• マイノリティ・レポート

9月に入って、いきなり入院になってしまい、ニュース記事のチェックがほとんどできなかった。このためREALFORCEキーボードの「R3セパレートスペースキー」モデル(R3HI17)(以下セパレートスペースキーモデルと表記)の登場に気がつかなかった。今回は、このモデルについての「少数派からのレポート」である。というのは、恐らく、筆者のような使い方をしていないと、2つにわかれたスペースキーのメリットには気がつかないのではないかと思うからだ。

セパレートスペースキーとは

セパレートスペースキーモデルとは、スペースキーが2つに別れていて、キーとしてはそれぞれが別扱いになっているものだ。このため、カスタマイズで個別のキースキャンコードを割り当てることが可能になる。

基本的な違いは、この部分で、その他の部分は、REALFORCE R3シリーズのハイブリッド版(Bluetooth搭載モデル)とおなじである。ただし、カラーはブラック系、キー荷重は45g、キートップは昇華印刷のみで、テンキーのついたいわゆる109配列しか選択できない。

正直にいうと、筆者は、テンキーのついたキーボードがちょっと苦手だ。というのは、モニター、キーボードのフルキー部と体の中心を合わせたとき、キーボード自体のセンターが左に寄ってしまい、配置がアンバランスになるからだ。何かデメリットがあるわけではないのだが、左右が対称になっていないので、心がザワザワする。我慢できないほどでもないが、逆にテンキーがなくても困らないので、心の安寧を保つためにテンキーのないタイプを選ぶことにしている。

専用アプリケーションREALFORCE R3 Softwareを使うことで、スペースキーを2つの異なるキーとすることができる。筆者は、右側のスペースキーを変換キーに割り当てた。

まず、これでソフトウェアを併用して親指シフトキーボードとして動作させることができる。ただ、これについては、興味のない人には、何の役にも立たない情報なので多くは控えさせていただくが、Yamabuki Rとの組合せで親指シフトキーボードとしては最高の使い心地だった。

筆者は、日本語変換をスペースキーと変換キーの2つのキーだけで行う方法を使う。この方法では、英数入力はIMEオフで行う。日本語入力では単文節での変換を基本として、同音異義語の選択は、変換キーの連打で行う。通常の入力であれば、親指を「スペースキー」と「変換キー」から移動させる必要がなく、変換操作を最小限にできる(表01)。これについては過去に記事にした。

  • ■表01

こういう仕事をしていると、ときどき、キーボード入力速度がボトルネックになって、頭に浮かんだ文章が消えてしまうことがある。こうした事故を防ぐため、変換処理をできるだけ簡易にするために考えたのがこの入力方法である。

現在のIMEでは、複数の文節を入力してもかなりの確率で正しく変換できる。しかし、文節切り直しが必要になる、途中の文節の変換が正しくない、といった可能性はゼロではなく、低いといっても毎日文章を書いていれば、それなり確率で遭遇する。こうした問題を回避するには、単文節で入力し、同音異義語の変換を連打で行うようにするしかない、というのが筆者の結論である。なお、最近のIMEでは、過去の入力から、推測変換の提案があるため、必ずしも入力効率が悪いわけでもない。

セパレートスペースキーモデルは、こうした手法を使うのに最適な配列である。設計された方には何らかの意図があったはずだが、筆者としては、自分のために作られたものとしか思えない製品である。

REALFORCE R3 Software

REALFORCEは、第三世代に当たるR3やRC1世代では、専用ソフト「REALFORCE R3 Software」で、キーボードのスキャンコードの割り当てが行える。複数のR3シリーズやRC1でもおなじソフトウェアが使えるのは便利なのだが、キー割り当てなどを移行できるとありがたかった。

現時点では、キー割り当ては、REALFORCE R3 Softwareのウィンドウ右上のミートボールメニュー(3つのドットがならんだアイコン)から開くメニューにある、プロファイルマネージャー(写真01)でprfファイルとしてエクスポートができるのだが、インポートができるのは同一機種に限られる。

  • 写真01: REALFORCE R3 Softwareのウィンドウ右上にあるミートボールメニューから、プロファイルマネージャを起動することで、キー割り当てなどの情報をファイルに保存できる

ちょっと調べてみると、prfファイルは、zipアーカイブされた2つのXMLファイルだった(WSLのfileコマンドで調べることができる)。profile.~.xmlファイルには、キー割り当てが記録されているようだ。時間がなくて、KeyMappingのパラメーターの意味や機種間での違いなどを調べることができず、キーごとの情報を取り出すのに止まった(リスト01)。

■リスト01


# プロファイルはユーザーのドキュメントフォルダ以下に入る
cd C:\Users\user01\ドキュメント\Topre\REALFORCE_R3_Software\Profile
Expand-Archive .\R3HI0002.prf
# R3HI0002フォルダに解凍されたxmlファイルが入る
$R3HIxml=[xml]::new()
$R3HIxml.Load("C:\Users\user01\ドキュメント\Topre\REALFORCE_R3_Software\Profile\R3HI0002\profile.R30I.xml")
$R3HI0002keyList=$R3HIxml.UserProfileR3_File.keytopList.KeytopEntry | % { [pscustomobject]@{ Name=$_.name; Type=$_.type; Code=$_.code;KeyMapping=$_.keymapping.int; ApcLevels=$_.ApcLevel.apclevel } }

ccccccvbこういう構造になっているところを見ると、異機種間でキーマッピングを交換することは不可能ではなさそうだ。もっとも、ハードウェア的な制限(マッピングのコードが機種間で意味が異なる)や機種により割り当て可能なパターン数が異なるなど、簡単には、いかなさそうである。こちらは、今後に期待としておきたい。なお、プロファイルに関することは、あくまでも筆者が調べたものであり、公式な情報ではないと釘を刺しておきたい。

今回のタイトルネタは、フィリップ・K・ディックの「The Minority Report(1956)」(ハヤカワ文庫SF ディック短編集 マイノリティ・レポート収録)である。映画化されたので、ご存じの方も少なくないはず。だが、小説と映画はストーリーが異なり、印象も違う。