Chromebookは、2013年にブラウザーアプリと同じ仕組みを使ったChromeアプリを実行するプラットフォームとして発表された。そのOSがChromeOSである。今では、主要なアプリはAndoridアプリとなり、さらにLinux実行環境(Crostiniと呼ばれる)を搭載してソフトウェア開発にまで利用できるものになった。筆者の印象は、「バリ」がすごい外国製のプラモデルといったところ、特徴的ではあるものの、まだまだ「荒削り」なところがある。

  • 窓辺の小石 - Chromebookを使う

    写真01:

Chromebookで筆者が着目しているのは、Linuxアプリケーションの実行環境である「Linux開発環境(ベータ版)」だ(長いので開発時のコード名を使ってCrostiniと表記する)。Chrostini、最大の特徴はLinux GUIアプリケーションが利用可能だという点だ。この点は、WindowsのWSLと大きく違う。WSLも将来的な計画としては、Linux GUIアプリケーションを利用可能にするようだし、今でもWindows側でX Serverを起動すれば、GUIアプリケーションは動かせないわけでもない。しかし、Chromebookでは、簡単にLinux GUIアプリが利用できる。しかし、Crostiniで動くLinuxディストリビューション(Debian)は、英語環境のままだ。このため、日本語のための設定を行う必要がある。その他ChromeBookのタブレットモードで表示されるタッチキーボードは、Linux環境には対応していないのでピュアタブレットのChromebookではUSBキーボードなどをつなぐ必要がある(こんなところが荒削り)。

Crostiniに日本語IMEを入れる

Crostiniは、仮想マシンを使い「コンテナ」内で実行されるため、ChromeOS側に影響を与えることなく、任意のアプリケーションが利用できる。ChromeOS側でダウンロードしたDebianパッケージ(.debファイル)を直接Crostiniにインストールする、Linux GUIアプリケーションのアイコンがChromeOSのラウンチャーに自動登録されるといった「統合」機能も持つ。

CrostiniがChromeOSに影響しないということは、逆にいうと、Crostiniの中では、ChromeOSの機能が利用できない。特に問題になるのは、Linux GUIアプリケーションの日本語入力に、ChromeOSの日本語IMEが使えないことだ。このため、Crostiniを使うなら、Linuxの日本語IMEをインストールしておく必要がある。ここが、Crostiniを使う場合の「山場」だ。これさえ済ませれば、アプリのインストールはそれほど難しくない。

Crostiniは、「設定」の「詳細設定 ⇒ デベロッパー ⇒ Linux開発環境(ベータ版)」で有効化する。「ターミナル」を開けば、Debianのコンソールが開く。とりあえず、GUIエディタとしてVS Codeをインストールする前提で、Crostiniに日本語IMEを入れてみる。

コンソールで(リスト01)のコマンドを実行する。入れるのは、googleの日本語入力と同系のかな漢字変換エンジンであるMozcをLinuxのインプットメソッドフレームワークfcitxに対応させた「fcitx-mozc」である。なお、インストールコマンド(sudo apt install……)にgnu-keyringが含まれているのは、あとでインストールするVS Codeに必要だから。nanoは、テキストエディタである。もちろん、Linuxは使い慣れてるというのであれば、好きなエディタを使っていただいてかまわない。


リスト1
sudo apt update
sudo apt upgrade
sudo apt install task-japanese locales-all fonts-ipafont gnu-keyring fcitx-mozc nano -y
sudo localectl set-locale LANG=ja_JP.UTF-8 LANGUAGE="ja_JP:ja"
source /etc/default/locale

その後、/etc/systemd/user/cros-garcon.service.d/cros-garcon-override.confを編集して日本語IMEを各種GUIフレームワークに登録する。具体的には、以下のコマンドでnanoエディターを起動して、(リスト02)のテキストをファイル末尾に挿入する。

sudo nano /etc/systemd/user/cros-garcon.service.d/cros-garcon-override.conf

リスト2
Environment="GTK_IM_MODULE=fcitx"
Environment="QT_IM_MODULE=fcitx"
Environment="XMODIFIERS=@im=fcitx"

入力が終わったらCtrl+O、Ctrl+Xでnanoを抜ける。最後に以下のコマンドを実行して、Crostiniが起動するたびに日本語IMEが起動するようにする。nanoエディタで~/.sommelierrcを編集してもかまわない。このファイルはCrostiniの起動時に実行されるスクリプトを記述するもので「sommelier」はCrostiniのウィンドウマネージャーのコードネームである。

echo "/usr/bin/fcitx-autostart" >> ~/.sommelierrc

ここでCrostiniを再起動する。画面の下などにある「シェルフ」にあるターミナルアイコンを右クリックして「Linuxをシャットダウン」を選択して、そのあと、再度ターミナルを開く。これでMozcが起動するはずである。

最後にMozcの起動登録を行う。コンソールで「fctix-configtool」を起動する(写真02)。ウィンドウ下の「+」ボタンを押してダイアログボックスを開く。下の検索欄に「mozc」と入れると上のリストに「Mozc」が現れるのでこれを選択してOKボタンで抜ける。これでIMEの登録が完了だ。

  • 写真02: 設定の最後にターミナルからfcitx-configtoolを起動して、mozcを日本語IMEとして登録する

Visual Studio Codeをインストールして試す

Visual Studio Code(以下VS Codeと表記)は、Microsoftのオープンソーステキストエディタだ。ダウンロードページから適当な.debファイルをダウンロードする。

・Download Visual Studio Code - Mac, Linux, Windows
https://code.visualstudio.com/download#

x64(IntelやAMDの64bit CPU)の場合には、「64bit」(正式にはamd64)を選択する。Chromebookのブラウザからダウンロードした.debファイルは、「ファイル」アプリで「ダウンロード」を開くとあるはずだ(写真03)。ここでダウンロードした「code_1.55.0-1617120720_amd64.deb」(バージョン番号はダウンロードするタイミングで異なる)をファイルアプリでダブルクリックして開くと、ダイアログが開きインストールが行われる。インストールされたVS Codeは、ChromeOSのラウンチャーの「Linuxアプリ」の中にある(写真04)。これを開けば、VS Codeが起動する。編集領域で「Ctrl+Space」と打てば、カーソル下に「Mozc」と表示が行われ、日本語入力が可能になるはずだ(写真05)。また、Mozcの設定などは、以下のコマンドで起動できる。

/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialg
  • 写真03: ChromeOSの「ファイル」でダウンロードした.debファイルを開くと、パッケージファイルの情報が表示され、Crostiniへのインストールのダイアログが開く

  • 写真04: Crostini側にGUIアプリケーションがインストールされると、自動的にChromeOSのラウンチャーの「Linuxアプリ」にアイコンが登録される

  • 写真05: インストールしたVS Codeを起動し、編集エリアでCtro+Spaceを打てば、日本語入力モードとなる

クラウドサービスだけで話が済めば、Chromebookのブラウザを使えばいいのだが、実際には、描画や編集といったツールが使いたくなるだろう。こうしたとき、やっぱりスマートフォン向けに作られたアプリでは力不足を感じることが少なくない。そんなときには、Crostiniを日本語化して使うといいだろう。