスだけに限らず、個人にも同じことが言えるでしょう。

本連載では、ブランディングプロデューサーとして活躍されている後藤勇人さんに、「パーソナルブランディング」についての基本的な考え方を伺います。これからの時代に、あなたが“その他大勢”の中から抜け出し、自分らしく生きていくためのヒントが見つかるかもしれません。

「個人をブランド化する」とは?

早速ですが、皆様は「ブランディング」という言葉をご存知ですか?
今でこそ「ブランディング」という言葉はある程度浸透してきているので知っている人も多いかと思いますが、元々は「ブランド」という言葉から生まれた単語です。それでは、「ブランド」の語源はご存知でしょうか?

「ブランド(brand)」という言葉は、放牧されている家畜に焼き印を押す行為から生まれた言葉であり、中世の北欧民族の言葉「brander(焼き印を押す人)」から派生したと言われています。

牧畜家は、自分の家畜であるという所有の証として、家畜に焼き印を押していました。その焼き印を見れば、誰が所有しているのかがすぐに判別できるというわけです。このように、「ブランド」は“他者との差別化”を意味する言葉となりました。

それでは、「パーソナルブランディング」とはいったいどんなことを指すのでしょう?

一般的なイメージで、「ブランド」という言葉は、バッグや洋服など、ファッション業界の高級品メーカーの名前を指す場合が多いかと思います。一方、「パーソナルブランディング」というのは、一個人に対して使う言葉です。

つまり「パーソナルブランディング」とは、一個人を他の個人と比べたときに、何か特別に秀でた魅力や強みを持たせ、他の個人と圧倒的に差別化された存在である状態を作り上げる手法のことをいいます。

ここで、ひとつ例を挙げて考えてみましょう。
「佐藤さん」という弁護士がいるとします。佐藤という名字は日本で一番数が多く、188万7,000人いるとも言われています(出典:名字由来net)。ですから、佐藤さんという名前の弁護士も日本に多く存在すると推測されます。

この状態での佐藤さんの呼ばれ方は「弁護士の佐藤さん」ですが、これではその他多くの「佐藤という名前の弁護士」とは差別化できません。しかし、その佐藤さんが次のような特徴を持っていたらどうでしょう?

例えば、佐藤さんが離婚問題に特化した専門的な強みを持っていて、その分野の専門家として離婚についての書籍を世に出し、さらに頻繁にテレビにも出ているという事実があるとしましょう。そうすれば佐藤さんは、ただの「弁護士の佐藤さん」から、「離婚問題専門の本も出版してテレビにもよく出ている佐藤弁護士」となり、その他大勢の佐藤弁護士から一歩抜け出した存在になります。
この状態のことを、“ブランディングできている状態”と呼びます。

さて、話を戻します。
「パーソナルブランディング」とは、一個人が“自分自身で”その他大勢の中からブランディングできた状態の自分を作り上げることを言います。

この手法は、個人事業主やフリーランスの場合はもちろん、一会社員であっても使えるものです。つまり、一会社員であっても、その他大勢の中から抜け出す自分だけの特化した強みを磨けば、選ばれる存在になることができるのです。

例えば、営業のクロージングがとても上手い人は、クロージング率が高い〇〇さん。
会議の進行役が上手な人なら、ファシリテーターをお願いしたい〇〇さん。
セールスレターを書かせたら天下一品の人は、売れるセールスレターを生み出す〇〇さん。
クレーム対応が得意なら、クレームさえもファン獲得のチャンスにつなげる〇〇さん。
と、こんな感じです。

さらに、副業が解禁された時代では、自分が磨いた強みを新たな収入源にできる可能性も出てきます。会社に限らず、他のターゲットに向けてその強みをレクチャーすれば、パラレルキャリアの一つとして副業コンサルタントという道も開けるでしょう。

実際に、自分の強みを見つける手法もいくつかあります。以下にそのポイントを列記しますので、自分の強みが思い当たらないという人はチェックしてみてください。

・過去苦手だったが、現在克服したこと
・普段何気なくやっていることでも、周りの人から「ありがとう」と感謝されること
・人からよく依頼されること
・自分の得意なこと
・時間を忘れて没頭してしまうほど好きなこと

このようなものの中に、自分のブランドとなる強みが隠れていることがよくあります。まずは、「パーソナルブランディング」の第一歩として、自分の強みを見つけるところからスタートしましょう。

この部分が確立できれば、会社員ならばその会社の中でブランディングされた自分ができあがり、余人をもって代えがたい存在になれるでしょう。何か特化した強みがあれば、その部分を他社から評価されて、さらにランクアップした企業からのハンティングの対象にもなるでしょう。

また、フリーランスでも個人事業主でも、上述した弁護士の佐藤さんのように、その他大勢の同業者から差別化されて、選ばれる存在となります。

どうぞ、「パーソナルブランディング」で自分を磨き上げる努力をしてみてくださいね。
あなたが、その他大勢から抜け出し、選ばれる存在になる日もそう遠くありません。

■ 筆者プロフィール: 後藤勇人 (ゴトウハヤト)

一般社団法人「日本女性ビジネスブランディング協会」代表理事。
専門学校卒業後、24歳で最初のヘアサロンを開業。32歳までに、ヘアサロン、日焼けサロン、ショットバーなど、グループ4店舗を展開し、年収2,000万円達成。1億円の自社ビルを建設する。
その後、「グレコ」で有名な世界のギターファクトリー「フジゲン」創業者・横内祐一郎氏の総合プロデューサー、元ミスワールド日本代表のビジネスブランディングプロデュースを経て、一個人や会社のブランドをつくるブランディングプロデューサーとして活躍。
著書に『成果を出す人、出せない人との大きな違い その「1分」を変えなさい!』(実業之日本社)、『世界一の会社をつくった男』(中経出版)、『最強の社員マネジメント』(総合法令)など。
オフィシャルブログオンラインサロンメルマガも運営中。