• チャーリー、転送を頼む

AndroidスマートフォンとChromebookの間では、Googleの“Nearby Share”(以下ニアバイシェアと表記)を使ったファイル共有が可能だ。ニアバイシェアは、2020年にNFCを使うAndroid Beamの後継として登場した。Android 6以降で動作する。このニアバイシェアに、Windows用アプリ「Nearby Share Beta for Windows」(写真01。以下Windows版ニアバイシェア)が登場した。今回は、これを試してみた。結論からいうと、WindowsとAndroidスマートフォンの間では、相互にファイルの転送が可能だった。Chromebookでは、Windowsからファイルを送信することはできたが、ChromebookからファイルをWindowsに送信することができなかった。

  • 写真01: Windows版ニアバイシェアで、画像ファイルを送信しようとしたところ。ファイルを指定すると、近隣のデバイスを表示する。クリックでそのデバイスへファイルが送信される

これまで、Android、Chromebook、Windowsの間では、複数の方法でファイルの転送を行なうことができたが、それぞれに一長一短があった(表01)。これまで、ニアバイシェアは、同社の製品であるAndroidとChromebookの間に限られていたが、Windowsアプリがこれに加わった。これでAndroid、Chromebook、Windowsのファイル転送問題が解決かとおもったが、やってみると、ChromebookからWindowsへの転送ができない。Windows版ニアバイシェアは、送信時にChromebookを見つけることができる。しかし、Chromebookからファイルを送信しようとすると、Windowsマシンを見つけることができなかった。設定をいろいろと変えてみたが、結果は変わらなかった。Windows版ニアバイシェアは、現時点ではベータ版であることを考慮すると、必ずしもこれが仕様であるとは確定できないが、Chromebook側に問題がある可能性も否定できない。

・The New Nearby Share Beta App for Windows(英語)
https://android.com/better-together/nearby-share-app/

  • 表01

さて、Windows版ニアバイシェアだが、現状ARMプロセッサは非対応、64 bit版のWindows 10/11で実行が可能だ。また、利用には、BluetoothとWi-Fiが必要で、Windowsの起動時に常駐するようになっている。

最初に送信元を限定するための受信設定をアプリページ右側で行なう。送信元を制限するものだが、実際には、相手に自分のデバイスが見えるかどうか(可視性)を設定する。ここは簡易設定で、設定ページに「デバイスの公開設定」がある。ノートPCなど持ち歩くマシンに関しては、「自分のデバイスからのみ」などにしておくのが無難だろう。これは、同一のGoogleアカウントでログインしているデバイスのみから受信を可能にする。

Windowsから送信するときには、ドラッグ&ドロップやダイアログでファイルやフォルダを指定できる。その後Bluetoothの到達範囲内の候補となるデバイスが表示される。このとき受信側には、ニアバイシェアの通知が出て、そのタップで受信体制に入る。送信先デバイスによっては、ペアリングを求められることもあった。送信時にデバイスが見えるかどうかは相手側の設定に依存する。デバイスを選択すると送信が開始される。

どのデバイスでも受信時は確認が行なわれる。一度、受信を許可すると、同じGoogleアカウントからの2回目以降の送信、受信では確認をしない。ただし、この許可はデバイス単位で記憶されているようだ。

複数機種で試してみたところ、動作に不安定なところがあり、デバイスが見つからない、接続や転送がエラーになるなどがあった。Windows版ニアバイシェアの再起動で回復することもあるが、そうでないこともある。何かデバイス同士の相性のようなものを感じる。皆無ではないが、Android同士では、ほとんどエラーにはならない。Windows版ニアバイシェアがベータ版であること、およびPCに搭載されているBluetooth、Wi-Fiデバイスは、Androidと異なるベンダーの半導体が使われていることもあり、これらに起因する問題と考えられる。初回は、送信元、受信先の双方で操作が必要だが、一回転送が許可されると、2回目からは、送信側の操作だけで転送が完了する(設定やAndroidのバージョンに依存)。フォルダ単位でファイル転送も可能で、使い勝手は悪くなかった。

今回のタイトルの元ネタは、米国のテレビドラマシリーズ、“Star Trek”で転送を要望するときのKirk船長の有名なセリフ「Beam me up, Scotty」(日本語吹き替え版では、チャーリー、転送をたのむ)である。機関主任のScott(愛称がSoctty)は、日本での放映時チャーリーと名前を変えられた。理由は定かではないが、米国での放映開始(1966年)以前に、日本では箱ティッシュ「スコッティ(Scottie)」(1964年)が発売されていたことが気になる。当時、米国のScott Paper社、Kimberly Clark社が日本に合弁会社(旧山陽スコット、旧十条キンバリー。現在はどちらも日本製紙クレシア)を作って、「スコッティ」や「クリネックス」を販売していた時代である(日本製紙クレシア社沿革)。米国企業は、当然、このセリフを知っていただろうし、日本の合弁会社もテレビCMなどでテレビ局との関係があったと想像できる。もちろん、確証はなにもない。