クライシス! (挨拶)
12月といえばクリスマス。いやが応にも街は華やいで電飾キラキラスパークリング☆皆さまいかがお過ごしですか? 私は毎日アドベントカレンダーを一つずつ開けてウキウキルンルンと25日を楽しみにしております。
さて、日本では「恋人の日」として数々のイベントがブチ上げられているため、この日に明暗が分かれる事例が後をたちません。「恋人だったらクリスマスは〇〇するよね! 」「クリスマスデートってことは本命!? 」という期待のもと爆死する女子の屍が山を作りますが、今回はクリスマス妖怪譚のうち3つをご紹介します。
1.「恋人はサンタクロース」! 幸せ絶頂のイブ明けが血の池地獄
バリキャリのA子は、彼氏と夏ごろ別れた後、友人の紹介でハイスペ外資コンサル彼氏をゲットし、お付き合いを開始。順調に関係を育む中、クリスマスは交際2カ月のタイミングでやってきました。
彼はコンサルタントらしく、クリスマスのプロジェクトマネジメントは完璧。A子に送られてきたクリスマスのスケジュールは24日夜にクリスマスコンサート鑑賞後、ホテルディナーという超・王道コース。この時点でA子のテンションは爆上がり。ロマンチックな夜を過ごせそうだと期待値MAXになりました。
その期待を裏切らず、当日のエスコートも文句なし。ディナーも終盤になったとき、彼から「これ、クリスマスプレゼント」と差し出されたのは指輪! しかもデート時にA子が「かわいいなぁ」とつぶやいたものを持ち前の記憶力で把握して調達するというサプライズ! だったそうです。その夜はめくるめく夜を過ごしたことは想像にたやすいですね。
そんなすてきな夜を提供してくれた彼に恋心も爆上がりし、「ユーミンはやはり神」と確信して迎えた25日。まだ早朝なのにも関わらず、彼はそそくさと帰り支度。「あれ? どうしたの? 」と尋ねると「今日俺、昼から彼女とデートだよ。いってなかったっけ」とまさかの一言が出たそうです。「は!? どーゆこと!? てゆーか彼女ってなに!? 」と目を白黒させるA子を尻目に、「その話は改めて」と出ていく彼氏(仮)。
まさかのオチにびっくりしすぎて、その瞬間は涙も出なかったA子。彼はもう一人の彼女とのデート後に説明責任を果たしに参上したそうです。誠実なんだか不誠実なんだか本気で意味不明ですが、真のプレゼントは思いがけない真実暴露。サンタさん、彼の本当の気持ちを教えてほしいの……と願ったけどこんな不都合な真実はいらない☆
2.曖昧な関係だった年下男子がイブのデートを打診! いよいよ本命に!?
スレンダーモデル美女のB美は彼氏が途切れないモテ女。しかし「ダメンズは作れる! 」を地でいくダメンズ育成マシーンとして有名でした。当時どハマりしていた年下くんは子犬顔なのにドSのワガママボーイ。M気質の彼女はそんな彼に尽くすのが幸せ! とせっせと通い妻をしていました。
最初は年下彼から「彼氏と別れて俺と付き合って」「浮気でもいいから」と、口説かれていたものの、いざ彼氏と別れると立場が逆転。「付き合ってるかどうかわからない」という曖昧関係に突入するお決まりコースで「THE都合のいい女」をひた走る状態に。彼に呼ばれたら行く・待ち合わせ場所で3時間待つ・彼の提案資料を彼女が徹夜で作る・貢ぐ、のフルスロットル。
「これだけやってて、しかも好きっていってたんだから彼女になれるよね……! 」という思いを日に日に募らせるB美に、珍しく彼から「12月24日あいてる? 」との連絡が。もちろん彼女は、普段先の予定を決めるなんてしない彼が日付指定での事前確認、しかもクリスマス! これはとうとう相手も正式交際を申し込んでくれるフラグ!? とテンション爆上がりです。
彼が欲しいといっていたものを事前購入し、クリスマスケーキも持って24日当日彼の家に向かった彼女。サンタさんよろしく大荷物で彼宅に行くと、「すごい荷物だね…? 」と目をぱちくりさせる彼。「え、今日クリスマスだし、お祝いじゃないの? 」と問いかけると、「え、28日までに提出しなきゃいけない資料あるんだよね。やってほしくて。俺今日くらいしかあいてないし、絶対来てほしかったから」と悪びれない様子。
その場で平手打ちして帰ってくればいいものの、そこは生粋のダメンズウォーカー。近くのレストランでお情けのクリスマスディナー後(もちろん会計はB美)、徹夜で資料精査したそうです。聞いてるこちらが吐血して倒れそうですが、その後もしばらく彼との関係が続いていたことの方がホラーかもしれません。
3.彼氏を楽しませるためにクルシミマス……孤独なディナーショーの開幕!
癒やし系のC世はほんわかした家庭的なタイプ。「普通のお嫁さん」に憧れて、彼氏に尽くす日々を送っていました。当時付き合っていた商社勤めの彼は実家もお金持ちの資産家かつ、学生時代から株で稼いでいたこともあり、同世代より格段にリッチ。そんな彼と過ごす2回目のクリスマスに「プレゼントなにが欲しい? 」と聞くと返答は、超絶無茶ブリな指令でした。
「僕はお金はある。欲しいものは自分で買えるから、物理的に欲しいものは特にない。だから僕が生涯忘れられないような感動的なクリスマスを演出してほしい。お金をかけたものではなくて、C世が考えたものがいい」
「プライスレスきたー! 」と思わずフリーズしつつも、「が、がんばるね! 」と答える彼女。なにをすればいいのか考えあぐねた結果、彼の友人やご両親からのビデオメッセージを作成し、当日は腕によりをかけたフルコース料理、ペーパークラフト教室に通って作り上げた渾身のクリスマスカードに書き連ねた愛のメッセージを準備。さらに、美しくメッセージを読み上げるため短期集中のボーカル講座にまで通う徹底ぶり。「え? 結婚式? 」というようなクリスマスイベントを作り上げました。
当日、彼女はイルミネーションで飾った部屋の片隅にあるサンタのズタ袋からコスプレで登場、というサプライズを経て、ビデオレター上映、一人パーカッション(どうやったんだ…)、愛の手紙のボーカル風朗読…と「彼氏のためのC世ディナーショー(無償)」を全力でやりきりました。
彼は大満足で、「プレゼントなんでも買ってあげるよ」と彼女を抱きしめたそうですが、報酬としてのプレゼントって違うよね? とこの事件をきっかけに疑問がさく裂。もちろん友人一同「やめろ」の大合唱で、このクリスマスから3カ月程度で破局を迎えました。今でもボーカル講座の広告を目にするたびにこのエピソードが思い出されてつらい。
結論:クリスマスは特別なんだから私も特別だよね? と考えるのはやめよう
いかがでしたでしょうか。これらの話を聞いたときは思わずグリューワインを吹きだし、真っ白なセーターがサンタさんカラーになったものです。どいつもこいつも「やめておけその男☆」としか言いようのない妖怪ぶりですが、「クリスマスは恋人たちの特別な日」という意識からあぶりだされた阿鼻叫喚ともいえます。
これだけクリスマスイベントが一般的になると「こんな素晴らしいクリスマスを共有できる私はきっと特別な存在なのだと感じました」となりがちです。特に女子はイベントごとや節目に「なにかあるかも! 」と期待をこめて爆死必死。ここまですごい出来事があぶりだされることはまれですが、勝手に期待してキレるという伝統芸はさけてくださいね。皆さまのもとに、妖怪ではなく心優しき天使のご加護がありますように。ぱぷりこでした。
<著者プロフィール>
ぱぷりこ
ブログ「妖怪男ウォッチ」の中の人。ラブ魔窟でエンカウントした妖怪男女と自意識の供養に全力を注いでいる。恋愛相談は最終的にすべて「うん、哲学しよ? 」に持っていく思考原理主義。女子会では、占い師呼ばわりされて終身恋愛顧問になるか、二度と呼ばれないかの二択。
はてなブログ「妖怪男ウォッチ」
Twitter: @papupapuriko (イラスト:谷口菜津子)