オフィスカジュアルの浸透と共に、定番化するビジネスリュック。2017年10月、スポーツ庁が「FUN+WALK PROJECT(歩きやすい通勤プロジェクト)」としてスニーカー通勤を提唱してから、通勤電車でビジネスリュックも見掛ける機会が増えてきました。
ただリュックを背負ったスーツ・ジャケット姿に違和感がない訳ではありません。「スーツにリュックは合わない」という固定概念を持つ世代がいたり、軍装や登山をルーツに持つリュックとジャケットでは、「性質」があまりにかけ離れたりしているからです。
そのため、ビジネスリュックには「コーディネートの工夫」が求められます。38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)の著者が、今回は「これさえ買えば『1週間乗り切れる』ビジネスリュック」についてお伝えします。
ビジネスリュックをスーツに合わせるには工夫が必要
ビジネスファッションのほとんどは、曲線ではなく直線で構成されています。「ジャケットの襟」や「ネクタイの剣先」、どれをとっても直線です。もちろん、「ラウンドカラーと呼ばれるシャツ襟」や「ジャケットの裾」は曲線なので、例外はあります。
ですがスーツ・ジャケットになじませるという視点においては、ビジネスリュックも直線的なデザインがよく合います。実際に売り場を見わたす限り、曲線的なタイプより直線的なタイプが過半数を占めているはずです。
ただ、丸みが強いリュックがスーツに合わせられない訳ではありません。その場合「スーツの生地」と「上着の色」の2つに工夫が求められます。
リュックに合わせやすいスーツ生地を選ぶ
まず生地ですが、そもそも天然繊維の細いウール糸を使っているスーツとリュックは相性がよくないです。見た時の印象で言うと、リュックが醸し出すスポーティさが、スーツの繊細な光沢感と相反するのです。
また、ビジネスリュックの肩紐が繊細なウール地とすれることでスーツが傷むという現実問題もあります。もちろん、これは直線的なリュックの場合も同様。
そこで、ジャケットとパンツが別売りのセットアップスーツをお勧めします。生地もポリエステルなど化学繊維となります。このセットアップと呼ばれる、上下同一生地のスーツと、旧来の「スーツ」、その大きな違いは構造上の差です。
例えば肩パットの有無。格式高い伝統的な英国式スーツは「構築的なデザイン」と呼ばれることが多いです。これは表面からは分かりづらいですが、裏地を含め、その構造が複雑に作られているから。
一方、セットアップはスーツから構築的なデザインを差し引いています。パッと見、スーツと大きく変わりませんが、素材感からややカジュアル寄りなので、リュックに合わせやすいのです。
上着とリュックのコントラストを弱める
二つ目がビジネスリュックを選ぶうえで大切な色選び。と言っても、リュック単体の色ではなく、ジャケットとリュックのコントラストが大切です。ビジネスと名前が付いていても、リュックである以上、そのカジュアルさは否めません。特に、「肩紐による生活感」のコントロールは重要です。
肩紐の色は変えられませんからジャケットの色を変えます。逆に言えば、普段よく着るジャケット・スーツの色を考えながらリュックを選ぶ必要があるのです。ジャケットとリュック肩紐のコントラストが極力弱まれば、肩紐は目立ちません。
これがビジネスリュックの色に、黒・紺・グレーが多い理由です。ブラウン系も時折見掛けますが、これはベージュ系、ブラウン系ジャケットに合います。なお、ブラウンは上質なレザーなどで高級感を出さない限り、肩紐の生活感が出がちなので注意が必要。
ところでクールビズの時はどうすれば良いのでしょうか。
クールビズとリュック
白いビジネスリュックはなかなか見掛けませんし、あったとしても無駄に目立ちます。とは言え、ノージャケットを基本とするクールビズで、白いワイシャツにダークカラーを主とするビジネスリュックでは悪目立ちします。
そこでお勧めしたいのが紺色のビジネスポロシャツ。また、ワイシャツを着る必要がある方は、白地にブルーのギンガムチェック柄のシャツでも肩紐のコントラストを弱めることができます。
ビジネスリュックは両手が空くので便利なアイテムですが、合わせる服が制限されるので、ご紹介したようなひと工夫が必要なのです。ところが、そんなわずらわしさを無くすビジネスリュックがあります。
「リュック」「ショルダー」「手持ち」という3通りの持ち方ができるリュックは、持ち方を変えることで、合わせる服を選びません。例えば上着とリュックのコントラストが強い日は手で持つことで違和感を解消できるのです。